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コスチュームデザイン権から自宅プロレス開催権まで!プロレスとクラウドファンディングは好相性

HARBOR BUSINESS Online 4/7(金) 9:10配信

 近年、クラウドファンディングと呼ばれる資金調達方法に注目が集まっている。

 大ヒット映画『この世界の片隅に』(2016年11月公開)や、ゲーム『シェンムーIII』(2017年12月発売予定)など、従来の商業ベースでは制作が難しい作品が、ファンより多額の支援を集め実現した例は少なくない。

 大衆娯楽であるプロレスとクラウドファンディングも相性が良く、多数のプロジェクトが達成している。今回はいくつかの事例を紹介しよう。

◆コスチュームの新調費用に

 日本で最初期にクラウドファンディングで資金を募り、目標額を達成したプロレスラーは、2014年の内田祥一(現:ダブプロレス)だ。試合で使うコスチュームが傷んだため、新調する資金を募った。目標金額は50,000円だったが、最終的に106,000円を達成した。

 支援者に対してのリターンは様々だったが、最高額・50,000円のリターンはコスチュームデザイン権利だった。決して安くはない額だが、ファンにとっては金額以上に魅力あるリターンで、ひとりが50,000円を支援した。

◆チャンピオンベルトの制作資金を募る

 クラウドファンディングは、資金調達だけでなく、ファンとの結びつきを強める手段にもなりうる。沖縄のローカルプロレス団体・琉球ドラゴンプロレスリングがその好例だ。

 団体の象徴ともいえる、チャンピオンベルトの制作資金を募ったのだ。リターンは初代チャンピオン決定戦の招待券や試合DVD、高額支援者にはベルトへの名前刻印などだ。目標額は300,000円だったが、大きく上回る500,000円を39人の支援者から集めた。

 王座名は御万人(うまんちゅ)王座『琉王』。御万人とは「みんなの」「人々の」などを意味する沖縄方言だ。ファンよって作られたベルトにふさわしい名前だ。

 ファンは誰が王者になるか気になり、選手はファンに認められようと、タイトルマッチ以外でも素晴らしい試合をしようと努める。単にベルトが作られただけでなく、リング内外に良い効果をもたらした。

◆どこにでも出前プロレス

 ファンを巻き込んで祭りにしてしまう選手もいる。「くいしんぼう仮面」というレスラーだ。

 大阪の有名飲食店のキャラクターをモチーフとした選手で、楽しいプロレスを得意とする。今でこそ各団体・興行で笑いの要素を強めたコミカルマッチが組まれるのが当たり前になっているが、その先駆者ともいえる存在だ。

 くいしんぼう仮面が募ったのは書籍の発行・制作資金だ。内容は自伝 & 関西圏のレスラーインタビュー集だ。リターンには書籍や大会招待券が用意され、高額コースには覆面が提供された。300,000円の目標額に対し、100人から421,500円の支援が集まった。

◆選手がスクリーンから生で飛び出す上映会

 これが好評を得たため、第2弾インタビュー集発行を計画。再びクラウドファンディングで募った。同じく100人の支援者が集まったが、支援額は1,113,000円と前回の2倍以上となった。

 その理由は魅力あるリターンだ。第1弾と同様に、書籍や招待券、DVDなどもあるが、新しく追加されたマットプロレスが魅力的だった。

 なんと、くいしんぼう仮面本人が支援者の希望する場所へ出向き、プロレスを開催するのだ。前回記事では、臨場感抜群のノーリングマッチを紹介したが、リターンではマッおよそ3メートル弱四方のマットを使用。といっても、場外戦がほとんどとなるため、ノーリングマッチとほとんど内容は変わらない。

 さらには試合の様子を撮影し、DVD化してしまうことさえ許可してしまった。現在も支援者自宅やライブ会場、様々な場所でリターン試合が実施中で、動画サイトに試合模様がアップされたり、生配信されたりしている。

 映像プロジェクトもある。大阪の団体・道頓堀プロレスが制作に協力した映画『おっさんのケーフェイ』(谷口恒平監督)だ。

 その上映会はユニークだ。撮影場所のひとつ、道場・ティグレジムで映画内の登場レスラー「ダイナマイトウルフ」が実際に試合をする。本当に選手がスクリーンから飛び出すことから「ダイナマイト4D」を冠された上映会が、5月2日に予定されている。

◆プロレス“ファン”マンガの復刊

 マンガもある。プロレスファンの生態を描いた『最狂超プロレスファン烈伝』(作:徳光康之)だ。1991年に月刊少年マガジンで連載された、プロレス”ファン”の生態を描いた作品だ。

 ファンもの・文化部ものの先がけともいえる作品だが、1年強で打ち切りとなった。2000年にかきおろし続編が刊行されたが、以降中断していた。

 しかし時を経て2016年、作者自らがクラウドファンディングで資金を募ったところ、新エピソードに登場するキャラクター原案権など高額リターンが完売し、1,662,000円もの支援を集めた。

 既存の商業誌では発行が難しくても、熱狂的なファンがいれば作者本人が個人出版社となり、セルフパブリッシングが可能だと示した好例だ。

 同作品はAmazon Kindleで続編が開始し、作者が初の原画展を開催するなど、中断前よりも熱が高まっている。

◆クラウドファンディング成否を分ける、たったひとつの要素

 ここまでリターン内容と金額を中心に述べてきたが、成功したプロジェクトには共通項がある。主宰者が強い想いを持ち、自身の言葉で伝えていることだ。

 琉球ドラゴンプロレスリングの代表・グルクンマスクはこう述べた。

「お客さんに僕たちが出来る恩返しはなんだろう。それは、もっともっと、皆さんに夢や勇気、元気や笑顔を伝える事。そう思いました。だから、もうワンステップ上に行く為にベルトが必要なんです。」

◆クラウドファンディングはプロレスラーになるまでの労苦を選手と共有できる

 また、前出のくいしんぼう仮面は書籍制作にあたり、こう述べた。

「プロレスラーの凄さはリング上のパフォーマンスが全てではありません。プロレスラーになるまでの道のり。デビューしてから。私生活などどんなプロレスラーにもストーリーがあります。僕はそのストーリーが世間の支持を必ず得ると信じています。」

 実現への計画と、魅力的なリターンを用意することは当たり前だ。その上で支援者が仲間になりたいと感じる「夢を語る」ことができるかがプロジェクトの成否を分ける。

 筆者も過去4度、クラウドファンディングで資金調達し『ローカルプロレスラー図鑑』を発行したが、クラウドファンディングは決して「打ち出の小づち」ではない。計画性と想い、このふたつが揃っていないと達成は難しい。

 逆に言えば、このふたつが噛み合えばクラウドファンディングは時に爆発的な力を持つ。単に製品・サービスを販売する商業活動ではなく、プロジェクトが支援者を巻き込んだ祭りになるからだ。

 特にプロレスファンは祭りが大好きだ。良いと思ったものは損得勘定抜きで応援し、積極的に情報拡散に協力する。

 現在もいくつかのプロレス団体や選手がクラウドファンディングで支援を呼びかけている。もしプロジェクトの趣旨に共感したら、低額コースで構わないのでぜひ支援してほしい。

「祭りの一員」になれる喜びと、成否を見守るスリルはたまらないものがあるからだ。

<文・たこ焼きマシン>

【たこ焼きマシン】

名古屋在住のローカルプロレス探求家。ローカルプロレスファンサイトたこ焼きマシン.com、スーパーたこ焼きマシン.comを運営。北海道から沖縄、台湾まで未知のプロレスを求め観戦に遠征する。ご当地プロレスラーガイドブック『ローカルプロレスラー図鑑』をクラウドファンディングで発行。オンラインストア元・小中学校教員、障害者職業能力開発校講師。夢は世界中すべてのご当地プロレスを観戦しての『ワールドローカルプロレスラー図鑑』制作。

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最終更新:4/7(金) 9:10

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