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松田聖子の活動が示す、“これからの社会”におけるキャリアの作り方

4/8(土) 13:00配信

リアルサウンド

【参考:2017年3月27日~2017年4月2日のCDアルバム週間ランキング(2017年4月10日付・ORICON STYLE)】(http://www.oricon.co.jp/rank/ja/w/2017-04-10/)

 トップ10のうち9枚が初登場という非常に入れ替わりの激しいチャートを制したのは三代目 J Soul Brothers from EXILE TRIBEの『THE JSB WORLD』。2位を大きく引き離す35万枚という初動で文句なしの1位となった。デビューシングルの「Best Friend's Girl」から最新シングル「HAPPY」までの全シングルに加えて、オリジナルアルバムのリード曲や『HiGH&LOW』シリーズの楽曲まで収録された「これぞベストアルバム」とでも言うべきこの作品は、今ではLDHの稼ぎ頭に成長した彼らのキャリアを一旦総括するようなものになっている。EDM的なトレンドをいち早く取り入れながら人気者になったこのグループが、次はどんな世界観を提示して自らのイメージを更新していくのか注目したいところである。

 さて、今回取り上げるのは6位にランクインしたSEIKO MATSUDA『SEIKO JAZZ』。松田聖子がマンハッタン・ジャズ・オーケストラのリーダーでもあるデビッド・マシューズとがっつり組んで制作したジャズアルバムで、ジャズやボサノバのスタンダードからCarpenters「遙かなる影」、ノラ・ジョーンズ「ドント・ノー・ホワイ」といったポップスのジャズアレンジまで全10曲を収録。過去には『東京JAZZ 2012』に出演するなどジャズへのアプローチを見せてきた彼女らしく、本格的なジャズバンドをバックにしても決して見劣りしないボーカルを響かせている。

 「デビュー37年目に、また、こうして新しいことにチャレンジできたことをとても嬉しく思います」とは今作リリースにあたっての松田聖子からのコメントだが、「37年」という年月の重みがすごい。「裸足の季節」でレコードデビューした1980年から今に至るまで、音楽のみならず芸能・文化全般において様々な影響を与えてきた彼女。2010年代に入ってからも藤井隆の楽曲の作詞、作曲、プロデュースを行なったり、自身の作品で松本隆、呉田軽穂(松任谷由実)、中田ヤスタカのコラボを実現させたりとユニークな話題を多数提供している。今回のジャズアルバムのリリースも含めて、ジャンルに拘泥することなく自分自身のやりたいことに忠実な活動を続けていることがよくわかる。

 アイドル歌手を出発点としながら「若い女性」という属性と紐づく「狭義のアイドル像」を脱却してくような道を歩んでいる松田聖子は、「アイドルが年齢を重ねる際のモデルケース」として昨今の女性アイドルのあり方と絡めて語られるケースも見受けられる。ただ、彼女がデビューした時代と今とではアイドルというものの定義自体が似て非なるものになっているわけで(かつては選ばれた人だけがアイドルになれたが、今ではアイドルを名乗ればそれらしい存在に誰でもなれる時代である)、個人的には今のアイドル事情を松田聖子に接続させる言説には警戒心を覚える。彼女の生き様から何かしらの意味合いを見出すとすれば、それはもっと大きなもの、「現役時代がますます長くなるこれからの社会におけるキャリアのあり方」なのではないだろうか。デビューから37年、分別ある大人になって立場もある、よっていろいろなしがらみも(おそらく)ある、そんな中でも新しいことにトライする。そういった姿勢は、どんな仕事をしている人にとっても大いなる刺激になるはずである。

 『SEIKO JAZZ』は5月にアメリカの名門ジャズレーベル<Verve Records>から全米リリースされることも決まっている(同レーベルから日本人シンガーが全米リリースするのは初めて)。これからも様々な新しいアクションを通じて、日本社会全体にとってのひとつのロールモデルを描き出していくことを期待したい。

レジー

最終更新:4/8(土) 13:00
リアルサウンド