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フジ月9、なぜ相葉雅紀に賭けた? 『貴族探偵』に漂う“ヒット作”の予感

4/5(水) 10:50配信

リアルサウンド

 嵐の相葉雅紀が主演を務めるフジテレビ系ドラマ『貴族探偵』(17日~)が、放送前から大きな注目を集めている。同局を代表するドラマ枠である“月9”の30周年作であり、視聴率の低迷が指摘される中での起用とあって、相葉に大きな期待が寄せられているのは明白だ。同作にはほかにも、武井咲、生瀬勝久、井川遥、滝藤賢一、中山美穂など実力派俳優が名を連ねており、フジテレビにとって正真正銘の勝負作と言える。月9が相葉に“賭けた”理由を、改めて考察したい。

 まず、相葉の俳優としての現在地から探っていこう。相葉の俳優としてのキャリアは長く、嵐としてデビューする前、Jr.時代に1997年に放送されたKinKi Kids主演作『ぼくらの勇気 未満都市』でドラマデビューを果たしている。しかし、同グループの櫻井翔が2002年に『木更津キャッツアイ』(TBS)で、松本潤が2005年に『花より男子』(TBS)で、二宮和也が2006年に『硫黄島からの手紙』で、それぞれ俳優として高い評価を受け、少し遅れる形で大野智が2008年に『魔王』(TBS)で連続ドラマ初主演を飾ったのに比べると、俳優としての相葉は遅咲きだった。2009年に深夜ドラマ『マイガール』(テレビ朝日)で連続ドラマ初主演となったものの、決して高い評価とはいえず、相葉はむしろ『天才!志村どうぶつ園』などのバラエティ番組で、その素朴で親しみやすいキャラクターを世間に浸透させていった。2000年代に数多く作られていた、いわゆる“イケメンドラマ”や、宮藤官九郎作品に代表される青春コメディでは、相葉が本来持つ柔らかい人柄は活かしにくかったのかもしれない。

 そんな相葉にとって初めての当たり役といえたのは、2015年に放送された池井戸潤原作のフジテレビ月9ドラマ『ようこそ、わが家へ』だろう。気弱な青年がストーカーから家族を守るために徐々に成長し、たくましくなっていく姿は、嵐が国民的アイドルグループへと成り上がっていく中で、スターとしての貫禄を身に付けていった相葉自身のキャリアとも重なっていて、それが視聴者の共感を呼んだ。相葉本来の優しさに加え、30代を迎えた男のたくましさや決意を描いたことで、彼の新境地を切り拓いた作品といっても過言ではない。さらに、“トレンディドラマの月9”において、あえてサスペンスに挑戦したこと、幅広い年齢層が興味を持って観ることができるホームドラマだったことも後押ししてか、最終話の平均視聴率は15%を記録。相葉雅紀にとっても、フジテレビにとっても、有終の美となった。

 ちなみに、その後の月9最終話の平均視聴率を並べて見ると、福士蒼汰主演『恋仲』が11.5%、石原さとみ主演『5→9~私に恋したお坊さん~』が12.7%、有村架純主演『いつかこの恋を思い出してきっと泣いてしまう』が10.2%、福山雅治主演『ラヴソング』が9.3%、桐谷美玲主演『好きな人がいること』が8.4%、Hey! Say! JUMP・山田涼介主演『カインとアベル』が9.1%、西内まりや主演『突然ですが、明日結婚します』が6.0%と、この2年で大きく下がっている(平均視聴率はすべて関東地区・ビデオリサーチ社調べ)。『恋仲』放送時の2015年7月、プロデューサーの藤野良太氏は、昨今は高い年齢層をターゲットとしたテレビドラマが多いからこそ「若者を標的にしないとドラマ(文化)が終わる」と述べていることから、同作が単に高視聴率を狙っただけではない、志のある作品だったことが伺えるが、その後の恋愛ドラマの視聴率を見る限り、現実は厳しいと言わざるを得ない。(参考:NEWSポストセブン『月9プロデューサー「若者を標的にしないとドラマが終わる」』)

 こうした流れを見ると、フジテレビが再び相葉雅紀を月9主演に起用したのは、真っ当な判断である。今作のプロデューサーには、『ようこそ、わが家へ』も手がけた羽鳥健一氏が名を連ねており、少なくともクオリティ面では期待ができそうだ。また、コメディタッチの推理ドラマであるという点も、2001年と2014年に同枠で放送された木村拓哉主演の名作『HERO』を彷彿とさせる。加えて、昨今のドラマの流行と、相葉のほんわかとしたキャラクターは、非常にマッチしているようにも思える。ドラマ評論家の成馬零一氏は、昨今のヒットドラマの傾向を、「見ている側が傷つかない優しい世界であり、好きな俳優が楽しい会話劇を延々と繰り返している」と分析しているが、相葉の“推理をしない探偵”というコミカルな役どころは、そうした作風の流行とも相性が良さそうだ。

 嵐は現在、国民的アイドルグループとしてすでに頂点を極め、30代にしてキャリアの円熟期にあるが、俳優としての相葉は、まだ伸び代がある。相葉が本作でコメディ路線に活路を見出せば、『ようこそ、わが家へ』を超える代表作になる可能性さえあるだろう。いや、超えることができなければ、相葉とフジテレビの双方にとって打撃となるはずだ。実は下ネタが大好きだという相葉のコメディセンスに期待したい。

松下博夫

最終更新:4/5(水) 10:50
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