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【蹴球日本を考える】「0-1」に横たわる大きな差。鹿島にあって大宮にないものとは?

4/3(月) 11:30配信

SOCCER DIGEST Web

一人ひとりは確かに頑張っている大宮だが…。

 昨季、年間5位と躍進した大宮が最下位に沈んでいる。


 
 4月1日、ホームに鹿島を迎えた一戦は、最後まで粘ったものの79分に決勝点を決められ、敗北。開幕5連敗となった。
 
 王者を相手に0-1。惨敗というようなスコアではない。だが、鹿島との間には大きな差がある。
 
 攻めあぐねたとはいえ、鹿島は一人ひとりが敵の嫌がることを熟知し、それをプレーで表現することができる。
 
 レオ・シルバはしばしば敵の視野に顔を出し、「私が来ていますよ」とアピールする。これだけで敵が怖くなることを知っているからだ。
 ペドロ・ジュニオールはショートコーナーでキッカーに返すと見せかけ、不意に反転、敵ふたりを置き去りにする。
 遠藤は残り5分、深い切り返しと細かいタッチで敵を振り回し、右サイドで時間を稼ぐ。
 最終ラインの昌子は多少プレッシャーのかかる場面でも、ハイボールをヘッドで返さず、胸で受ける。余裕がなければできることではない。
 
 鹿島には、局面に応じた最適の解を出すことができる選手が揃っている。こういう自立した個人が組み合わさって、強いチームができている。
 
 大宮はそうではない。
 一人ひとりは確かにがんばっている。
 労を惜しまず走ってボールを持った味方を助け、つねにトライアングルを作り出す。前を向けない味方には横、後ろにサポートがつき、ボールが落ちたタイミングでSBがタッチライン際のスペースを駆け上がる。
 
 前半はボールがきれいに回る場面が何度かあり、右サイドから奥井が果敢に攻め上がった。だが、決定機は皆無。分かりきったサイドアタックだけでは、ゴールを脅かすことは難しい。
 
 右サイドから何度か攻め込むことができたのは、鹿島が許してくれただけのこと。サイドアタックはサッカーの定石。だが、それだけでは敵を揺さぶることはできない。横や後ろにつなぐだけでなく、目の前の敵の背後を取るプレーをしなければならないのだ。だが、そうした冒険をする選手はいなかった。
 
 つまり、こういうことだ。彼らは決められた戦術を丁寧になぞっただけ。個人が組織の傘に隠れてしまっている。
 
 決められたチーム戦術で上手く試合が運べたらいいが、そうならなかった時はチームの縛りを断ち切って、ひとりで勝負しなければならない。状況が好転しないのに、個人で勝負するプレーが見られなかったのは、選手たちに「寄らば大樹」という甘えがあるからだろう。
 
 サッカー選手は芸人と似たようなもので、本来「サッカーがなかったら、この人どうなってたんだ?」という危うい人間がなるものだ。そういう人間ならチーム戦術をなぞるだけでは満足できなくなって、自分を出したくなるものだ。なぜ、そうならないのか。私は不思議で仕方がない。
 
 残念ながら、いまのJリーグには大宮に限らず、個人が見えないチームが多い。これは育成の根幹にかかわる問題だろう。
 
取材・文:熊崎 敬(スポーツライター)

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最終更新:4/3(月) 11:30
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