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スコットランド独立論争が再燃。なぜこのタイミングで?

4/9(日) 16:20配信

HARBOR BUSINESS Online

 3月31日、スコットランド自治政府のスタージョン首相が、スコットランド独立を問う住民投票の実施を要求する書簡を英政府に送りました。

 これに対しメイ首相は、今はその時期ではない、として、これを認めない姿勢を示しています。

 英国で、やっかいな話題が再燃しています。

◆スコットランド独立住民投票のタイミング

 メイ首相は今はその時期ではない、と柔らかくいっていますが、本音は、お願いだから今このタイミングでその話は勘弁してくれないか、といったところでしょう。

 29日、英国はEUに離脱交渉開始を正式に通知しています。

 交渉期間は2年。ただ、議会での承認プロセスなどを考えると、実質2年も猶予はないと考えるのが普通でしょう。

 この間に英国がしなければならないのは、EUといかに交渉し、貿易面などで好条件を引き出すのかだけではありません。他国と新たな経済、外交関係を構築したり、移動の自由の問題とどう向き合うかを検証したり、対処しなければならない問題は山積みとなっています。EUとの交渉が厳しいものになると考えると、なおさらのことです。

 この期間の英政府、英議会は、とにかく忙しいわけです。そんな忙しい時に、スコットランドという身内で独立気運が高まっているのです。

 身内と書きましたが、スコットランドは300年超もの間、一緒にいる身内。独立となれば、300年超の枠組みが崩れるわけです。どうぞ、好きな時に独立してください、というわけには当然いかないでしょう。

◆ハード・ブレグジットに納得できないスコットランド

 スコットランドは数年前、既に独立住民投票をしています。

 2014年、独立反対が55%で独立賛成の45%を上回り、結果、スコットランドは独立しないという結論を出したわけです。

 それが一転、わずか数年経っただけで、再び独立住民投票をするぞという今回の話。この間に起こったことは、昨年6月の英国民投票、そして、英国がハード・ブレグジット路線をとったことです。

 昨年6月の英国民投票では、イングランドやウェールズはEU離脱を支持していますが、スコットランドや北アイルランドはEU残留を支持。英国全体では52%が離脱支持と接戦となりましたが、スコットランドに関していえば、62%がEU残留を支持、つまり、10%以上もEU残留支持の方が多かったわけです。

 10%も残留支持が多かったのに、離脱という結果になってしまい、納得いかなかったスコットランド。それでも、英国がEU単一市場へのアクセスがある「ソフト・ブレグジット」路線をとるのではと考えられていた当初はまだおとなしくしていました。

 それが一転し、英国はEU単一市場から脱退する「ハード・ブレグジット」路線をとるとしました。これがスコットランド与党に火をつけました。

 もしスコットランドが独立しなければ、これはつまり、スコットランドが「自動的に」EU単一市場へのアクセスを失うことを意味します。これを避けたいスコットランドは、独立した後に、EUとの関係はどうなるかは分からないものの、少なくとも英政府主導ではなく、自らがEUと交渉の場に立ち、EUとの関係、未来を決める。自らの未来は自らの手で決めたい、というわけです。

◆EUとの繋がりを維持したいスコットランドの思惑

 今回のスコットランドの動きには、EUとのつながりを維持したいという視点と同様、政治的な視点が多いにあると考えられます。

 この独立住民投票を推進しているのは、与党である、スタージョン首相率いる国民党。これに、緑の党が協力しているという構図となっています。面白いのは、保守党、労働党、自由民主党などは、この独立住民投票の動きに反対している点。もう2014年に結論は出た、これはスコットランドに混乱をもたらす、などの意見が多いです。

 そもそも、与党の国民党というのは、スコットランド独立運動を掲げている党。だからこそ、2014年に独立住民投票を行ったという過去を持っているわけです。そして、国民党は、独立住民投票を英EU離脱交渉が終わる前に行いたいと考えています。

 なぜ、離脱交渉の結果を見極めてから、これを行わないのでしょうか。

 その理由には2つの可能性があります。それは、英政府が離脱交渉で忙しくしている期間だからこそ、スコットランドの独立議論にかまっている時間はない、つまり時間が十分ある時よりも、独立容認へと傾きやすいという点。

 さらに、離脱交渉は難航する確率が高い。これはつまり、スコットランド国民が、英国の未来を不安に思うことにつながりますから、スコットランド独立住民投票で独立賛成票を有利に集めることができます。このような読みを国民党がしている可能性は、十分あると著者は考えます。

<文/岡本泰輔>

【岡本泰輔】

マルチリンガル国際評論家、Lingo Style S.R.L.代表取締役、個人投資家。米国南カリフォルニア大学(USC)経済/数学学部卒業。ドイツ語を短期間で習得後、ドイツ大手ソフトウェア会社であるDATEVに入社。副CEOのアシスタント業務などを通じ、毎日、トップ営業としての努力など、経営者としての働き方を学ぶ。その後、アーンスト&ヤングにてファイナンシャルデューデリジェンス、M&A、企業価値評価等の業務に従事。日系企業のドイツ企業買収に主に関わる。短期間でルーマニア語を習得し、独立。語学コーチング、ルーマニアビジネスコンサルティング、海外向けブランディング、財務、デジタルマーケティング、ITアドバイスなど多方面で活動中。

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