ここから本文です

ユベントス一強時代に現地ファンは何を思う? 絶対王者の独走が示すイタリアサッカー界の問題

3/31(金) 11:29配信

フットボールチャンネル

今季のセリエAを9節残し、2位ローマと勝ち点差8をつけて首位に立つユベントス。現在セリエAを5連覇しており、今季の優勝も時間の問題とされている。近年のセリエAはまさに“ユベントス一強時代”となっているが、現地のファンはこの状況をどう思っているのだろうか?(取材・文:神尾光臣【ミラノ】)

本田は8得点で5位 セリエA日本人得点ランキング 1位は…

●今季もリーグ戦で首位独走のユベントス。結局番狂わせも起きそうになく…

 代表ウィークが終わり、各国のリーグ戦が終盤戦に突入する。もっともセリエAは、ユベントスが2位ローマに勝ち点差8をつけて独走状態。FWゴンサロ・イグアインやMFミラレム・ピャニッチらをスクデット争いの当該ライバルから引き抜き、開幕前から絶対的優位が噂されていたが、結局番狂わせは起こらないまま優勝決定を待つのみといった状態になっている。

 経営面でも、ユベントスはぶっちぎりだ。クラブが発表した2016/17シーズン上半期の決済では、クラブの総収入は31億4900万ユーロと前年比で54%の上昇、さらに当期利益は7200万ユーロと前年比で137,6%増の数字を出した。マンチェスター・ユナイテッドに放出したポール・ポグバの売却益があったとはいえ、大型補強を図って事業費用そのものは増加しているにも関わらず、これだけの利益を出しているのは近年のイタリアクラブでは考えられなかったことだ。

 戦力は充実し、スタジアムも近代的だ。2006年の“カルチョポリ”から11年、そこから這い上がり再び国内では強すぎる存在として君臨した今の彼らと、このカンピオナートの状況を、他クラブのファンはどう見ているのだろうか。地元ファンの何人かに話を聞いてみたが、恨みがましく思うような声は案外聞かれなかった。

「やっぱり今のユーベは普通に強いよ。それでいて、試合でうまく行かなくなった時はあれだ、奴らは審判に助けてもらえるから絶対的なんだぜ」

 ミラノ市内のバールで働き、ユベントスと最も因縁の深いインテルの熱烈サポーターであるサンドロさん(21)はこう語った。これだけ聞くと十分憎まれ口なのだが、「お前らのクラブの会長だって審判にロレックスをプレゼントしてただろうがよ」という同僚のユベンティーノの罵声を浴びながら、ユーべの強さ自体には異論を挟まなかった。

「圧倒的だよ。オレらのクラブも夏に補強したから期待をしたし、実際に勝ってもいるんだけど、やっぱり長いシーズンで見るとまだまだ叶わない」

●「強さの理由はスタジアム」。イタリアサッカー界が直面する問題

 次に、ユーベとはやはり因縁浅からぬクラブの一つ、フィオレンティーナのファンに登場してもらおう。フィレンツェ出身だが現在はミラノの近くで働くミルコさん(25)は、ユーベの強さはユベントス・スタジアムにあることを強調し、翻ってイタリアのサッカー界全体が直面する問題を憂いていた。

「今の彼らの強さは、戦力が整っているからだというのはもちろんさ。でも、理由はやっぱりあのユベントス・スタジアムにあると思うね。ユベントスvsフィオレンティーナの時に行ったけど、やっぱり新しいし雰囲気もすごい。あの雰囲気に選手が後押しされたら、ユーベがホームで強いのも分かる」

 しかしだからと言って、他のクラブはなかなか追随できない。

「それにしても、分かりきっているのになんで他のクラブが後に続けないんだろう。プレミアリーグとかブンデスリーガとかの中継見ててもみんなスタジアムは素晴らしいのに、みすぼらしいのはイタリアだけだ。しかも、この国は計画が出れば政争の具になって話が潰れる。フィレンツェだって、フィオレンティーナはずっと前から新スタジアムの計画書を提出しているというのに、政治家の間でことごとくもめて話が進まないんだ」

 先日も、ローマの新スタジアム建設計画がローマ市によって承認されたが、これも計画提出から長期間に及んで地元の政治問題と化していた。ユベントスとの経済力差を詰めるために収益の出せる自前のスタジアムは必須なのだが、イタリアでは用地確保や建設を自前でやると主張してもすんなりとは行かないのが現実だ。

「ユベントスがスタジアムを造ることができたのは、トリノ市との関係が奇跡的にうまく行っていたからだ」とミランのアドリアーノ・ガッリアーニ副会長は語っていた。

●3位ナポリのファンでも「スクデットは無理」。ギャップを埋めるには数年は必要に?

 一方、ユベントスとスクデットを争うライバルクラブのファンはどう思っているのか。ミラノ近郊で理髪店を営むナポリ出身のレッロさん(46)は、「いや、ナポリにはスクデットは無理だ」と終結宣言を出しつつ、ナポリとユーベの差について以下のように思いを語った。

「良い内容のサッカーをしているのは、ユーベよりもナポリだと思っている。けど、大事なところで勝ち点を取れない。こないだも、ホームでオレらアタランタに0-2で負けたんだぞ? その一方で、ユーベはそういう取りこぼしはしない。技術があるというのか、試合運びが上手いというのか、それが差になっている」

 そしてレッロさんは、今のユベントスの姿をかつてのグランデ・ミランと重ねて、しばらく支配的な状況は続くのではないかと予想した。

「さらにクラブには赤字もなく、利益が9000万ユーロくらい出てるってんだろ? イタリアじゃ完全に一人勝ちだよ。そういう意味では、80年代後半にミランが強くなった時のことを思い出させるよね。あの時ナポリにはディエゴ・マラドーナがいて強かったんだが、ミランは(シルビオ・)ベルルスコーニがものすごい資金投下をやって、しばらくどこも勝てなくなった。その結果、カルチョは変わっちゃったとオレらナポリ人はみんな思ってるよ。今のユーベは少しそんな雰囲気がするんだが、ちゃんとしたマーケティングをやっての結果だからケチのつけようがない。ズルい? いや、彼らは強くなるべくして強くなってるよ」

 絶対王者を凌駕するには、戦力を備えてサッカーを磨くだけでは不十分。コンスタントな成績を出せる力と、それを後押しするスタジアム、そして安定した経営力が必要となるのである。イタリアの他のクラブがこのギャップを埋めるには、やはりまだ数年は掛かりそうである。

(取材・文:神尾光臣【ミラノ】)

フットボールチャンネル

記事提供社からのご案内(外部サイト)