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海外はこう見ている日本の食文化の魅力

4/7(金) 20:32配信

GQ JAPAN

日本の首都では、本格的な食通はテーブル席に長々と腰を落ち着けていたりはしない。ピーター・ジョン・リンドバーグがカウンターのストゥールに腰掛ける。

カウンター席では多くのことを学ぶことができる

Words: Perter Jon Lindbeg
Photos: Brian Finke
Translation: Yasuyuki Ukita

日本人が成熟させたカウンター文化

5代続くてんぷら屋の主人が、紅花油のブクブクと泡立つてんぷら鍋で何をするのかを見たかったら「一宝」の席を予約するといい。1960年以来東京のランドマーク的な存在だ。この店に私は10年通っている。今日は「ショー」を見たことのない2人の友人を連れてきた。カウンターを挟んでわれわれは関勝氏がシシトウ、車海老、卵黄といった見慣れた素材をカリッと揚がった黄金色の塊に変容させていくさまをうっとりと眺める。

カウンター席では多くのことを学ぶことができる。主人がどうやってイカに網の目の切れ込みを入れて柔らかくするか、あるいは揚げ油と衣の間にどのように銀色の箸を巡らせて油が爆ぜるのを調整するかを。勝さんは寡黙だが、そこでは言葉を用いない会話が進行している。われわれが彼を観察している一方で彼はわれわれを観察し、どのくらい勢いよくレンコンにがっついているか、舞茸のサクサク感に目を輝かせているかを見て、われわれの空腹度合いを測っている。

45分後、思いもよらないフィナーレを迎える。グリルしたチーズをフワッフワの白パンに挟んだサンドイッチがてんぷら鍋に投入される。揚がってくるのは、三角形をした「うまみ」だ。それは甘くて、信じられないほど軽い。あまりの素晴らしさにわれわれは大声を出して笑ってしまう。

私なりに東京で食べ歩いて10日目にして、それまで一度もちゃんとしたテーブル席についことがないと気づいた。その代わりに、私は椅子の上でバランスを取りつつ、カウンター越しにおいしいものを出してもらった。騒々しい焼き鳥屋台だったり、静まり返ったミシュラン3つ星付きの店だったりと、状況はいろいろだったが、カウンター席というつくりは同じだった。

日本人はもはやカウンター・ダイニングをもてはやしはしないが、その価値を認めたのはわれわれよりもずっと前のことで、彼らはその様式を議論の余地のないほど完璧に仕立てた。しばしば割烹スタイルと呼ばれる、カウンターとオープンキッチンという配置は19世紀大阪の庶民的な界隈で誕生した。20世紀の終わりまでには、その流行は日本中に広まり、洗練されたレストランにも浸透していった(とりわけ、寿司屋はこの形式の世界的な拡散に寄与した)。

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最終更新:4/7(金) 20:32
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