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「ポスト・トゥルース」時代に必要な大前提

4/15(土) 12:00配信

BEST TIMES

「フェイクニュース」は過去も世の中を動かしていた? 

「オバマ大統領がトランプ・タワーで盗聴していたことが分かった!」

 ドナルド・トランプ大統領は先月、ツイッターを通して突然このような爆弾発言をした。
 様々な調査が行われた結果、どうやらはっきりとした根拠のない発言だったことがわかった。だが、このように嘘か本当かは別としてとにかく人々が驚くような発言をして注目を集めるのが「トランプ流」のやり方である。

 嘘か本当かわからないが、とにかく過激で人目を引くような「フェイクニュース」が、現代の政治を動かす大きな要因になっていると言われている。EU離脱を巡るイギリスの国民投票では、離脱賛成派が主張していたEUに対するイギリスの負担額の数値が虚偽であったことが投票後に明らかになったという事例もあった。
 アメリカ、イギリスという民主主義の先進国でさえ、少なからぬ数の人々が投票の際に判断を惑わされたのである。 

 最近では、こういった事態は「ポスト・トゥルース(真実)」という言葉でも呼ばれている。だが、これは必ずしも現代だけに特有な新しい問題というわけではない。
 近代社会では、ジャーナリズムとマスメディアが発達すると共に、意図的に世論を誘導するためのプロパガンダが盛んに行われたり、メディアの部数競争のために過激な報道が行われてきた。日本でも、戦時中には「大本営発表」の「フェイクニュース」が垂れ流されていた。

 かつてはニュースを大規模に発信できるのは大手メディアか権力を握っている機関に限られていた一方で、現代に特有なのは、インターネットとSNSの発達や、鮮明な写真や動画を手軽に撮って発信できるスマートフォンの普及により、誰もが情報の発信元となれるようになったことだろう。

翻ってメディアのニュースは真実なのか 

「フェイクニュース」を発信する者が意図的に嘘をついていることも多い。しかし、冒頭のトランプ大統領のように、発信者自身が始めは正しいと思っていても、思い込みや見込み違いから虚偽になってしまうこともある。
 情報の根拠を調べようにも個人で出来ることは限界があるだろう。ネットでの情報発信は、いちいち裏を取る手間を省いて、とにかく迅速に情報を発信できるということが利点ともなる。 

 大手メディアの場合には、基本的には情報の根拠を調べ、裏を取ってから報道するために、ネット上で個人が発信した情報よりも確かな情報となる。時に誤報をすることもあるが、メディアは信用が何よりも重要なので、誤報は命取りとなる。報道はできるだけ客観的に、中立的な立場でされるのが原則だろう。
 だが、果たしてメディアの報道は完全に客観的で中立に成り得るのだろうか。

 事実に基づいた情報は、客観的な真実とされる。しかし、人間は世界に起きている出来事を「事実」としてどれだけ完全に把握できるのだろうか。それをどれだけ正確かつ中立に情報として形にできるのか。そもそも、何かが真実であるとされる根拠、すなわち真理の根拠とは何か。こういった問題は、西洋の哲学が議論し続けてきた問題でもある。
 ニーチェ(1844~1900)が『ツァラトゥストラはこう言った』(1885)において「神は死んだ」と書いたことは有名である。

  哲学は「万物の根源」を探究し、究極の真理を探し求めてきた。ニーチェの言葉からは様々な意味を読み解くことができるが、哲学が求める究極の真理など存在しないという主張として理解することもできる。

 現代の哲学では様々な流派があるが、その多くは、人間が究極の真理に到達できるという考えに否定的である。

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