ここから本文です

ZARAにデザインを「盗作」されたデザイナーたち、結束して被害を主張

4/15(土) 9:10配信

HARBOR BUSINESS Online

 ファスト・ファッション(Fast Fashon)とは、衣料品の分野で最新の流行を素早く取り入れ、量産体制を導入して安価な価格で提供し、中間業者を通さず消費者に直接販売するシステムである。その王者に君臨しているのが「ZARA」を旗艦ブランドとしているスペインのガリシア地方で誕生したインディテックス(INDITEX)である。

 イブ・サンローランの傍に長く仕え、彼を支え続けたピエール・ベルジェがZARAの急成長を見て、「ファスト・ファッションに創作は必要ない。あるものを真似て、安く提供するだけで良い。あとはマーケティングの力だけである」と語った。

 ファスト・ファッションを存続させ、発展させるためには既存のものを如何に真似るかということに依存するようになる。その真似るのに、小規模で活躍しているデザイナーの作品や、まだ無名のデザイナーの作品をZARAが盗用しているということがこの3~4年問題にされている。

 最近、注目を集めたのは米国ロサンゼルスで活躍しているインディー系デザイナーのチューズデイ・バッセン(Thuesday Bassen)の作品を盗用していたことが発覚したことだ。彼女はインスタグラムを通して、<「昨年、ZARAは私の作品を盗用し続けていた」>と指摘し、弁護士が同ブランドと損害賠償の交渉をしていることを公にしたのであった。

 それに対して、ZARAからの回答は、“彼女はインディ系の一人のデザイナーである。我々は巨大企業で、今回のケースが取り沙汰される程には、彼女は充分に知られていない”といった内容の回答だったという。彼女に知名度がないといっても、これまでADIDAS、NIKE、HELLO HOLIDAY、URBAN OUTFITTERなどと仕事をした実績を持っている女性である。

 ZARAとの交渉の為に既に彼女は弁護士に2000ドルを支払っていた。彼女のファンが資金的に協力したいという申し出もあったそうであるが、彼女はファンにその協力を断っていた。その代わりに、ファンのネットでも今回の盗用のことを広めて欲しいと依頼したそうだ。そうは言っても、彼女は法的解決に諦めることなく、弁護士を通して訴え続けた結果、ZARAの方で盗作とされているものの生産を中止し、インディテックスの弁護士と和解交渉に取り組んでいるそうだ。(参照:「20minutos」)

◆「被害者」たちの結束

 チューズデイ・バッセン氏の件が縁で、同じくZARAに盗用されたというデザイナーのアダム・カーツ(Adam J.Kurtz)が彼女と接触するようになり、彼らの他にも、ZARAに盗用されたデザイナーが集まって「shoparttheft」というwebサイトを立ち上げたそうだ。

 これは、インディ系の20人のデザイナーの集まりで、これまでZARAに彼らのデザインが盗用されていたことへの損害賠償を請求するのが目的である。そして、彼らのファンにも協力を要請して、ZARAの違法行為をwebで広めたりして貰っているという。

 その様な事態を前に、ZARAの方でも今後問題になるのを避けようとしているようで、ZARAのwebから外されたアイテムも出ているそうだ。Miss Pandora、Le Blog de Betty、Andy Torres、Beware of my heelsらもZARAにデザインを盗用された犠牲者であるという。ただ、彼らはZARAに抗議したが、その反応は水泡に帰したままである。DepeapaやRocio Cañeroのように巨大企業に抗議することさえ恐れているデザイナーもいる。前者の場合はZARAから分離して激安商品を専門に販売するLEFTIESで彼女の作品を盗用していたのだ。

 ただ、こうした騒動がZARAの牙城を揺るがすかというとそうでもなさそうだ。盗作したデザインを商品化しているということについて、スペインのビジネス・スクールIESEのペドロ・ヌエノ教授は<消費者の批判と買う決意には同一性はないとしている>。そして、<ブランドメーカーの規模が大きいと、そのインパクトは強烈でブランドイメージが確固たるものであるが故に消費者が買う時には盗作のことなどは考えない>と指摘している。(参照:「El Espanol」)

◆パクリが横行する構造的要因

 ZARAはファスト・ファッションであるが故に、既存のデザインを模写することから逃れることは容易ではない。インディテックスには300人の若いデザイナーがいる。そして、毎年1万8000着の新しいモデルを生産している。H&MやGAPは毎年4000着の新作を発表していることから比較しても、ZARAの新作の数量は膨大である。それが出来るのもスタイルのコンセプトを決めて、デザインを起こし、それが社内で受け入れられてから生産にかかるまで、僅か18日しか要しないという驚異的な「ファスト」体制にあるからである。一般のアパレルメーカーだと6~8か月が必要だろう。しかも、ZARAが所在するガリシア地方の本社の周辺にZARAの試作品や完成品を縫製できる下請けメーカーが500社ほど待機しているのである。

 また、新作を多量に生み出す理由の一つに、ZARAでは一つのモデルは各サイズごとに少量しか生産しないのである。その為、新作を他社よりもより多く生産する必要がある。限定した数量しか生産しない理由は、常に品切れを狙って消費者がZARAショップに頻繁に訪れるようにさせるためである。これは同様に現在伸展しているネット販売でも同じことが言える。

 ネット販売の強化によって、逆に盗作品がより摘発され易くもなってもいる。しかし、膨大な新作を生み出し、限定数量しか生産しないということで売れる足も速く、盗作品を外部のデザイナーの方で見つけるのも容易ではなくなっている。

<文/白石和幸>

しらいしかずゆき●スペイン在住の貿易コンサルタント。1973年にスペイン・バレンシアに留学以来、長くスペインで会社経営する生活。バレンシアには領事館がないため、緊急時などはバルセロナの日本総領事館の代理業務もこなす。

ハーバー・ビジネス・オンライン

最終更新:4/15(土) 10:05
HARBOR BUSINESS Online