ここから本文です

新物質「時間結晶」、2グループが生成に成功

4/10(月) 12:20配信

WIRED.jp

時間に周期的なパターンをもつ「時間結晶」。最初に構想されてから間もないその物質の生成に、米国の2つのグループが成功したという。その成果は、安定した量子コンピューター開発などにも応用できるとされている。

人間とのデュエットを果たした「量子コンピューターの歌声」

新たな物質の形態、「タイムクリスタル(時間結晶)」と呼ばれる規格外の物質が、このたび2つの研究グループにより、初めてラボで生成された。ひとつ言い添えておくと、時間結晶とは「時間に周期的なパターンをもつ物質」のことを指し、決して時間自体が結晶化した物質のことではない。

そもそも「結晶」とは何か

自然界で発生する塩、ダイヤモンド、水晶などの「結晶」は、原子の基本構造の繰り返しによって生成されている。つまり結晶とは、3次元空間のある軸に沿って周期的な構造パターンを繰り返す物質のことを指すわけだ。もっとも、だからといってこのパターンが全ての方向に等しく周期的なわけではない。

物理の法則とは、空間のどの方向にも等しく対称に働くものだが、固体結晶に関してはこの並進対称性が自発的に“破れている”ことになる。六方晶系の結晶が円筒状に巻かれた構造をもつカーボンナノチューブを例にとると(上記画像の〈h〉)、原子のある場所とそうでない場所が明確であり、この結晶の中心部から見渡してみると全ての方向に全く同じパターンが配列しているとはいえない。そこには粒子がつくり出した“ムラ”があり、科学的にいうと、結晶とは「連続的な空間の対称性を自発的に破る物質」として定義できる。

では、それが「空間」ではなく「時間」ならどうなのか。空間と同様に、時間にも対称性がある。「並進対称性の破れ」という名の“ムラ”は、時間軸でも起こり得るのだろうか? そんな新たな物質を夢見て理論的に追求したのが、マサチューセッツ工科大学(MIT)の物理学者であり、ノーベル賞受賞者でもあるフランク・ウィルチェックだ。

それは「永久機関」なのか?

ウィルチェックは2012年、通常の結晶が空間的に周期的であるように、平衡状態・最低エネルギー状態にある物質が、時間的に周期的である仮説構造をもつという時間結晶の構想を発表した。

この理論によると、時間が一定方向に流れるという“自然な対称性”が、結晶内では破られてしまうことになる。これは、量子力学的効果のために、原子またはイオンが互いに離れていても相互作用することを想定しており、粒子は系に入力されるエネルギーなしにして、初期状態から次の状態へと移動し、一定の周期で初期状態へと戻るといった、時間に規則正しい振動を繰り返す。

しかしこの状態には、物理学的に問題がある。何のエネルギー入力もなしに系が振動を繰り返すとなると、それはまるで永久機関のように見えるはずだ。これはエネルギー保存の法則に反することになり、古典的にも量子的にも実現されるはずのない系だ。実際のところ、2015年には、東京大学教授の押川正毅と渡辺悠樹らに、平衡状態にある時間結晶の存在を否定されている。

1/3ページ

最終更新:4/10(月) 12:20
WIRED.jp

記事提供社からのご案内(外部サイト)

『WIRED Vol.28』

コンデナスト・ジャパン

2017年6月8日発売

630円(税込み)

特集「Making Things ものづくりの未来」。大量生産、大量消費の時代が終わりを迎えるなか、ヒトはいかにものと向き合い、それをつくり、使っていくのか。