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ドラマ『嘘の戦争』はなぜヒットしたのか?その舞台裏をノベライズ作家・相田冬二が解説する

4/5(水) 17:48配信

otoCoto

放送中は平均視聴率11.3%をキープし、<2017年1月スタートの冬期連続ドラマ全話の満足度調査>ではトップに輝いた草なぎ剛主演のドラマ『嘘の戦争』(関西テレビ・フジテレビ系)。このたびドラマの小説化『嘘の戦争』(KADOKAWA)を上梓したノベライズ作家そしてライターである相田冬二さんに、作品の魅力、小説の読みどころについて聞きました。


■“悪”が成敗されない時代に悪とは何か?を問いたドラマ


──ドラマは高視聴率を獲得、今回ノベライズも出版となりました。ノベライズ版をご執筆された相田さんは、人気の理由はどこにあるとお考えですか。

「勧善懲悪」という、日本人が長く慣れ親しんできた物語が今的にアップデートされてたと思いました。現代は、悪が成敗されない時代だと思うんです。現代は、あるひとつの組織や企業が悪いという時代ではなく、<本当の悪>が目に見えにくい時代になってしまいました。IS(イスラム国)だけが悪いのかというと、そう端的に片づけられなくなってきた社会構造があって、もはや、巨悪という言葉自体も死語になりつつある。“明確な悪”が顕在化しない混沌とした時代だからこそ、一ノ瀬浩一という主人公がその驚くべき精神力と才能で、小悪をひとつひとつ抹殺していく物語に、カタルシスを感じたのだと思います。しかも一ノ瀬は殺人はせずに、社会的抹殺を制裁とします。ニシナコーポレーションには手は出さずに、ひとりひとりと向き合って、精神的に追い詰めて、彼なりの仁義を通していく。そこには、人間の良心を信じているという、ある種の性善説があることが現代的です。ただ、これは誰にでもできることではない。一ノ瀬は一種の超人だと思います。

──今回のドラマ『嘘の戦争』のノベライズは、ドラマの脚本の執筆と、ほぼ同時進行で進められたとか。

ドラマの脚本が1話上がったら、1話分のノベライズを書くというぺースで執筆しました。ですので、僕も視聴者の皆さんと同様に、先の読めない緊張感と共に、執筆していきました。つまり、一ノ瀬がどうなるのかわからないまま書いています。わかってからも修整はしません。そこの臨場感は大切にしました。

──先の展開が読めない中、小説を書き進めていくのは非常に難しそうですが。

実は、映像を観て執筆するのはあまり意味がないと思っています。というのは、映像にできることと文字にできることって、根本的に違うんです。たとえ、ドラマを観たまま、その映像を文字に置き換えても、表現としては全然追いつきません。それだけ、役者の演技って雄弁で素晴らしいものだと思います。ですので、脚本を読んで、「僕の解釈、僕のアプローチはこんな感じです」とそれぞれの登場人物を演じて見せている感じに近いです。全編、主人公のモノローグだけで構成することもよくあります。というか、むしろそれが僕の基本スタイルです。

──確かに登場人物の本心は、ドラマのセリフでははっきり表現されないことの方が多いですよね。

そこがノベライズでできることだと思っているので、モノローグに軸を置いて書くことになります。そしてその前提にあるのは、「人は常に嘘をつく」ということなんです。例えば、恰好いいことを言ってる人の中身が恰好いいとも限りませんよね。その逆もある。つまり台詞がすべてではないということです。どんな人も、表面の見え方、つまり外見と内面のギャップがあるはずだと思っています。そのギャップを“人間らしい尊いもの”として描きたいと思っています。ただ、今回は嘘つく人の話なので、そのギャップはそっけないくらい淡々と描くべきだと考えました。モノローグに頼らず、各話の冒頭だけ、毎回違う人物のモノローグを入れました。でも、今回は本当に苦労したんですよ。

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最終更新:4/6(木) 16:13
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