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仏マクロン大統領誕生有力だが、就任後には不安

4/12(水) 16:01配信

会社四季報オンライン

 多くの金融市場関係者が口にする「欧州リスク」。英国のメイ首相は3月、欧州連合(EU)に対して正式に離脱を通告した。フランスでは大統領選の1回目投票を23日に控え、「反ユーロ、移民排斥」を掲げる極右政党「国民戦線」の党首、マリーヌ・ルペン候補の得票に注目が集まる。ドイツに本拠を構える欧州最大級のコンサルティングファーム創業者で、欧州全域の経済界に強い影響力を持つローランド・ベルガー氏に英国のEU離脱交渉や仏大統領選の行方などを聞いた。

 ――英国のEU離脱で被る不利益が大きいのは英国ですか。それともEUでしょうか。

 英国のほうがはるかに大きな不利益を被るだろう。一つの理由は輸出依存度の違い。英国の輸出のうち、42%がEU向けだ。これに対して、EUの輸出に占める英国向けの比率は12~14%程度にとどまる。

 二つ目は自由貿易協定(FTA)の存在だ。EUは現在、世界各国180カ国とFTAを締結している。これは2国間協定ではなく、あくまでもEUが各国と結んでいるものだ。英国がEUから離脱すれば、ゼロから新たにFTA締結のための交渉を始めなければならない。多くの時間を費やすのは想像に難くない。それだけでも英国が大きな不利益を被るのがわかるだろう。

 英国がEUからの離脱交渉を行う一方で、両者の新たな貿易関係がどのようになるかも不透明だ。むろん、英国は単一市場のメリットを享受し続けることを望むだろうが、EU側が受け入れるかは定かでない。

 離脱が実現するまでには複雑なプロセスが待ち構えているのを認識すべきだ。EU28加盟国のさまざまな法律が、EUの単一の法体系に統合された。そうした法体系から離れること自体が極めて複雑な作業なのだ。人の移動、貿易などあらゆる活動の領域までEUの法律によってコントロールされている。そこから抜け出るにはかなりの時間がかかることを理解しておく必要がある。リスボン条約の条文に目を通すと、EUの議会や法体系などに組み込まれた英国の離脱がはたして可能なのかといったことさえも明確ではない。

 「手切れ金」の問題の解決も重要だ。「英国はEUに対して600億ユーロの負債を抱えている」というのがEU側の言い分。債務の内訳は英国への補助金、英国人労働者に対して支払われる年金などだ。「英国はEUに返済する義務がある」とEUは主張するが、英国は債務をどのような形で返すのか。

 EU域内に住む英国国民と英国居住のEU加盟国国民の権利保障も課題だ。EU域内では200万人の英国国民が暮らす。一方、英国にはEU各国の国籍を持つ労働者、居住者が320万人生活している。こうした国民の処遇や法体系の問題などが解決されなければ、EUの単一市場へのアクセス確保をめぐる交渉にすら入ることができないと思う。

 英国を除いたEU加盟27カ国すべてが英国のEU離脱に対して同じ考えを持つわけではない。新たに英国とFTAを締結するなどソフトランディングを主張する国もあれば、「厳しい対応をしなければと他国も追随してしまう」との観点から厳しい姿勢で臨もうとする国もある。

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