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「速読」は科学的に不可能だと証明される。最も有効なのは「飛ばし読み」スキルを上げること

4/6(木) 9:10配信

HARBOR BUSINESS Online

「速読ができれば…」と思う人は多いでしょう。日に日に情報量が増加する現代では、短時間で大量の本を読めたほうが有利なのは間違いありません。1冊の本を10分で読めれば、計り知れない知識が手に入るでしょう。

 しかし、速読トレーニングの世界は、どうにも怪しい主張が多いのが難点です。本のページをカメラのように脳に写したり、眼球を素早く動かすトレーニングしたりと、にわかには信じがたいテクニックが多く存在しています。

 なんともうさん臭い世界ですが、そもそも速読には効果があるのでしょうか?

 そこで参考になるのが、2016年にカリフォルニア大学から出たレビュー論文です(1)。

 これは、過去に行われた速読の研究から約200本の論文を選び、それぞれのデータをチェックしたもの。現時点における速読リサーチの集大成といっていいでしょう。

 その結論とは、おおむね以下のようなものです。

1.眼球をすばやく動かしたり、周辺視野を使ってページを見わたすようなテクニックはすべて無意味。全体の読書時間のなかで目の動きの重要性は10%以下なので、いくら眼球を鍛えても意味がない。

2.フォトリーディングのように、潜在意識に本の内容をインプットすることもできない。人間の脳は、同じ文章を何度か読み直しながら理解を深めていく構造になっており、パラパラとページを進めていけば、それだけ内容の理解度が低くなってしまう。

3.実際に普通の人よりも速く本が読めることを証明した者はいない。2008年には、速読大会でチャンピオンになった人物に「ハリー・ポッター」の最新刊を読んでもらう実験が行われたが、ストーリーをまったく理解できていなかった。

 最初から最後まで、速読の効果をボロクソに否定しています。世に出まわる速読法は、大半がインチキだと言っていいでしょう。

◆重要なのは、速度よりも情報の取捨選択力

 ただし、速読の可能性が完全に消えたかといえば、そうではありません。研究チームは、論文の最後を次のようにまとめています。

『これまでの研究をまとめると、速読のトレーニングにより、深い理解を保ったまま読書のスピードが上がるという科学的な根拠はない。速読でスピーディに読書が終わるのは、飛ばし読みがうまくなった場合だけだ。(中略)飛ばし読みは、大量の情報を処理するための重要なスキルである』

 つまり、真の速読とは、せんじつめれば「飛ばし読み」の技術に過ぎないのです。

 が、たかが飛ばし読みと侮るなかれ。本の内容をざっくりつかむ技術を海外では「スキミング」や「スキャニング」と呼び、ケンブリッジ大学などでも昔から教えられてきた由緒あるテクニックなのです(2)。

 その方法論は多岐にわたりますが、ここでは基本的なポイントに絞ってご紹介しましょう。

ステップ1.プレ読書

 まずは本の下調べからスタート。本の目次、各章や節の見出し、著者の履歴などをチェックし、「そもそも何の本なのか?」を明確にしましょう。各チャプターの最初と最後のパラグラフだけを読んでみるのも有効です。

 プレ読書の段階では、自分に対して以下の質問を投げかけながら行うのが効果的です。

・このタイトルからどんな内容が想像できるだろう?

・この著者はどんな内容を書きそうだろう?

・章や節の見出しからわかることはなんだろうか?

◆読書のゴールを決めることで全ページ読まなくてもよくなる

ステップ2.ゴール設定

 次に大事なのが、読書の目標を決めることです。

 たとえば「最新の情報にキャッチアップしたい」でも、「時間管理の方法を学びたい」でも、「英語の効率的な勉強法を知りたい」でも何でもかまいません。プレ読書でわかった情報をもとに、「自分はこの本から何を得たいのか?」を明確にしていきましょう。

 読書のゴールがハッキリした時点で、読むべきページは大幅に減ります。ワンテーマで書かれた新書などは、全体の10分の1を読めば十分というケースも少なくありません。

ステップ3.速読

 続いて速読に移ります。つねに読書のゴールを意識しながら、最後までサッと読んでみましょう。このときには、定期的に以下の問いを自分に投げかけていくのが有効です。

・読書のゴールに沿った重要なポイントは見つかったか?

・議論の前提と結論はつかめているか?

 速読が上手い人であれば、実はこの時点で読書を終えることも可能です。しかし、慣れないうちは「本当にこれで理解できたのだろうか……?」という不安がつきまとうでしょう。

 その場合は、ややスピードは落ちますが、以下の方法を試してください。

・読書のゴールに沿った結論やテーマだと見えるものに、片っ端からペンでチェックマークをつけていく。

・それ以外にも、直感的に自分が重要だと思ったセクションや文章にも適当な目印をつけておく。

ひととおりチェックが終わったら、次のステップに進みます。

◆“再速読”スキルが上がれば新書なら10分で読了可能

ステップ4.再速読

 最後は再速読です。具体的には、以下のように行ってください。

・あらためて読書のゴールを意識する

・ステップ3でつけたチェックマークから、さらに重要そうなポイントを10~20個ぐらいに絞り込む

・絞り込んだポイントをながめて、「読書のゴール」に対する答えを自分の言葉でまとめる

 このステップでもっとも大事なのは、事前に設定したゴールの答えを、自分の言葉でまとめるところ。目安としては、「友人に内容をちゃんと説明できる」レベルを目指すのがわかりやすいしょう。この作業は頭のなかでやってもOKですが、最初のうちは紙に書き出すのがおすすめです。

 飛ばし読みのスキルが上がれば、再速読のステップは無意識のうちにできるようになるはず。そこまでいくと、簡単な新書であれば1冊を10~15分で読み終えることも可能でしょう。ぜひ試してみてください。

(参考)

Keith Rayne , et al.“So Much to Read, So Little Time How Do We Read, and Can Speed Reading Help?”(2016)

Pauline Cullen, et al.“The Official Cambridge Guide to IELTS”(2014)

<文/Yu Suzuki 写真/ぱくたそ>

 月間100万PVのアンチエイジングブログ「パレオな男」管理人。「120歳まで生きること」を目標に、日々健康維持に励んでいる。アンチエイジング、トレーニング、メンタルなど多岐にわたり高度な知見を発信している。NASM®公認パーソナルトレーナー。あまりに不摂生な暮らしのせいで体を壊し、一念発起で13キロのダイエットに成功。その勢いでアンチエイジングにのめり込む。11月11日、初の著書『一生リバウンドしないパレオダイエットの教科書』(扶桑社)が発売。

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