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アマゾン「お坊さん便」 注文増の背景に食えない僧侶の増加

4/14(金) 7:00配信

NEWS ポストセブン

 厚生労働省「人口動態統計の年間推計」によれば、2015年の死者数は約130万人にのぼり、2030年には160万人を突破する見込みだ。とくに都会では孤独死が急増し、2030年には孤独死予備群は2700万人近くにのぼると見られている。話題書『無葬社会』の著者で浄土宗僧侶でもある鵜飼秀徳氏がいう。

「きちんと地縁や血縁に根ざした供養を受けられず、誰にも見送られず、宗教的な弔いもなく送られていく。そういうケースが、年々増えています。それを私は“無葬社会”と呼んでいます」

 すでに首都圏では大量の死者をさばききれない、深刻な状況にある。火葬場は過去に例がないほどの“混雑”となっている。そのため、横浜市や名古屋市などの一部の斎場では、これまで「友を呼ぶ」ということで避けられていた友引の葬式や火葬を行なうところも出てきた。

 火葬場が混み合う理由については、葬儀場での葬式を省略し、火葬場でお別れをする“直葬”の増加が影響しているとみる専門家もいるという。

 簡略化の波は、僧侶の手配にまで及んでいる。葬儀関連のベンチャー企業「みんれび」は、2015年12月にアマゾンで僧侶の手配サービスの販売を開始した。その名も「お坊さん便」。ネット上で「法事法要手配チケット」を購入し、日時と場所を指定すれば僧侶がやってきて、お経をあげる。価格は3万5000円から。

「みんれび」は同様のサービスを2013年から始めていたが、アマゾンで申し込めるようにしてから注文が急増した。

「具体的な数字は公表しておりませんが、2016年の年間のお問い合わせ件数は前年比約2倍になっています」(みんれび広報)

 故郷に菩提寺があっても、法要や法事のためにわざわざそこから僧侶を呼ぶのは大変だ。

「田舎に寺はあるが、誰も住まなくなった実家はもう取り壊していて、法事のためだけに帰省するのも大変でした。そんな時に都内で施設に入っていた父親が他界。最初は田舎から住職を呼ぼうと思いましたが、お布施をいくら包めばいいのか、戒名料はいくらかとか、その後の付き合いは、と考えるうちに面倒になり“お坊さん便”を頼みました」(50代・自営業)

 大都市の住民の意識が変わっていくなかで、地方では多くの寺院が存亡の危機にあるという。

「仏教界の実態は深刻です。檀家の減少や、墓の都市への改葬などによって、貧困にあえぐ寺院が増えています。

 例えば浄土真宗本願寺派が2009年に実施した調査では、村落にある寺院の60%以上が年収300万円以下でした。他の宗派でも似たりよったりでしょう。“お坊さん便”に登録する僧侶たちが増えている背景には、“食えない僧侶”の増加があるのは間違いありません」(鵜飼氏)

※週刊ポスト2017年4月21日号