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賛成多数の「横浜・上郷」里山開発、公聴会で賛成側に辞退者続出の不可解

4/4(火) 9:10配信

HARBOR BUSINESS Online

 横浜市栄区にある里山の開発構想(上郷開発計画)をめぐって、不可解な現象が起きている。今年1月17日、その構想に対する公聴会を市が主催したのだが、事前に意見発表希望者を募る「公述申出」では賛成が約3分の2を占めていたが、当日は反対する公述人の数が賛成側を上回っていたのだ。

◆ホタル舞う里山を造成、住宅地や商業施設に

 この構想は東急建設(東京都渋谷区)が2014年1月に横浜市へ提案したもので、栄区の「上郷町猿田地区」にある約31ヘクタールの緑地が対象だ。市は翌年6月、提案を一部手直しした上で市の計画案とすることを決め、住民説明会などの手続きを進めている。

 それによると、対象地域のうち21ヘクタールは緑地として保全するが、10ヘクタールは造成して商業施設や住宅、メディカルモールなどを建てるという。

 同社による市への提案は今回が2度目だ。前回は全体の約半分を開発する内容だったが、2008年7月に市の都市計画審議会で「樹林地を大幅に改変する」などの理由で否決された経緯がある。

 現地は沢が流れ、ホタルの生息地として知られる。反対住民は、一帯が自然の宝庫であることや、周辺で空き家が増えているのに新たな住宅建設は不要などとして計画撤回を求めている。一方、同社の提案に賛同する地元地権者の団体「上郷開発の早期実現を希(ねが)う会」は、ウェブサイトで「保全する緑地等の部分は提案区域の約7割」と伝え、前回提案よりも緑地が保全されるのだと強調する。

◆賛成派は7人中5人が、公聴会での公述を欠席

 現地では当初から、構想に反対する地元住民が署名活動などを展開。2007年9月に9万筆、2014年に11万筆の反対署名を集めて市に提出した。住民団体「上郷・瀬上の自然を守る会」は「開発賛成の署名はわずか888筆に過ぎない」と、開発反対の声が大きいことを主張している。

 一方、市が2014年5月に実施した公聴会では、構想に賛成する公述人が8人だったのに対して、構想反対の公述人はわずか2人だった。これは、事前に公述人を募集する「公述申出」の受け付け段階で、構想賛成の立場からの応募が約2000通にのぼったためだ。

 賛否ほかの公述人の数は、公述申出の応募者数に応じてそれぞれに割り当てられる。今回の公聴会でも賛成意見の応募は6760通で、反対の3360通を大きく上回った。そのため当初、公述人の割り当ては賛成7、反対3、その他の意見3という構成だった。

 ところが当日、賛成の公述人は5人に減っていた。「その他の意見」が実質的に反対の立場で公述したことで賛成5反対6となり、構成が逆転してしまったのだ。この理由について市都市計画課は「(賛成側7人のうち)4人が公述を辞退した。そのため応募者から公述人を繰り上げたが、そこでも1人と連絡がとれず、結局合計で5人となった」と説明する。

 公述申出の受付期間は昨年10月から11月にかけての約1か月。「仲間で手分けして反対署名を集めたが、3000通ほど集めるのがやっとだった」と「上郷・瀬上の自然を守る会」代表世話人の井端淑雄さんは振り返る。

 ともあれ、約2000人が応募するほど熱意のあった賛成側に、7人中5人もの「公述欠席」が生じたことは不可解だ。実は「さほど乗り気でない人」や「つき合いで応募した人」などがかなりの程度を占めていたのでは……との印象さえ抱かせる。

 公聴会当日、傍聴には500人以上が集まった。アウトドアウェアブランドで市内にオフィスを構えるパタゴニア日本支社の従業員も緑地保全の立場から駆けつけたという。計画案について、市は2017年度中にも計画決定する方針だ。公聴会の扱いに関して、市は「意見を踏まえて計画案を検討するが、賛否の割合が案の是非を左右するものではない」と表明している。

<取材・文・撮影/斉藤円華>

ハーバー・ビジネス・オンライン