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北朝鮮のミサイル攻撃を受けたときの想定はできているか?【評論家・江崎道朗】

週刊SPA! 4/12(水) 9:00配信

【江崎道朗のネットブリーフィング 第9回】

トランプ大統領の誕生をいち早く予見していた気鋭の評論家が、日本を取り巻く世界情勢の「変動」を即座に見抜き世に問う!

◆死を覚悟してのスクランブル発進

 朝鮮半島情勢が緊迫している。

 北朝鮮による核開発とミサイル発射に対してアメリカのトランプ政権は激怒。中国の習近平政権に対して「中国政府が、北朝鮮の核開発を止めることができないのであるならば、アメリカとしては単独行動に踏み切る」旨を通告し、現在、朝鮮半島周辺に空母などを集結させている。

 北朝鮮はこの20年、欧米諸国の経済制裁を受けながらも核兵器とミサイルの開発を推進してきた。これができるのも裏で中国が北朝鮮を支援してきたからだ。

 ところが歴代のアメリカ政府は、北朝鮮に対する中国の支援を黙認してきた。黙認するどころか、中国の軍事的な台頭に対しても口先で批判するだけで有効な措置をとってこなかった。が、共和党のトランプ政権は、中国と北朝鮮の軍事的挑発に本気で立ち向かおうとしているようだ。

 自衛隊も奮闘中だ。先日、沖縄の航空自衛隊の基地を視察したが、連日のように中国の戦闘機が尖閣諸島周辺空域に侵入してくるので、その対抗措置のため航空自衛隊はほぼ連日、スクランブル発進をしている。

 スクランブル発進とは、日本の領空を侵犯する外国の飛行機に対して「この空域は、日本の領空なので直ちに退去しなさい」と注意する措置だ。もしこの措置に従わず、相手の戦闘機が攻撃を仕掛けてきたら、戦死する可能性も否定できない。言い換えれば、航空自衛隊のパイロットは、スクランブル発進をするたびに戦死する覚悟を迫られているわけだ。

 このスクランブル発進は近年急増し、平成27年度は873回に及ぶ。1日平均3回近く緊急出動をしているわけだ。その半分は、中国機を対象としている。自衛隊はまさにこの瞬間も命がけで日本を守ってくれている。

◆北朝鮮のミサイルをすべて防ぐのは困難

 北朝鮮のミサイル発射を受けて3月29日、自民党は、安全保障調査会・国防部会合同会議を開催した。この会議に、防衛省は「弾道ミサイル防衛について」という説明資料を提出した。

 これによると、北朝鮮や中国などが日本に対して弾道ミサイルを発射してきたとき、日本は、二段階の弾道ミサイル防衛システムで対応することになっている。

 第一段階ではミサイルが大気圏にいる間に、海上自衛隊のイージス駆逐艦が探知し、撃墜する。それでうち漏らしたミサイルは大気圏突入段階で、航空自衛隊のペトリオットPAC-3という迎撃ミサイルで対応することになっている。

 第一段階のイージス駆逐艦によるミサイル防衛は、日本列島全体をカバーしているが、第二段階になると、ペトリオットを配備している半径数十キロしか守れない。そして今年3月の時点で、ペトリオットを配備しているのは、札幌、青森、関東、愛知、関西、北九州、沖縄しかない。

 つまり、北海道(札幌を除く)や東北(青森を除く)、新潟などの日本海側、中国、四国と南九州には現在、ペトリオット配備をしていないので、ミサイル攻撃に対する危険がかなり高くなる。

 北朝鮮が日本に向けているミサイルの数は1100基以上もあると試算されている。射程1000km前後のスカッド・ミサイルは800基以上、最大射程が1300kmのノドン・ミサイルも300基あると言われている。現在の自衛隊の能力では、これだけの数のミサイルを迎撃することは困難だ。

◆ミサイル攻撃を前提に、政府は「国民保護ポータルサイト」を開設

 そこで政府は、ミサイル攻撃を受けることを前提に、国民にその準備をするよう呼び掛けている。「国民保護ポータルサイト」と題する専用のホームページを開設し、ミサイル攻撃を受けた時の対応策などについて詳しく説明しているのだ。

 また、地方自治体は国と連携して、いざという時、救援活動などを実施する計画となっているが、その準備を本当にしているのか、地元の地方自治体に問い合わせておくべきだろう。

 本当に北朝鮮によってミサイル攻撃をされた時、どのような手順で国民に知らせるのかについて、次のように解説している。

《北朝鮮から発射された弾道ミサイルが日本に飛来する場合、弾道ミサイルは極めて短時間で日本に飛来することが予想されます。仮に、北朝鮮から発射された弾道ミサイルが日本に飛来する可能性がある場合には、政府としては、24時間いつでも全国瞬時警報システム(Jアラート)を使用し、緊急情報を伝達します。

 北朝鮮が予告することなく弾道ミサイルを発射した場合には、政府としても、事前にお知らせすることなく、Jアラートを使用することになります。

 Jアラートを使用すると、市町村の防災行政無線等が自動的に起動し、屋外スピーカー等から警報が流れるほか、携帯電話にエリアメール・緊急速報メールが配信されます。なお、Jアラートによる情報伝達は、国民保護に係る警報のサイレン音を使用し、弾道ミサイルに注意が必要な地域の方に、幅広く行います》

 こんな仕組みになっていることを知っている国民は果たしてどれくらいいるのだろうか。北朝鮮のミサイルについてあれこれと論じるのもいいが、国民の安全を重視しようと思うならば、テレビや新聞もこうした手順について丁寧に説明すべきではないのか。肝心なことを報じないから、マスコミは信用されないのだ。

 政府のこのホームページでは、ミサイル攻撃などを受けた場合の特別のサイレンも聞くことができる。パトカーや救急車のサイレン音とは違うので、いざというとき反応できるようにしておくためにも一度、聞いておいたほうがいいだろう。

◆自民党は、敵基地「反撃」能力保持を提案、トランプ政権も賛成か

 一方、北朝鮮のミサイルをすべて撃ち落とすことが困難である以上、国民の生命・財産を守るためには、ミサイル発射基地(正確に言えば、地上移動式ミサイル発射装置)を攻撃する方策も検討しておく必要がある。攻撃は最大の防御ともいうではないか。

そのため自民党は3月30日、北朝鮮を念頭に敵のミサイル基地を攻撃する「敵基地反撃能力」保有の早期検討を柱とする提言書をまとめ、官邸に提出、安倍総理も「提言をしっかりと受け止め、党とよく連携していきたい」と表明した。

 トランプ政権の米太平洋艦隊のスウィフト司令官も4月6日、自衛隊の敵基地反撃能力保有をめぐる議論について「日本政府がその道を取ると決めれば、日米の軍事関係は容易に適応できる」と述べ、自民党の動きを歓迎した。

 具体的には、今回トランプ政権がシリア爆撃で使ったトマホークという巡航ミサイルを導入することになるだろうが、海上自衛隊のイージス艦ならば直ちに導入が可能であることを米軍は理解している。

 実は、敵基地反撃能力を保有することについて自民党は過去何度も議論しているが、これまではアメリカ政府が、敵基地反撃能力を日本が持つことに否定的で、議論はいつの間にか立ち消えになってきた。

 ところがトランプ政権はアメリカの歴代政権のなかでも珍しく日本が軍事的に強くなること、つまり「強い日本」を支持する勢力が強く、トランプ政権からの妨害は比較的少ないと思われる。

 むしろ問題は、「防衛費増額に反対することが平和を守ることだ」と考える一部の野党やマスコミ、そして財務省だ。防衛予算を増やさなければ敵基地反撃能力を保有できない。財務省は、防衛予算を削ることが正しいと考えているふしがある。

 どこの国も、防衛力を経済力に見合ったかたちで整備している。そして防衛費の平均は、GDP(国民総生産)比の2%ぐらいだ。ところが日本は、世界標準の半分の1%、わずか5兆円しか支出していない。

 ミサイル防衛体制の充実だけでなく、敵基地反撃能力の保持といった、これまでまったく持っていなかった自衛能力を整備しようと思えば、予算の増額が必要だ。ドイツのメルケル首相もロシアの脅威の増大に対応すべく、2024年までにドイツの防衛費をGDP比2%にすると明言している。

 予算は国家の意思だ。

 北朝鮮のミサイルの脅威への対応や尖閣諸島を含む南西諸島防衛のため、防衛費をせめてGDP2%10兆円に増やし、領土・領海と国民の生命・財産を守ることができる日本にできるかどうかは、有権者の皆さんが、防衛費増額を支持するかどうかにかかっている。自分の国は、自分で守るしかないのだ。

【江崎道朗】

1962年、東京都生まれ。評論家。九州大学文学部哲学科を卒業後、月刊誌編集長、団体職員、国会議員政策スタッフを務め、外交・安全保障の政策提案に取り組む。著書に『アメリカ側から見た東京裁判史観の虚妄』(祥伝社)、『マスコミが報じないトランプ台頭の秘密』(青林堂)、『コミンテルンとルーズヴェルトの時限爆弾』(展転社)など

日刊SPA!

最終更新:4/14(金) 12:41

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