ここから本文です

日本のヒノキ風呂が存亡の危機!思いもよらない原因とは

ダイヤモンド・オンライン 4/7(金) 6:00配信

 風呂好きの日本人にとって、ヒノキの風呂桶といえば、憧れの存在だ。しかし、そのヒノキ風呂が存亡の危機にあるという。材料である良質な天然ヒノキが不足しているためだ。その原因や再生の動きなどを探った。(取材・撮影・文/ジャーナリスト 木原洋美)

● 「木曽ヒノキ」の風呂桶は もうじき作れなくなる

 2016年の暮れも押し迫ったその日、長野県南木曽町の山中にある志水木材産業の工場では、56台ものヒノキの風呂桶が、仕上げの時を待っていた。出雲大社(島根県)近くに建設中のホテルに納品される予定だという。

 国産材需要の落ち込みが深刻視される時代に、なんとも景気のいい話ではないか、と思いきや……。

 「こんな立派なヒノキの風呂桶を、まとまった数作るのは、これが最後でしょうね。よくご覧になって行ってください」

 社長の志水弘樹さんは、硬い表情でつぶやいた。

 同社が手掛けるヒノキ風呂は木目が細かく、最高品質とされる木曽ヒノキ製。樹齢250年以上の天然木だ。

 創業1944年の同社は、良質の木曽産木材を用い、熟練の技術で造り上げる桶樽メーカーとして高く評価されており、今年5月から運行が開始されるJR東日本の豪華寝台列車「トランスイート四季島(しきしま)」の最上級客室「四季島スイート」と「デラックススイート」にも、木曽ヒノキの風呂桶を納品した。

 風呂文化をこよなく愛する日本人にとって、ヒノキ風呂は憧れの存在だ。加えて、東京オリンピックに向かって急増する外国人観光客のおもてなしにも「和の伝統を演出できるアイテム」であるヒノキ風呂の需要は高まって行くに違いない。

 それなのに、「もう作れない」とはどういうことなのだろう。

● 枯渇する天然林 背景にいびつな木材需要

 「木曽ヒノキの天然木が枯渇しそうなんですよ。ヒノキだけでなく、木曽五木(木曽檜、さわら、高野槙、あすなろ、ねずこ)は、20年程前から枯渇が懸念されており、伐採が計画的に制限されてきました。この先も伐採量は減っていくようですから、我々も人工林材への移行を余儀なくされるでしょう」(志水さん)

 日本を代表するブランド木材の1つ「木曽ヒノキ」は、木曽地域から裏木曽地域(飛騨南部、東濃地域)にかけて分布する天然ヒノキだ。シャンパーニュ地方産のスパークリングワイン以外は「シャンパン」と呼んではいけないのと同じように、「木曽ヒノキ」と呼んでいいのは、同地域の天然ヒノキだけである。

 この地域では、江戸時代から「木1本、首1つ(1本伐採しただけで死罪)」といわれるほどの厳しい保護政策がとられてきたお陰で、樹齢250~300年の立派な天然ヒノキ林が受け継がれてきた。

 ちなみに、「天然」とはいえ、「手つかずの自然」ではない。適切に間伐や枝打ち等が行われなければ、良質の木材には育たない。

 それがなぜ今、枯渇しそうなのか。

 木曽ヒノキの林を管理する農林水産省・中部森林管理局に問い合わせてみた。

 「木曽地方に生育している天然ヒノキの多くは、江戸時代初期頃に城郭などの建築用材として大量に伐採され、その後に天然更新(植林など人工によらずに,自然に落ちた種子や根株からの芽を育ててゆく造林法)したものです。江戸時代は禁伐とされていましたが、明治以降に伐採が進み、天然ヒノキの蓄積が減少してきました。昭和12年は962万m3でしたが、平成22年では382万m3にまで減少しています」

1/4ページ

最終更新:4/10(月) 18:00

ダイヤモンド・オンライン

記事提供社からのご案内(外部サイト)

週刊ダイヤモンド

ダイヤモンド社

4月29日・5月6日合併号
発売日4月24日

定価740円(税込み)

特集 保険 地殻変動!
保険料値上げの衝撃
特集2 2017年 大学3年生が選んだ
就職人気企業ランキング