ここから本文です

韓国の分裂はいつまで続くのか?

4/15(土) 12:10配信

Wedge

 3月11日付のワシントンポスト紙の社説は、韓国の民主主義は正しいことをしたが、それで問題が解決するわけではないと述べています。主要点は次の通りです。

 朴槿恵大統領の弾劾は韓国の民主主義の証明とみるべきだ。韓国の民主主義は最も困難な時に法に基づいて権力の移行を成し遂げた。非暴力の抗議集会参加者は賞賛される。

 今回の問題は同時に財閥と政治権力の癒着をさらけ出した。憲法裁は汚職を理由として朴槿恵を弾劾するとの議会の決定を妥当と決めた。憲法裁は朴槿恵が崔順実によるサムスンなどからの莫大な寄付獲得を助け、秘密文書を崔順実に渡し、自らの行為を隠蔽し、それにつき虚偽の発言をした。韓国は政府の信頼を新たにするため汚職を一掃せねばならない。

 現在韓国は重大な対外課題に直面している。朴槿恵は金正恩政権に対し断固たる立場を取ってきた。THAADミサイル防衛システムの配備や米韓共同軍事演習の実施は健全な政策だった。目下韓国は脆弱であるが、脅かしに屈してはならない。北朝鮮は先週のミサイル発射等で政治的混乱を悪用しようとしている。

 中国はTHAAD配備に反対して韓国商品の不買運動を支援するなど悪態をついている。米韓軍事演習の中止と交換に北朝鮮の核・ミサイル開発を凍結するとの提案は成功の見込みのない話だ。

 大統領選挙世論調査では対北太陽政策を推進する進歩派の文在寅がリードしている。しかし今は太陽政策を取る時期とは思えない。ティラーソン国務長官は今週日本、韓国、中国を訪問するが、韓国では米国の対韓コミットメントを再確認するとともに、北朝鮮と中国の圧力に断固として抗することの重要性を伝えるべきだ。

出 典:Washington Post ‘South Korea’s democracy does the right thing - but that won’t solve all its problems’ (March 11, 2017)

 ワシントンポスト紙は、朴槿恵の弾劾は韓国の民主主義の証であると評価するとともに、韓国は汚職や対外関係への対応など難しい課題に直面していると述べています。これが今の米国の一般的な評価なのでしょう。

 韓国の民主主義についての欧米メディアの非常に肯定的な評価についてはいささか違和感を覚えます。確かに1988年の民主化から約20年しか経過していないことを考えれば暴力なしに権力移転が行われたこと自体は評価されるかもしれませんが、その過程は特異です。

 左派は莫大な動員力を誇りました。弾劾後のキャンドル勝利集会はお祭り騒ぎだったといいます。憲法裁の判断にも法律考慮と共に世論配慮が大きく影響しているように見えます。司法の政治化は従来から指摘されています。今回問題が発覚したのは半年前の10月下旬です。選挙で選ばれた大統領が半年の間に罷免されました。大統領側が拒否したとはいえ、大統領の言い分も聴かずに、大統領は共謀したと結論しています。

 目下大統領選挙は5月9日になると見られています。選挙は短期決戦になりますが、その間、韓国政治は対決色を強め、再び政治は高揚するでしょう。朴槿恵の捜査も本格化するでしょう。最新の世論調査では、最大野党「共に民主党」の文在寅前代表が黄教安大統領権限代行首相、洪準杓慶尚南道知事、第2野党「国民の党」の安哲秀前代表との一騎打ちでいずれも勝利するといいます(聯合ニュースとKBSの共同調査、3月11~12日に実施)。文在寅は着々と陣容構築を進めています。

 韓国主要紙は弾劾決定を国論分裂終息だとして評価しましたが、国論分裂は数カ月では終わりません。なぜなら、このまま行けば文在寅が勝ちますから、問題は少なくともこれから5年は続くことになります。文在寅の政策は問題が多いです。同人は廬武鉉政権の大統領府秘書室長を務め、今回選挙に当たっても、対北朝鮮太陽政策を主唱し、THAADの配備は再検討すべきと主張しています。対米関係の重要性を認めつつも、米国にノーと言える韓国になるべきだと主張して、物議を醸しています。もっと現実を踏まえた政策が必要です。

 日韓関係への風当たりも厳しくならざるを得ないでしょう。文在寅は日韓慰安婦合意に反対し、再交渉を主張しています。防衛情報保護取決めも再び問題になるかもしれません。同人が大統領になれば問題はこれから5年続くことになります。今大事なことは、国際約束の順守と外交の継続です。残念ながら韓国を巡る情勢は今後悪いシナリオを念頭に考えていかなければならないでしょう。

岡崎研究所

最終更新:4/15(土) 12:10
Wedge

記事提供社からのご案内(外部サイト)

月刊Wedge

株式会社ウェッジ

2017年8月号
7月20日発売

定価500円(税込)

■特集  世界を揺るがす中国の地政学
・「アジアの地中海」をめぐる攻防
・「一帯一路」は中国共産党の生命線
・地政学で読む中露の「おいしい」関係