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何も加えず小麦の味をシンプルに楽しむ!根津『釜竹』の細ざるうどん

4/12(水) 19:10配信

サライ.jp

文・写真/山本益博

私が初めてこの店を知ったのは、今から20年以上前、大阪・羽曳野市にあった「釜竹」だった。品書きは冷たい「ざる」と温かい「釜揚げ」の二つのみ。自信がなければ、「きつね」とか「てんぷら」とかを品書きに追加したいところである。純粋にうどんの味を楽しんでいただきたいという意気込みが、このシンプルな品書きに溢れていた。

その「ざる」が素晴らしかった。口に含んで噛めば小麦の味が広がったのである。薬味は、刻んだ葱に天かす。でも、なにも加えずにいただくのが一番だった。

じつは、うどんをいただく前に「麺前」と称して、つまみをいただいた。酒も銘酒揃い。なかで、目刺しと「十四代」が驚くほどいい相性を見せてくれ、今でも思い出すことができるほどである。

羽曳野まで何度も通ったものだが、しばらくして、東京根津に支店ができた。息子さんが主人となって、注文を受けてから、愚直にうどんを打つのだった。評判が立つまでは時間が経ったが、今では開店前から客が並ぶほどの人気店である。

私の知るところ、「釜竹」以上に丁寧に打ったうどんを他に知らない。「釜揚げ」が売り物だが、私のお気に入りは、冷たい「ざる」それも細めのうどんのざる。艶光して、すぐに箸をつけると、つるりとした口さわりで、噛むうちに小麦の香りと味わいが広がってゆく。つゆも薄口だが塩分はしっかりとあるもの。もし、二人で出かけたのなら、それぞれ「細ざる」を一人前ずつ取り、そのあと「釜揚げ」一人前を二人で分かち合って召し上がるといい。

「麺前」のつまみは豊富で、酒も一杯づつ楽しめる。「王禄」「而今」はじめ酒好きには堪らないだろう。入荷次第だが「十四代」の特別バージョンもある。
数年前に羽曳野の「釜竹」が店を閉めた。今、二代目平岡良浩さんが東京で立派にその職人仕事を継いでいる。

【根津 釜竹】
住所/東京都文京区根津2-14-18
TEL/03-5815-4675
※予約は平日の夜のみ
営業時間/【火~土】11:30~14:30(L.O.14:00)/17:30~21:00(L.O.20:30)
【日】11:30~14:30(L.O.14:00)/夜は休み
【祝日】11:30~14:30(L.O.14:00)/17:30~L.O.20:00
※祝日が日・月の場合には、各曜日の営業内容。
(手打ちのため、うどんが無くなり次第閉店)
定休日/日曜日の夜、月曜日

文/山本益博
料理評論家・落語評論家。1948年、東京生まれ。大学の卒論「桂文楽の世界」がそのまま出版され、評論家としての仕事をスタート。TV「花王名人劇場」(関西テレビ系列)のプロデューサーを務めた後、料理中心の評論活動に入る。

最終更新:4/12(水) 19:10
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