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久保建英、加速する成長速度。FC東京U-23出場のベテラン選手が語る、15歳FWの現在地

4/4(火) 11:50配信

フットボールチャンネル

 15歳の逸材、FW久保建英(FC東京U‐18)が成長のスピードを加速させている。J3に参戦しているFC東京U‐23を今シーズンの主戦場とするなかで、2日の鹿児島ユナイテッドFC戦では35歳の元日本代表FW前田遼一と2トップを組み、「10番」を背負う31歳の梶山陽平の後方支援を受けた。ゲームキャプテンを務めた28歳のDF吉本一謙を含めて、鹿児島戦に出場したオーバーエイジ組の証言をまじえながら、FCバルセロナの下部組織で育ったホープの現在地を追った。(取材・文・藤江直人)

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●元日本代表・前田遼一と組んだ2トップ

 自分が生まれる前からプロの舞台に立っている大ベテランが、いつも近くにいる。2日に江東区夢の島競技場で行われたJ3第4節。FC東京U‐23の15歳、久保建英はJ1で歴代4位タイとなる152ゴールをあげている元日本代表、35歳の前田遼一と2トップを組んで先発した。

 年齢差は実に20歳。2001年6月4日に久保が産声をあげたとき、東京・暁星高校からジュビロ磐田に加入して2年目だった前田はすでにJ1でデビューしていた。鹿児島ユナイテッド戦のキックオフが間近に迫ったピッチ。ゲームキャプテンを務めるDF吉本一謙が、円陣を組む直前に久保に耳打ちした。

「足元だけでボールを受けないように。(前田)遼一さんとどちらかが、詰まったときには前に行って」

 前田と28歳の吉本だけではない。ゴールキーパーには27歳の大久保択生、そしてボランチには「10番」を背負う31歳の梶山陽平が、23歳以下の若い選手たちとともにピッチに立った。

 昨シーズンからU‐23チームをJ3に参戦させているFC東京、ガンバ大阪、セレッソ大阪は、フィールドプレーヤー3人とゴールキーパー1人のオーバーエイジを起用することができる。

 もっとも、FC東京は原則としてオーバーエイジ枠は行使せず、トップチームの若手だけでメンバーを編成できない場合は、2種登録されたFC東京U‐18所属の選手たちを積極的に起用してきた。

 しかし、高校が春休み中とあって、U‐18チームがドイツに遠征していた。そこでトップチームで出場機会の少ない4人をオーバーエイジとして起用し、ほぼぶっつけ本番でホープたちと融合させた。

 結果として、鹿児島戦で先発した11人のなかで、2種登録選手はU‐20日本代表のドイツ遠征から帰国したばかりの久保だけとなった。すでに今シーズンのJ3で2試合にフル出場している逸材は、これまでとは異なる雰囲気を肌で感じ取っていた。

「いつもプレーしている人たちとは、やはり違った選手たちなので。五分五分のボールでも前田選手は普通にもっていくので、すごく馬力がありました」

●「建英のところにボールが入って前を向いて攻撃がはじまる」

 百戦錬磨の経験をもつ前田の巧みなボールキープから、久保がペナルティーエリア内のひだりサイドへ抜け出し、利き足の左足を振り抜いたのが前半43分。わずか3分後の同アディショナルタイムには、梶山がヒールで落としたボールに、ペナルティーエリアの右外から迷うことなくミドル弾を放った。

 ともにゴールの枠をとらえられず、特に前者を放った直後はピッチを左手で叩いて悔しさを露にした。昨シーズンから通算して5度目となるJ3の舞台。過去のどの試合よりもボールに絡み、積極的にシュートまでもっていった久保自身が、期待される初ゴールへの手応えを感じていた。

「J3であまり結果を残せていなかったというのもありますし、前半のはじめからけっこう押し込んでいて、何回もチャンスがあったということもあって、途中から『今日はチャンスじゃないかな』と感じていた部分はありました」

 4試合で2ゴール2アシストをマークした、U‐20日本代表のドイツ遠征から帰国したのが3月29日。オフをはさんだ同31日には、久保はトップチームの練習に参加している。もっとも、トップチームがサガン鳥栖とのJ1第5節を翌日に控えていたこともあって、全面的な合流とはならなかった。

 それでもキックオフ前に要求した通りに、すぐに前田とのコンビネーションを構築しはじめた姿が、最終ラインでチームを統率した吉本には頼もしく映った。

「遼一さんが体を張って、そのこぼれ球を(久保)建英がしっかり拾ってチャンスにするなど、2人の息がすごく合っていた。僕は今日初めて一緒にプレーしましたけど、建英のところにボールが入って前を向いて攻撃がはじまる、という感じにもなっていたし、まだ15歳ながらこのチームには本当に必要な選手なんだと思いました」

●J1でも「まったく問題なくできるんじゃないか」

 前線の選手たちを後方支援したボランチの梶山は、久保の特異さを何度も感じたという。

「(相手選手の)間にポジションを取るのが、すごく上手いと思いました。そのときにチーム全員が、もっともっと意識してボールをつけたほうがよかったというのもあった。そこはサイドバックやサイドハーフの選手を含めて、これからの課題でもあると思う。

 僕自身も空いている選手を探して、そこにボールが入った後のサポートというものを意識していましたけど、やっぱり(久保に)ボールをもたせれば普通にできるし、チャンスにもなると思いましたよね。いつも自分の目に入るポジションに入ってきたので」

 梶山自身は開幕直前の練習中に左ヒラメ筋を挫傷して、全治3週間の診断を受けていた。ようやくトップチームに合流して、出場機会は訪れなかったものの、サガン戦で初めてベンチ入りを果たしていた。

 一夜明けたJ3の鹿児島戦で戦列に復帰。前半だけのプレーでベンチへ退いたが、これから試合勘を含めた心身の状態を上げていく過程で楽しみができたと笑顔を浮かべる。

「僕ももっとコンディションを上げて(久保と)また一緒にやれれば、もっと楽しんでできそうな感じもしたので。先ほど言ったポジション取りもそうだし、技術の部分は問題なく通用するし、実際、シュートを何本も打っていましたよね」

 ここでひとつ確認してみた。技術が通用するのはJ3ではなくJ1の舞台なのか、と。J1で256試合に出場している梶山は「そうです」と笑いながら、こう続けてくれた。

「プレスなどで相手に体を寄せられたときは後方でサポートしてあげて、逃げ道をしっかりと作ってあげれば、まったく問題なくできるんじゃないかと思いました。初ゴールを取らせてあげるまで、(J3で)一緒にやりたいですね」

●「6‐3‐3」の学校制度にとらわれない育成方針

 J3にU‐23チームを参戦させた時点で、FC東京は「6‐3‐3」の学校制度にとらわれることなく、組織全体で育成のスピードアップを図っていく方針を掲げている。

 高校卒業を待たずしてJ3の舞台でどんどんプロ相手の真剣勝負を積ませ、高円宮杯U‐18プレミアリーグEASTなどの大会に臨むU‐18には、U‐15むさしやU‐15深川から有望株を飛び級で昇格させる。育成を加速させる触媒となるのがU‐23の存在になると、中村忠監督も言う。

「J1に一人でも多くの選手を輩出して活躍させる。そのための準備や個々のプレーの確認という部分が、ウチのチームでは特化している。ここでしっかりプレーする、トレーニングの段階からしっかり見せられる選手がJ1に出られる。若い選手はここでゲームを重ねることで、経験値を積んでいく。

 さらに若いU‐18の(2種登録)選手に関しても、彼らが目指しているのはプロの世界であり、それをひとつでも若く経験できることでいま現在の自分の立ち位置、トップ昇格へ向けたいろいろな部分の個人的なモチベーションを上げていく。チームとして何かを作りあげるというのは確かに難しい点もありますけれども、いまは本当に一人ひとりが違った立場で目的意識をもって取り組んでいます」

 鹿児島戦のスタンドには、トップチームを率いる篠田善之監督の姿もあった。アウェイ戦で現地に行けないときは、映像などを介して必ずU‐23チームのパフォーマンスをチェックしている。

 2種登録選手制度も有効に活用しながら、育成型ビッグクラブを目指していく流れのなかに、そのポテンシャルにFCバルセロナもほれ込んだ久保もしっかりと組み込まれていることになる。

 試合は前半をスコアレスで折り返すと、後半に入って前へのプレッシャーを強めた鹿児島が2点をリードする。FC東京U-23は途中出場したU‐18所属の17歳、MF小林幹の2試合連続ゴールで追い上げたものの、あと1点が届かずに3敗目を喫した。

●今年度からは高校生に。結果を貪欲に求めるプロの表情

 前田とともにフル出場した久保が放ったシュートは、両チームを通じて最多となる4本。後半39分には小林からのパスを受けると、ペナルティーエリア内の右サイドへ猛然とドリブルで侵入。利き足とは逆の右足で強烈なシュートを見舞ったものの、相手に当たってコースを変えた弾道はサイドネットに阻まれた。

 J3のカテゴリーながら、Jリーグでは最年少となるゴールが生まれたのか、とスタジアムを一時騒然とさせたシーンには、2つの「計算」が働いていた。

「その前に一度、味方からパスが来て中へ入っていったときに自分でシュートを打とうか迷って、結局は打たずに横へパスを出したらちょっと流れてしまった、というシーンがあったので。次にいいスペースがあったら自分でいこうと思っていたので、迷わずいけたことはよかったのかなと。

 あの場面では小林選手からいいパスが来て、相手に一度体をぶつけてから中へ入っていきましたけど。結果的に何本もシュートを打って、決められなかったのは不甲斐ないし…悔しいです」

 同じように悔しがるならば、あえて積極果敢にトライする。成長途上のフィジカルを指摘されることが少なくない状況で、相手が与えてくるプレッシャーを逆手にとって、あえて体をぶつけることで前へ加速していく推進力に変える。瞬時に遂行した計算も、結果が出なければ意味がないと唇をかむ。

「球際(の攻防)でも逃げないようにしているので、成長しているんじゃないかなと自分では思っていますけど。もう何試合もやらせてもらっているので、そろそろ周りにすがっているだけではダメだなと自分でも思っています。この前のU‐20代表の遠征でもけっこういいプレーができていたので、これからもどんどん自分のプレーを出していきたい」

 今週末からはU‐18が参戦しているプレミアリーグEASTも開幕するが、J3と重複した場合は、久保を含めた10人の2種登録選手は原則として後者を主戦場としていく。今年度からは高校生になるホープは、ときに結果を貪欲に求めるプロの表情を浮かべながら、心技体の成長スピードを加速させていく。

(取材・文:藤江直人)

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