ここから本文です

【テレビの開拓者たち(5) 山名宏和】ジャンルを超えて活躍する放送作家が語る“テレビの可能性”

4/12(水) 6:00配信

ザテレビジョン

現在、「ダウンタウンDX」「行列のできる法律相談所」 (ともに日本テレビ系)、「ガイアの夜明け」「未来世紀ジパング」(ともにテレビ東京系)、「たけしの健康エンターテインメント!みんなの家庭の医学」(テレビ朝日系)、「フルタチさん」(フジ系)、「この差って何ですか?」(TBS系)などを担当している放送作家の山名宏和氏。これらのタイトルを見れば分かる通り、彼が手掛ける番組のジャンルは、トークから情報、経済、医学まで実に多彩だ。そんな幅広い活躍を見せる山名氏に、テレビの世界に入ったきっかけや、放送作家として大事にしていること、さらに今のテレビを取り巻く状況などについて、話をうかがった。

山名氏が多数手掛ける番組の中の一つ「この差って何ですか?」。4月18日の放送から新MCとしてフリーアナウンサーの川田裕美が登場する

■ この仕事をするようになってからテレビを見るようになったんです

──まずは放送作家を志したきっかけをお聞かせください。

「大学生のころ、芝居を見るのが好きで、自分でもコントみたいなものを書いたりしてたんですが、卒業後は一般企業に就職しました。でもこの仕事は自分には合わないなと思ったときに、レコード会社に入った大学の友人から『放送作家をやってみないか』と勧められて。ちょっとやってみるか、くらいの気持ちで始めたんです、別に志もなく(笑)」

──子供のころからテレビが大好きだった、というわけではない?

「ええ、大学に入ってからは帰宅する時間も遅かったし、まだ家にビデオデッキもなかったので、その時期のバラエティー番組は、ほぼ見ていません。景山民夫さん、高田文夫さんといった方々の存在を通じて、放送作家という職業があるということは知ってましたけど。だから、この仕事をするようになってから勉強のために、いろんなバラエティー番組を見るようになったんです。過去のものも含めて。放送作家の仕事って“こうあるべき”という決まった形があるわけではないので、やっていくうちにだんだん分かってきた、という感じです」

──そんな中、ご自身が作り手として参加したことを初めて実感した番組は?

「テレビ朝日で深夜にやっていた『DABO銀』(’95年)ですね。ディレクターとちゃんとコミュニケーションを取って企画を組み立てていったのは、あの番組が最初じゃないかな。それまでは調べ物みたいな仕事ばかりでしたから。若手の芸人さんたちが自分のやりたいことを持ち寄ってVTRを作るっていう番組で、デビュー間もないココリコとかロンブー(ロンドンブーツ1号2号)も出ていました。スタッフも若くて、僕と同じ新人の作家しかいなかった。そういう環境だったので、自分がやっているという実感がありました」

■ 幅広いと言われますけど、断らなかったらこうなった、という結果なんです(笑)

──では、これまで担当した中で最も印象に残っている番組は何でしょうか?

「印象に残ってるというか、僕のキャリアが一番広がったきっかけになったのは『ダウンタウンDX』です。初期は大阪で収録していた番組なんですが、途中から東京のスタジオで撮ることになって。そのときにネタ出し要員として、東京の若手放送作家を集めようということになり、15人くらい呼ばれたんですね。それで毎週ネタ会議に参加していたんですけど、半年後くらいに気付いたら、僕を含め2、3人くらいになってて。それで、本会議の方に来てもいいと言われたんです。それ以来、先輩方からの紹介で、仕事のオファーをもらえるようになっていった。放送作家って基本、誰かの紹介で仕事が広がっていくものなんです。僕が今担当している番組も、誰とどの仕事でつながっているか、全部たどれますから」

──その後、山名さんは法律、経済、医学…と、さまざまなジャンルの番組を担当しています。

「基本的に、断らなかったらこうなった、という結果なんです(笑)。人からは、幅広いとよく言われるんですけど、悪い言い方をすると節操がないっていう(笑)。僕は、スケジュール的に無理なもの、既に担当している番組と時間帯やジャンルがかぶるものは断りますけど、それ以外は基本的に断らないようにしています。唯一断るのはスポーツ。全く知識がないし、興味も薄いので、参加しても現場の足を引っ張ることは目に見えているから、スポーツだけは断るようにしています」

――もともとテレビが好きで好きでたまらないというタイプではないのが、かえってよかったのかもしれませんね。

「すごく好きで始めた仕事ではない分、何とか自分の立ち位置をつくろうとしてきました。僕は学習していくタイプなので、新しいジャンルの仕事をすることになったら、とにかく勉強して吸収する。それが結果的にうまく回っているんだと思います。

『ガイア』や『ジパング』にしても、最初は経済のことなんて全然分からなかったんですけど、途中から“自分が分からないものは視聴者にも伝わらない”というふうに開き直ったというか(笑)、頭を切り換えたんです。経済のことを教えてくれるスタッフとやりとりする中で、自分が理解できるまで話を聞いて、それを整理して、どうやったら視聴者に伝わるかを考えていく。教養系の番組に呼ばれたときは、そういうところに自分の役割があると思って取り組んでいます」

──では、番組を作る上での信条、モットーは?

「今のテレビ番組の多くは、何がしかの情報を伝えるものじゃないですか。だから“ちゃんと伝わっているか”ということにプライオリティーを置く、ということですね。こんなに面白いものがあるよとか、こんな素晴らしい人がいるんだよとか、そういった情報が、どういう形だったら一番視聴者に伝わるのか、ということは考えます」

■ テレビ作りの環境が窮屈になったと言われても、「そうかぁ?」という感じです(笑)

――具体的にはどういった点に気をつけているのでしょうか?

「例えば、テレビってやっぱり映像で惹き付けて伝えていくものだから、構成の打ち合わせをしているときも“ここには何の画(え)が入るか”ということを常に考えるようにしています。情報番組のVTRの構成を作るときって、どうしても情報をどう整理するかばかりに気を取られて、このナレーションのときに画面に何が映っているのか、ということを忘れがちなんですよ。気がついたら『これは読書か?』というような台本になっている(笑)。近年は情報番組を担当することが多いので、その辺はますます考えるようになりましたね」

――そういえば山名さんは、10年ほど前、放送作家の高須光聖さんと対談されたとき、「テレビは“商品”である」とおっしゃっていました。

「その考えは変わってないです。作品ではなく商品。商品って、自分ではいいモノを作ったと思っていても、ホコリをかぶってたら意味がない。テレビ番組も同じ。やはり多くの人に楽しんでもらわないと。かと言って、売らんがためにどんな手を使ってもいいかというと、もちろんそういうわけではなくて。自分の中で『これはやってはダメ』というような線引きはいろいろありますね」

──“今のテレビは自由度がなくなって窮屈になっている”と嘆いているテレビマンの方々も多いようですが、山名さんは、そういう閉塞感を感じることはありますか?

「世間ではそんなふうに言われてますけど、バラエティー番組の制作に携わる者としては、『そうかぁ?』という感じです(笑)。確かに、情報の正確さや信憑性は以前より求められるようになっているので、そこは物理的に大変だと思いますけど。でも、それだって、昔があまりにもぞんざいだったから、そう感じるだけなのかもしれないし(笑)。

テレビの作り方やルールは時代ごとに変わるから、それを窮屈に感じる人もいるかもしれないけど、その分、新しくできた手法もあるし、今だからできる作り方もあると思うんです。そういう意味では、昔と今ではプラスマイナスとんとん。ドローンで撮ったすごい映像なんて、10年前はあり得なかったじゃないですか。VTRの編集だって、パソコンを使って自宅でもできるようになったから、かなり楽になった。でも、昔よりも高い精度を求められるようになっているから、実は作業時間そのものはあまり変わらなかったりするわけで、これもある意味、プラマイとんとん。演者にしても、今の時代ならではのタレントさんがたくさんいる。僕は、ある時期『ザ! 鉄腕! DASH!!』(日本テレビ系)に参加していたんですけど、一昔前なら、男性アイドルが農作業や大工仕事をするなんてあり得なかった。

つまり、番組づくりの技術にしろ、人材にしろ、その時代時代で新しいものが生まれている。昔と比べたら窮屈なところもあるかもしれないけど、別の部分が広がっているんです。窮屈だと嘆いている人たちは、その広がりに目を向けられていないだけなんだと思います。テレビを取り巻く状況って、1年も経てば様変わりしてしまいますから、僕ら作り手も、時代にどう対応していくかが一番大切なんじゃないかと。これまでのような“娯楽の王様”というテレビのあり方は変わっていくんだろうけど、可能性はまだまだあると思います」

最終更新:5/8(月) 17:06
ザテレビジョン

記事提供社からのご案内(外部サイト)