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2017年「住みたい街」ランキング1位へと躍進! 生まれ変わった23区唯一の「消滅可能性都市」とは?

4/5(水) 9:10配信

HARBOR BUSINESS Online

 大手不動産情報サイト「HOME’S」がユーザーを対象とした調査に基づき発表した首都圏版「住みたい街ランキング」に大きな異変が起きている。(参照:HOME’S)これまで上位だった「吉祥寺」や「自由が丘」などを押さえて、2017年の「借りて住みたい街」1位に輝いたのは、なんと「池袋」。

 かつては、この池袋に代表されるように「治安が悪い街」という印象のあった豊島区であったが、近年そのイメージは大きく変わりつつあるという。

「イメージアップ」の1つのきっかけは、実は「消滅可能性都市」であった。

◆豊島区がまさかの「消滅可能性都市」に!?

 2020年のオリンピック開催まで3年ほどになった東京。都内各地が空前の開発ラッシュに湧く中、オリンピック以降の長期的な「生き残り」を目指し、地道な努力を続ける街があった。

 それは、2014年5月8日に開かれた日本創成会議・人口減少問題検討分科会において東京23区唯一の「消滅可能性都市」の認定を受けてしまった豊島区だ。

 世界第3位の乗降客数を誇る池袋駅をかかえ、「消滅」という言葉とは無縁のイメージだった豊島区に対して発せられた非情な宣告は、区民にも、そして行政に対しても大きな衝撃を与えることとなった。

 一体、なぜ豊島区が「消滅可能性都市」となってしまったのだろうか。

◆消滅しないために必要なのは「女性住民を増やすこと」

 そもそも「消滅可能性都市」とはどういったものなのか、ここで再確認する。

 先述の日本創生会議における「消滅可能性都市」の定義は、20-39歳の女性人口が2010年から40年にかけて50%以上減少する可能性がある自治体のこと。そうした自治体は全国で896もあるといい、豊島区も「20-39歳の女性人口が50.8%減少する」との予測がなされたことから、東京23区唯一の「消滅可能性都市」にカテゴライズされてしまったのだ。

 つまり「都市を消滅させないため」のカギを握るのは「若い女性」の存在だ。

 そこで、豊島区では、これまでの「治安が悪い街」というイメージの払拭を図るとともに、「女性にやさしいまちづくり」を行えば将来的な女性人口の減少を防ぐことにつながるとして、消滅可能性都市からの脱却を目指した第一歩を踏み出すこととした。

◆「女性にやさしい」を掲げてイメージアップ

 2014年5月の「宣告」を受けたあとの豊島区の対応は早かった。

 区では、消滅可能性都市に指定されてからわずか1週間で対策本部を設置。まずは「女性区民の声」に耳を傾けるべく、2014年7月19日に20歳以上の女性区民を対象にした市民会議「としま100人女子会」を実施したのを皮切りに、翌8月からは子育て世代の女性委員32人を中心とする「としまF1会議」を毎月連続で6回開催した。「F1」とは、放送業界などで20歳~34歳の女性を指す言葉で、若い女性が暮らしたくなるまちとはどんなものなのか、有識者の様々な意見を聞き入れるなかで、目指すべき「まちの将来像」が浮かび上がってきた。

 そして、これらの会議の結果を受け、豊島区では「働く」「住む」「育む」「輝く」の4つをキーワードにした「女性にやさしいまちづくり」に着手することになった。

 2016年4月には「女性にやさしいまちづくり課長」にマイクロソフト日本法人で広報として活躍したフリーコンサルタントの宮田麻子氏を起用し、消滅可能都市脱却へ向けたまちづくりへの取り組みが本格的にスタートした。

 まず、本格始動第1弾として行ったのが、女性の「働く」を支援する政策「イクボス宣言」だ。

「イクボス」とは、働く部下やスタッフのワーク・ライフ・バランスを考えられる上司のことで、区内に「イクボス」を増やし、女性が働きやすい職場環境を整備していくのが大きな狙い。もちろん、このような上司が増えるのは男性にとってみても嬉しいことであり、2016年9月に豊島区の企業や大学など計67団体がこの「イクボス宣言」に調印している。

 また、2016年11月25日には新たな女性向け情報サイト「としまScope」が開設された。「わたしらしく、暮らせるまち。」がテーマの同サイトのシンボルは、複数の集合体を「輝く」石に見立てたもの。

 サイト内には、先述の「イクボス」や、区内で活動する女性団体へのインタビューなどが掲載されており、「豊島区で働きながら暮らすこと」の魅力を発信することで、かつての「治安が悪く女性が暮らしにくい」というイメージの払拭に努めている。

◆「日本最大規模の女性トイレ」まで!?

「女性にやさしいまち」となるためには、ソフト面だけではなくハード面の環境整備も不可欠だ。

 豊島区の「住む」環境を見ていくと、区内ではワンルームマンションなどといった住戸面積が49㎡以下の狭小住宅が6割を占めていることが分かる(2013年度)。4人世帯における最低居住面積水準が50㎡とされていることを考えると、区内には子育てには向かない狭い住宅が多い。つまり、豊島区は子育て世代の女性にとって「住みたくても住めないまち」であり、結婚や出産を機に広い住まいを求めて区外へ転出してしまう事例も多かったのだ。

 その一方で、豊島区は利便性の高いエリアが多いにも関わらず、空き家率が東京23区で最も高い15.8%(2013年度)となっている。そこで豊島区では、東京都心では珍しい「リノベーションまちづくり」を掲げ、空き家ストックを有効活用することで、子育て世代の「住む」を後押しすることにした。

 具体的な事業内容としては、遊休不動産の活用方法を構想する「リノベーションスクール」の開催や、民間まちづくり会社への支援などを実施。リノベーション事業の促進を図り、2019年度までに100件、2024年度までには200件のリノベ事業化を目指すとしている。これまでに行われたリノベーションスクールでは既に2件が事業化に至っており、こうしたリノベーションによって多くの狭小な賃貸住宅が子育て世代の「理想の我が家」へと生まれ変われば、「住めないまち」であった豊島区自体が「住みよいまち」へと生まれ変わっていくことになるだろう。

 こうした豊島区の「女性が住みよいまち」を目指したハード面の整備は様々な分野に広がっており、東京建物が池袋駅東口の豊島区旧庁舎跡に整備している商業施設、映画館、区民センターなどを備えた複合施設には、日本最大規模となる35ブースの女性用パブリックトイレとパウダーコーナーが設けられる計画となっている。

◆区役所新庁舎もイメージアップに

 また、2015年に完成した新たな豊島区役所庁舎(写真)も、区のイメージアップに一役買っている。

 新庁舎は、大手ディベロッパーの東京建物などと共同で整備されたもので、地上49階・地下3階建て。デザインは有名建築家・隈研吾氏が手がけた。そして、その最大の特徴は、上層階が大型タワーマンションとなっていることだ。

 この新庁舎は、豊島区の住環境・都市景観の向上にも寄与したばかりか、懸案だった新区役所の建設費用の全てが新庁舎に併設された分譲マンションの販売収入と先述した旧庁舎跡の定期借地料によって賄われ、新たなまちづくりのための財源確保にも繋がることとなった。

 区役所の最上階となる10階には、かつて自然豊かだった時代の豊島区の植生や生態など自然のしくみを学ぶことができる屋上庭園が設けられており、区民の憩いの場にも、そして子供たちの教育の場にもなっている。

◆民間にも広がる街改善の取り組み

 このほかにも「育む」をキーワードに、親子世代が安心・安全に暮らせるまちを目指した取り組みも進んでいる。池袋保健所では大手書店「くまざわ書店」の協力のもと「鬼子母神plus」と題して子育て関連の書籍・展示コーナーを開設したほか、新たに区による妊婦や子育て期間中の母親への相談なども開始された。

 さらに、池袋駅の周辺では、商店会による夜の街のパトロール強化、悪質な客引き・ぼったくり防止策の強化など、行政・企業・地域住民などが協力するかたちで、安心・安全に暮らせるまちを目指した様々な施策も行われるようになっている。

 こうした取り組みにより、近年は池袋駅周辺の刑法犯件数も減少傾向にあるといい、「女性にやさしいまち」へと生まれ変わる努力があらゆる分野へ広がりを見せることで、豊島区は「男女を問わず誰にとってもやさしいまち」へと変化を遂げつつある。

 官民双方が協力するかたちで「女性にやさしいまちづくり」をおこない、地域のイメージアップをはかることで「住みたい街1位」へと躍り出た池袋。

 東京23区唯一の「消滅可能性都市」豊島区は、行政と住民双方の努力により「消滅阻止」への道を一歩一歩着実に歩み始めている。

【都市商業研究所】

若手研究者で作る「商業」と「まちづくり」の研究団体。Webサイト「都商研ニュース」では、研究員の独自取材や各社のプレスリリースなどを基に、商業とまちづくりに興味がある人に対して「都市」と「商業」の動きを分かりやすく解説している。Twitterアカウントは「@toshouken」

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