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会議で無理に決まったことも「感情多数決」で覆される!? 感情認識アプリが開く未来の可能性

4/2(日) 9:10配信

HARBOR BUSINESS Online

 こんにちは、微表情研究者の清水建二です。

 本日は、先日の3月7日(火)~10日(金)にかけてリテールテックJAPAN 2017(東京ビックサイトにて開催)で展示されていた感情認識アプリについて、体験レポートします。

⇒【画像】食べたい食事メニューをランキングにする

 リテールテックJAPAN 2017の会場の近くでは、SECURITY SHOWも開催されており、二つの会場を合わせるとおおよそ数十を上回る顔認識アプリ及び感情認識アプリが紹介されておりました。

 ところで、顔認識アプリと感情認識アプリとは何が違うのでしょうか?

 顔認識アプリとは、顔の形状や質感、色から年齢・性別・民族・同一人物か否かを推定するものです。感情認識アプリとは、表情筋の変化から感情を推定するものです。

 会場には顔・感情認識のみが出来るアプリや両方の機能が搭載されたアプリが様々に工夫を凝らした展示の仕方で紹介されており、顔・感情認識AI市場の期待感の高まりを感じました。

◆凸版印刷×シーエーシー提供による感情AI、Afffdexの可能性

 本イベントでは数社がそれぞれの感情認識アプリを紹介しており、私は自分の表情を使って色々と試させて頂きました。表情を認識し、感情を推定するプロセスにおいて各アプリに得意・不得意があり、表情分析の専門家として「専門家の目と機会の目は〇〇が違うのだろうな」、「このアプリの不得意分野は△△で補えるかも」などと様々な着想を得ることの出来た機会でした。

 そんな様々な感情認識アプリの中で、凸版印刷×シーエーシー提供による感情認識AI、Afffdexに焦点を当てレポートさせて頂きたいと思います。

 Affdexは、MITが10年の歳月をかけて開発し、世界75ヶ国400万人から収集された世界最大規模の感情データが内蔵された感情AI(米ベンチャーのAffectiva社の商品)です。

 幸福・軽蔑・嫌悪・怒り・悲しみ・恐怖・驚きの7感情と個々に独立した21の表情筋の動きを認識することが出来ます。まずは色々な表情を、シーエーシーの社員さんとともにカメラの前でポーズしてみました(トップページの写真です)。

 「TOTAL 1800 SMILES」と黄色のケージの中に表示されているのは、イベント中にこの感情認識AIの前で笑顔が1800回もなされたということです。他の感情もいくつか計測されていますね。このアプリを目前にしての本当の感情の表れなのか、顔芸が得意な方によって作られた表情なのかわかりませんが、Affdexは様々な表情筋の組み合わせから7つの感情を推定することが出来るのです。

 ちなみに、恐れが少ない理由を想像できますでしょうか?

 恐れ表情のプロトタイプは、眉が引き上げられる+眉が中央に引き寄せられる+上まぶたが引き上げられる+下まぶたに力が込められる+口角が水平に引かれる+唇が離れる、というものですが、眉が引き上げられる+眉が中央に引き寄せられるという動きは信頼できる筋肉と言い、本当に恐怖を感じていれば自然に生じる動きなのですが、意図的には動かすことが出来ないことが諸研究からわかっています。

(ではこの5回は、感情認識AIを目の前にした本当の恐怖感情なのでしょうか?3回はそうかも知れません。なぜなら2回は私が意図的に恐怖表情を作ってみました。表情分析の専門家の清水は、意図的に動かせない表情筋も自在に動かせるのです!笑)

◆表情認識アプリは感情的に食べたい食事メニューをランキング可能

 話を戻しますと、この感情認識AI、感情を計測してくれるのはわかりましたが、これが何の役に立つのでしょうか?こんなデモが用意されていました。

 10種類の食事のメニューが次々とモニターに映し出されるのを見ていきます。美味しそうな食事に色々な感情が沸き起こってきます。10種類見終わると……。

 はい!私にオススメのメニューランキングが出ました!!

 モニターの上に付いているカメラに感情認識AIが搭載されており、次々と映し出される食事に対して私がどんな感情を抱いているかを計測しているのです。ポジティブな感情を抱いていた順にオススメメニューが提示される仕組みなのです。

 このアプリですが、一人でも出来ますが、複数人同時にも出来るところが注目すべき点です。

 仲間数人での集まり。小腹が空いたときをイメージしてみて下さい。何かみんなで一緒に食べれるものでも注文しようか~なんて時に、このアプリが搭載されたメニュー表をみんな見れば、皆の幸せの総和が一番高いメニューをアプリが算出してくれる、そんな日が訪れるかも知れません。

◆新しい会議の方法!?感情多数決

 このメニューランキングのシステムを応用して、私が勝手に妄想していたのは、「感情多数決」です。

 会議などで、本当はみんな乗り気じゃないのに何となく決定された提案。この提案の決定に組織の士気が下がった、最悪、その提案をもとにしたプロジェクトが失敗に終わった、そんな経験はありませんか?

 会議のメンバーに様々な提案を見てもらい、そのときの感情の総和をアプリに認識してもらい、感情ランキングや感情多数決を取り、理性的に決めた提案と比較してみる。

 自由に意見を出しにくい会議のときほど(Yesマンを囲いたがるリーダーとの会議とか?)、感情多数決、威力を発揮する気がしています。

 感情的に決めた提案など……と言われそうですが、いえいえ、感情は案外、バカに出来ないものです。

 直感や直観は、ときに理性によって積み上げられた推論よりも適切な解答を導いてくれることが知られています。無意識(感情)と意識(推論)との新たな共存の形とはどんなものになるのでしょうか?

 今後も、感情認識AIの行くへを追って行きたいと思います。

【参考】

米Affectiva社

株式会社シーエーシー(Affectiva日本代理店)

〈文・清水建二〉

【清水建二】

株式会社空気を読むを科学する研究所代表取締役。1982年、東京生まれ。早稲田大学政治経済学部卒業後、東京大学大学院でメディア論やコミュニケーション論を学ぶ。学際情報学修士。日本国内にいる数少ない認定FACS(Facial Action Coding System:顔面動作符号化システム)コーダーの一人。微表情読解に関する各種資格も保持している。20歳のときに巻き込まれた狂言誘拐事件をきっかけにウソや人の心の中に関心を持つ。現在、公官庁や企業で研修やコンサルタント活動を精力的に行っている。また、ニュースやバラエティー番組で政治家や芸能人の心理分析をしたり、刑事ドラマの監修をしたりと、メディア出演の実績も多数ある。著書に『「顔」と「しぐさ」で相手を見抜く』(フォレスト出版)、『0.2秒のホンネ 微表情を見抜く技術』(飛鳥新社)がある。

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