ここから本文です

「日本の貧困はかなり切迫した状態」フォトジャーナリスト安田菜津紀

週刊SPA! 3/20(月) 9:00配信

 安倍首相は「相対的貧困率は大きく改善した」と語り、波紋が広がっている。空前の株高に見舞われた’16年末の日本経済。しかし、最新データによれば所得格差は過去最高水準に達し、子どもの貧困率は16.3%と高い数値を示す。日本で確実に増え続ける生活困窮者。彼らが跋扈する日本の未来にはいったい何が待っているのか?

◆“心の再出発”こそが貧困脱出の第一歩

 日本は先進国なのだから、貧困は自己責任――。そう切り捨てるのは危険だ。世界の貧困と向き合うフォトジャーナリストの安田菜津紀氏は「日本の貧困はかなり切迫した状態」と警鐘を鳴らす。

「介護やリストラ、災害など、誰しも貧困に陥る可能性があるのに、そこから抜け出すハードルが極めて高いのが今の日本。家庭や田舎といったコミュニティは弱体化し、社会福祉制度は形式的なものもあり、必ずしも再出発への意欲を促す形になっていない。その結果、貧困が孤立や絶望を生み出し、奈落の底へ落ちていく。一方、世界には貧困が深刻でも、カンボジアのように家族、近隣との助け合いの文化が残っている地域も多く、絶望感は抱きにくいのです」

 日本の貧困は、ある意味で東南アジアよりも悲惨。そこから脱却するには「教育への投資」と「ハウジングファースト」が重要だ。

「世界的にも日本は教育への公的投資が圧倒的に少なく、2つの弊害を生み出しています。一つは、貧しい子どもが高等教育を受けられず、貧困の連鎖を断ち切れないこと。もう一つは貧困への理解や当事者意識が根づかず、排他的な社会を生み出していること。『ハウジングファースト』とは、そんな社会で傷ついた心のケアに繋がる社会保障のあり方。単なる経済的支援ではなく、安定した住居を提供することで、再出発のモチベーションを育むのです」

 生活保護で食い繋げたとしても、「自分は落伍者」という意識を拭い切れなければ社会復帰は難しい。

「長らく孤立し、心身の問題を抱える人の中には、施設での集団生活が難しく、再び脱落してしまう人もいます。ですから、人間らしい家で体と心を癒し、自尊心を取り戻すことで、再出発できる居場所を見つけていくことが大切。最低限そのくらいの受け皿がある社会になれば、誰もが貧困のリスクに怯えながら暮らすような切迫感は取り除かれると思います」

 教育と心の保障こそ、貧困の連鎖を断ち切る特効薬となるのだ。

【安田菜津紀氏】

フォトジャーナリスト。カンボジアや東南アジア、中東、アフリカ、日本で貧困や災害を取材。著書に『君とまた、あの場所へ シリア難民の明日』(新潮社)

取材・文/貧困の未来SPA!特別取材班

― 日本型貧困の未来 ―

日刊SPA!

最終更新:3/20(月) 9:00

週刊SPA!

記事提供社からのご案内(外部サイト)

週刊SPA!

扶桑社

2017年4月4日号
03月28日発売

¥400

・40代[働き方がわからない]への処方箋
・[激安飲食店]絶品ランキング
・[アマゾン巨大倉庫]労働者の告白
・[東芝解体]に揺れる企業城下町の今

Yahoo!ニュースからのお知らせ