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【月刊『WiLL』(5月号)より】小池劇場――小池マジックのカラクリを暴く

4/5(水) 9:03配信

WiLL

「公明党抜きで勝負をするよい機会だ。党を挙げて今までにない選挙をやろう」
 3月14日、自民党幹事長の二階俊博、幹事長代行の下村博文(東京都連会長)と会談した安倍首相は、7月の都議選に向けて自ら陣頭指揮をとる姿勢を強調した。
 安倍首相に火をつけたのは、その前日に行われた都議会公明党の中島義雄団長と地域政党「都民ファーストの会」の野田数代表(小池百合子知事特別秘書)による「選挙協力」の発表だ。公明新聞記者から政界入りした中島都議は、世田谷区議を3期、都議を5期、20年にわたって都政に携わる都議会公明党の最古参。
「都議会のドン」こと内田茂(前自民党都連幹事長)とともに、都議会における長年の自公連携を演出してきた人物の一人である。
 生真面目にストライプのネクタイを締めた中島都議と、黒シャツに派手なシルバータイの野田秘書──。都庁での会見後、2人は京王プラザホテルの一室に場所を移し、小池百合子知事を加えて写真に収まった。
 都議会の会期中でもあり、これまで公明党と連携してきた自民党への刺激を抑えるため、彼らは手の込んだ段取りで撮影したが結局、目論見は外れた。
 標的は、あくまで「都議会自民党」で、国政ではない。安倍首相と友好関係を取り繕うため、小池知事は微妙な一線に踏みとどまってきた。「小池劇場」の成功で膨らんだ野心が勝負勘を狂わせたのだろうか。
 都知事に就任以降、その振る舞いを黙認してきた安倍首相を尻目に、小池知事は、メディア映えする「守旧派との戦い」に持ち込む得意の手法を繰り返した。
 最初は内田茂都議、次に石原慎太郎元知事と、自ら仕掛けて回った劇場型政治のブーメランは、全国の茶の間を席巻し、やがて放り投げた当人へと戻ってきたのである。

もう一つのブーメラン

 冒頭の安倍発言があった同じ日。東京都庁では予算特別委員会が開催されていた。議事が始まってから約2時間が過ぎた頃、山場が訪れた。
「(豊洲新市場は)法的に求められている点はカバーしている」
 仕方ないと言わんばかりの表情で、小池知事が答弁した。知事判断で移転を延期しているだけなので当たり前だが、小池知事がその「初歩的な認識」を自ら表明したのは、初めてである。
 東京都はこれまで豊洲に860億円を投じ、汚染土を除去し、盛り土をして、建物1階の床には最大45センチの厚さのコンクリートを敷いた。土壌汚染対策法に定められた措置が、充分に講じられてきたことに議論の余地はなく(この点は衆議院総務委員会の答弁で農林水産省も認めている)、建築基準法上の検査済証も交付されて、構造上の安全性も確認された。
 世間を騒がせた「地下空間」問題で、小池知事は当時の市場長らを処分したが、その理由も「安全性を損なったから」ではなく、「説明責任」だった。
 もちろん法令を満たしていても、豊洲の地中深くには、まだら状に有害物質が残っている。ゲリラ豪雨で地下水量が増し、有害物質が流されて上昇するリスクとも付き合っていかなければならない。
 だからこそ、地下水が一定の高さまで上ってきたら吸い上げ、それを浄化し、排水するシステムが設置されたのだ。
 こうして豊洲には、これでもか、これでもかと「法令を上回る対策」が重ねられた。大雑把にいえば、国の法令遵守を「百点」とした場合、豊洲はこれを満たした上で、「120点」を目指し続ける対策といってよい。小池知事の就任前から、すでに「法的に安全」は得られていたのである。
 ところが、小池知事は一筋縄では認めない。この予算特別委員会において、自民党の崎山知尚都議が「法的安全がクリアされているか」を確認すると、知事の口から驚くべき発言が飛び出した。

崎山 豊洲も安全に問題はないと理解してよろしいか。
小池 豊洲の地下空間の床は、土壌汚染対策法上の汚染土壌の遮断のためのコンクリートではない。

 誰に教え込まれたか知らないが、こんな珍妙な法令の解釈は存在しない。前述の通り、豊洲の一階の床は、厚いコンクリートで覆われている。法令だけでなく、科学的にも安全と評価され、この1月、地下水モニタリング調査で高濃度の有害物質が検出された直後でさえ、専門家会議の平田健正座長は「地下水の有害物質が揮発しても、地上の安全は満たせる」と述べているのだ。
 まだ「豊洲に問題がある」と思わせたい知事の答弁は二転三転するが、杓子定規の役人に問うとこう答えた。

環境局長 盛り土、アスファルト・コンクリート等により土壌汚染対策法上必要な措置はされている。
市場長 建築基準法や土壌汚染対策法などさまざまな法令に照らして適切に整備を進めてきました。労働安全衛生や食品衛生の観点から法令に基づいた措置を講じております。

 部下たちに誤りを指摘された恰好の小池知事は、やむなく方向転換。
 その後は、「120点を目指す」と主張するのみの、次のような答弁を三度も繰り返した。いわば「100点」を満たす「現状の達成」を認めない戦術なのだ。

小池 法律が求める安全性の確保、加えて都民・国民が安心できる市場を実現していこうということ。法令を上回る措置を講じることが東京都の意思ではなかったかと思います。
 さすがに委員長の注意も受け、最後の最後に「法的に求められている点はカバーしている」と認めることになったが、昨年8月末の「移転延期」の判断から数えれば、小池知事が「初歩的な認識」に到達するまで、都政は実に、半年以上の時間を費やしたことになる。

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最終更新:4/27(木) 15:51
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