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LCC成長の裏に隠された国内大手の寡占化戦略(森山祐樹 中小企業診断士)

4/6(木) 6:14配信

シェアーズカフェ・オンライン

 国土交通省は2015年には国内の航空市場でLCC*のシェア(旅客数)が10%を超え、国内市場に競争を創出したとその政策成果を高々にうたうが、ピーチがANAに子会社化されたことでその風向きが大きく変わった。H24(2012)年にLCC元年といわれ、新規参入が相次いだ国内航空市場も、いまや大手の寡占市場へと逆戻りとなった。
(*LCC・・・ピーチ、バニラ、ジェットスター、春秋の4社)

■日本の国内市場
 LCC元年以降、LCC各社の国内旅客数シェアは以下グラフ1の通り、右肩上がりで伸びている。その一方で、大手(JAL/ANA)のシェアは下降しており一見して国土交通省が示す通り日本の国内市場に競争創出と市場拡大という効果を上げたかに見えた。
 
 また、国内旅客収入ベースでのシェアを見てみるとグラフ2の通りであり、H24の大手合計シェア87.3%に比べるとH27では86.1%とLCCの隆盛に合わせ旅客収入ベースでも大手シェアは低下していると言える。しかし、ピーチの子会社化によりANAにピーチの旅客収入を加える(子会社化はH29年4月であるため、H27の数値で子会社化されたと仮定して試算)とすると87.3%になりLCC元年に逆戻りする。これは国内市場がANAのピーチ子会社化により、収入ベースではH24年の寡占化状態に逆戻りしたと言える。

■海外LCC
 海外のLCCに目を向けてみると、国土交通省のLCC参入による地域への経済波及効果に関する調査研究では、LCCの旅客数ベース市場シェアは北米で約30%、ヨーロッパ域内が40%前後、東南アジアでは50%超となっている。

これに対し、国土交通省は2020年の日本国内市場でのLCCシェア目標を14%としている。LCCのビジネスモデルが得意とする短距離路線でほとんどカバーできる日本の国内市場の目標としては非常にさみしいものであり、国土交通省の目標値に大手の寡占化戦略の影響がないとは言い切れない。

 アイルランドのライアンエアー、イギリスのイージージェット、アメリカのサウスウエスト、マレーシアのエアアジア等、世界で大きな成功を収め、いまや巨大なシェアを持つLCCは生粋のLCCであり、欧米に数ある大手航空会社の子会社ではない。なぜなら彼らは既存大手の固定概念や常識に捉われない発想が行えるからこそ、利用者の心を掴み、大きな成長を勝ち取り、利用者利益につながる競争の源泉となったのである。

■コンセプト
 ピーチの井上社長は、ピーチを「空飛ぶ電車」だと呼ぶ。これはアメリカのサウスウエスト航空のハーバート・ケレハーの「空飛ぶバス」を真似たものであろうが、ケレハーは本当に空飛ぶバスを作ろうとしていた。自分の競争相手は長距離バスであると定義し、当時の長距離バス利用者をターゲットとして捉え、そのために必要なビジネスモデルを確立していた。

そこまで本気で空飛ぶバスを実現しようとしていたからこそ、そのコンセプトに従い業界の常識を打ち砕くようなアイディアを次々と生み出し続けたのである。

 これに対し、大手が考えたLCCには何が実現できるであろうか。ANAはピーチ子会社化後もその独立性を維持すると言うが、ANAのANAによるLCC事業にケレハーほどの信念は見て取れず、本当に電車を競合とし、電車を利用している層を顧客として捉え、そのために必要なビジネスモデルを確立しているのであろうか。

本体とのカニバリゼーションに配慮し、無意識のうちに発想に制限がかけられる大手傘下の航空会社からは、業界を覆すような本当の意味でのイノベーションは生み出せない。むしろ、本体を気にして運営するLCCが元気に生き延びられる日本の国内市場に生ぬるさを感じずにはいられない。

 国内市場の健全化のためには、大手航空会社の息のかからない資本による本当の意味での新規参入が求められる。まやかしのLCCではなく、欧米やアジア並みにインパクトあるLCCが発達し、市場に本物の選択肢を生み、市場を活性化させるためには、大手の牙城を崩す風雲児の出現と、国の覚悟ある施策に期待するしかない。

森山祐樹 中小企業診断士

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