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春こそ要注意!? 脱サラ起業・ママ起業志望者が陥りがちな過ちワースト3

4/8(土) 16:20配信

HARBOR BUSINESS Online

 本格的な春を迎え、新入生・新社会人として新しい人生のスタートを切った人も多いと思います。

 また春は、長年の夢をかなえ、経営者としての第一歩を踏み出す起業家が多くなる時期でもあります。特に最近は、国が起業支援の施策を充実させていることや、プチ起業・ママ起業という言葉が定着したことで、とみに起業志望者が増えている印象を受けます。実際、私も起業関連のセミナー講師や個別相談会などを頼まれることが多くなりました。

 自分でビジネスをやりたいと言うだけあって、起業セミナーの参加者はバイタリティに溢れた人が多いです。しかし、意欲だけで成功できるほど経営は甘いものではありません。特に少子高齢化や人口減少など、不確実な要素が多い現在においてビジネスを成功させるためには、理にかなった「正しい考え方」をする必要があります。

 ところが、起業セミナーの講師などをやってみると、誤った考え方で起業しようとしている人がとても多いことに気づきます。今回は私がこれまで見てきたケースから、特に脱サラ起業・ママ起業を目指す人にありがちな3つの典型的な過ちをお伝えしたいと思います。

◆1.サラリーマン時代の自分と比較する

 起業相談に来る人に、「ご自分の給料(法人にする場合は役員報酬)は何円くらいを考えていますか?」と質問すると、「サラリーマン時代の月給と同じくらいはもらいたいですかねぇ」という答えが多く返ってきます。今となってはお恥ずかしい限りですが、私も事務所を立ち上げる前はこのように考えていました。

 これは実態としても、理屈としてもダメな考え方です。まず実態から言うと、よほど環境に恵まれない限り、サラリーマン時代の月給と同じ儲けを新規ビジネスで上げるのは不可能です。素材と雰囲気にこだわるレストランを開いても、1週間で1人のお客さんも来ないとか、背伸びして一等地にオフィスを構えたものの、半年たっても売上が立たないといった話は世間にいくらでもあります。

 また、理屈の面から言うと、サラリーマンが受け取る報酬と、経営者が受け取る報酬では、その性質が違います。サラリーマンの報酬=月給は、勤め先の会社が投資、あるいは労働コストとして払うものです。一方、経営者、特にほとんどの起業家があてはまるスモールビジネスの経営者の報酬は、ダイレクトな市場の評価と考えられます。

 言い換えれば、サラリーマンの報酬は勤め先が決め、経営者の報酬は顧客が決めるということです。起業家を目指すなら、まずここをしっかりと意識することが大事です。◆2.自分の都合で売上見込みを立てる

 この見出しだけでは分かりにくいかもしれませんが、起業希望者の中にこのタイプの人は本当に多いです。具体的に説明していきます。

 例えば、主婦の方がいわゆるママ起業を目指すケースで、手作りアクセサリーをネット経由で販売するというビジネスを考えているとします。このような人に商売で一番大事な売上の根拠を尋ねると、よくこんな答えが返ってきます。

「私が1日に作れる数って〇〇個くらいなんです。1個〇〇円で売るとして、掛けると1日の売上が〇〇円、1か月だと〇〇円くらいですかねー」

 これは一見理屈が通っているように見えて、実はまったくダメな考え方です。私はこのような答えを聞くと「作った数が必ず全部売れると、どうして分かるんですか?」とできるだけ優しく訊くようにしています。多くの人は質問の趣旨が分からず、だいたいキョトンとしていますが。

 これが「自分の都合で売上見込みを立てる」という典型例です。前項で「経営者の報酬は顧客が決める」と述べましたが、その報酬の元となる売上を決めるのも、商品を買ってくれる顧客なのです。そして、顧客は供給側の都合に合わせて商品を買ってくれたりはしません。

 賢明な読者のみなさんはもうお分かりだと思いますが、作った数がすべて売れなければ、それは在庫として残ります。在庫は売れてコストを回収することで初めて価値が出るのであって、在庫のまま留まっていれば材料費や倉庫代がかかっているだけの“金食い虫”に過ぎません。

「お客さんは自分が思ったようには行動してくれない」という感覚は、頭では分かっていても実際に経験してみなければ骨身に沁みないものです。しかし、ここを意識して市場や顧客と対話しようとするのか、しないのかは、ビジネスを成長させる上で大きなポイントになると思います。

◆3.「資金繰り」の恐ろしさを知らない

 「経験してみなければ骨身に沁みない」ことと言えば、資金繰りの怖さもそのひとつです。特に脱サラして起業する人はそれまで安定して給与が入ってくることに慣れているため、資金繰りと言われてもピンと来ない人が案外多いものです。

 私は講師として登壇する起業セミナーで、「経営者になって最初に感じる恐怖は、お金が入って来ないのにお金が出ていくことですよ」とよく言います。実際、私も自分の事務所を設立した当初は、見る見るうちに預金通帳の数字が減っていくので背筋が寒くなった覚えがあります。

 資金繰りを楽にするためには、起業当初の出費をできるだけ抑える必要があります。そのためには、家賃や人件費といった固定費をかけないことが大事です。ところが、起業時は見栄や興奮から不必要に広いオフィスを借りたり、雇わなくていい人を雇ったりと、身分不相応な投資をしがちです。それが毎月の支払に跳ね返って経営を圧迫するというのはよくある話です。

 また、資金繰りで意外と盲点になるのが社会保険と税金です。スタートアップ段階で売上も十分に上がらない中、サラリーマン時代は会社が折半してくれていた年金と健康保険料を全額払わなければいけないのは、けっこう負担感があります。また、税金は赤字なら払わなくていいと思うかもしれませんが、法人の場合は均等割の法人都道府県民税と法人市民税が合計で7万円程度かかります。会社がまだ小さい段階では、これも意外と痛い出費になります。

 以上、起業希望者が陥りがちな過ちについて見てきました。

 もちろん、これらを注意しておけばビジネスの成功間違いなし、というほど単純ではありませんが、夢と願望だけで突き進むよりははるかに有益な準備ができるはずです。業には、自分で自分の人生を切り拓いていくという何物にも代えがたい魅力があります。起業を考えている方にとって、このコラムが少しでも有意義な情報になれば幸いです。

<文/多田稔>

【多田 稔】

中小企業診断士、経営アナリスト。「多田稔中小企業診断士事務所」代表。経営コンサルティング・サービスに携わる傍ら、「シェアーズカフェ・オンライン」などで企業分析・会計に関する記事を執筆

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