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提携で成功した創薬ベンチャーはどこだ? 

3/28(火) 22:01配信

会社四季報オンライン

 武田薬品工業 (4502)は14日、産業革新機構、メディパルホールディングス (7459)と共同出資による新会社「スコヒアファーマ」を設立することを明らかにした。本年4月より始動する予定だ。

 スコヒアファーマは創薬を専門に手掛ける医薬品ベンチャー企業だが、株式市場にこれまで登場したベンチャーとはバックグラウンドが異なる。既存の創薬ベンチャー企業は大学発などアカデミー色が濃く、企業というよりも大学の研究所の出先機関といった印象だった。しかし、スコヒアファーマは武田の神奈川・湘南研究所内に発足し、30人強の武田薬品の社員が転籍する。いわば即戦力の創薬ベンチャーだ。

 もちろん、創薬ベンチャーのすべてが大学発というわけではなく、ファイザー日本法人から独立したラクオリア創薬 (4579)も株式を公開している。ただし、ラクオリア創薬はEBO(従業員買収)により設立された企業。これに対して、スコヒアファーマは業界トップの武田が新薬の開発効率向上を目的に立ち上げた戦略的企業である。

 武田はスコヒアファーマに対し、腎・代謝・循環器領域の開発プロジェクトのライセンスを譲渡。これには新薬候補6品目も含まれている。武田は研究テーマをがんや中枢神経分野などに集中する。武田本体は競争の激しい分野をカバーし、周辺をスコヒアファーマがカバーする格好だ。

 スコヒアファーマの継承する新薬パイプラインで期待されるのは、早期糖尿病性腎症を適応とする「TAK-272」(フェーズ2)、肥満症治療薬「TAK-792」(フェーズ1)などだ。スコヒアファーマは株式上場も視野に入れる。武田のインフラを背景に早期の立ち上げが見込まれる。

■ メディパル参画の意味

 今回のスコヒアファーマの設立にメディパルホールディングスが参画した点も要注目だ。メディパルは医薬品卸のトップであり、バイオベンチャーのJCRファーマ(4552)とも提携関係にある。両社はJCRファーマの再生医療製品「テムセルHS注」の低温管理物流システムを共同開発した。

 タンパク質由来などの医薬品や再生医療サービスでは、物流が重要な役割を担う。大事なのはスピード。医薬品や医療関連製品は患者に届いて初めて意味がある。高度の医療製品開発に物流会社が参画するのは、市場の早期確保という面からプラスの効果が大きい。

 ネット販売で高成長を謳歌するアマゾンですら物流はアキレス腱だ。医療の分野も市場獲得には物流面を含む提携などの必要性が高まっている。換言すれば、物流事業者などから評価されない創薬モデルに大きな期待はできない。今回のメディパルホールディングスの参画には、共同で参加する武田の存在も大きいと判断していいだろう。

 メディパルは他社との提携も活発化させている。治験大手のシミックホールディングス(2309)とは共同でオーファンドラッグ(希少疾病用医薬品)ビジネスを展開。オーファンドラッグはベンチャーの創薬企業などが最も積極的に手掛ける分野の一つだ。創薬ベンチャーにとって、物流を含めた提携関係をどのように構築するかが、今後の成功のカギを握る。

 むろん、企業力のないベンチャーにとっては提携先の選別が重要だ。中には失敗したケースも少なくない。インフルエンザワクチン開発を手掛けるUMNファーマ (4585)は、開発や販売で提携していた医薬品大手のアステラス製薬 (4503)との共同開発契約が解除された。

 実はアステラス製薬はワクチン製造大手である一般財団法人の化学および血清療法研究所と同ワクチン分野で強い結びつきがある。そうした関係が今回のUMNファーマとの契約解除に影響したとの見方には説得力がある。

 一方、前出のJCRファーマやシミックホールディングスの提携戦略は成功例の典型ともいえる。富士フイルムホールディングス (4901)と提携したジャパン・ティッシュ・エンジニアリング (7774)の生き残り戦略なども評価すべきだろう。

※当記事は、証券投資一般に関する情報の提供を目的としたものであり、投資勧誘を目的としたものではありません。

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