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勝てば天国、負ければ地獄の「戦争」 元Jリーグ助っ人が語るダービーの“重み”

4/14(金) 16:04配信

THE ANSWER

日本人の想像を超える因縁の関係

「ダービーは戦争だからね。サポーターからは言い表せないような汚い言葉が飛び交い、負けた後は2週間くらい散歩にも出られない」――パベル・ジェハーク

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 日本人選手のダービーでの活躍が続いている。

 ブンデスリーガ2部のシュツットガルトに所属するFW浅野拓磨は、9日に本拠地で行われた第28節カールスルーエとのダービーマッチで2ゴール。第11節のアウェーゲームでも1得点を決めており、今季ここまでの4ゴールのうち3ゴールを、宿敵相手に挙げている。

 ダービーで輝けば、そのインパクトは数倍にもなる。ドルトムントのMF香川真司も、欧州移籍1年目の2010-11シーズン第4節シャルケ戦で2ゴールを挙げてサポーターの心を鷲掴みにし、以来このカードでは重用されている。1日に行われた今季第26節の一戦でも1アシストを記録し、相性の良さを示した。また古くは1994-95シーズンに、セリエAのジェノアでプレーした三浦知良(現横浜FC)もサンプドリアとのダービーマッチで得点したことが、今でもファンの記憶に深く刻み込まれている。

 そんなダービーの“重み”を教えてくれたのが、チェコ出身でJリーグでは選手と監督の両方を経験したパベル・ジェハークだった。1991年に来日し、東日本JR古河(ジェフユナイテッド千葉の前身)に加入する前は、同国の名門スラビア・プラハの主将を務めていた。

 一方、プラハでライバル関係にあるスパルタ・プラハの主将だったイヴァン・ハシェックも、1994年に来日し、サンフレッチェ広島に加入するのだが、二人は同郷でありピッチ上で何度も顔を合わせながら、母国にいる間は言葉を交わしたこともなかったそうだ。

「親しくするようになったのは、日本に来てからだよ」

負ければ自チームサポーターも容赦なく非難

 理由は簡単だ。スパルタとスラビアは、どちらも1893年に創設されている。つまり優に百年以上もライバル関係を続けている。政府に支援され、財政的にも恵まれたスパルタに対し、そこに立ち向かうスラビアはインテリ層から支持されてきたそうだ。

「スラビアは映画監督、作家、俳優、学生などが応援してくれていた」

 反骨精神が染みついている分だけ、スラビアサポーターは容赦がなかった。

「ダービーで1-5で負けた時は、そのままスコアを家に落書きされた。外に出てボクを見つけると、みんなが手のひらを思い切り広げて5失点を非難する」

 そんな状況だから、ライバルクラブの主将同士が地元で歓談などできるはずがなかった。そこで冒頭の発言になる。

「スラビアとスパルタのダービーは戦争だから……」

 勝てば天国、負ければ地獄。それがダービー。これは代表戦での話だが、3年前のブラジル・ワールドカップ準決勝で開催国がドイツに歴史的大敗を喫すると、決勝戦の応援に押し寄せたアルゼンチン人が、リオデジャネイロの街中に「7-1」のスコアを落書きしていた。

(文中敬称略)

◇加部究(かべ・きわむ)

 1958年生まれ。大学卒業後、スポーツ新聞社に勤めるが86年メキシコW杯を観戦するために3年で退社。その後フリーランスのスポーツライターに転身し、W杯は7回現地取材した。育成年代にも造詣が深く、多くの指導者と親交が深い。指導者、選手ら約150人にロングインタビューを実施。長男は元Jリーガーの加部未蘭。『サッカー通訳戦記』『それでも「美談」になる高校サッカーの非常識』(ともにカンゼン)、『大和魂のモダンサッカー』『サッカー移民』(ともに双葉社)、『祝祭』(小学館文庫)など著書多数。

加部究●文 text by Kiwamu Kabe

最終更新:4/14(金) 16:04
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