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「イヤホンランナー」が認識すべき危険と迷惑

東洋経済オンライン 4/15(土) 6:00配信

 おしゃれなウエアに身を包んだ女性が、イヤホンで音楽を聴きながらさっそうと駆け抜けていく──。テレビCMなどでも見掛けたことのあるシーンだろう。実際にこんな感じのランナーが増えている。

 株式会社アールビーズの「ランナー世論調査2016」によると、「トレーニングでの走行時に音楽を聴きますか?」という質問に、約21%が「毎回聴く」、約18%が「時々聴く」と回答。40%以上のランナーが音楽を聴きながら走っているのだ(「まったく聴かない」は約52%)。

 本番の「レース走行時に音楽を聴きますか?」という質問になると、「毎回聴く」が約31%にUP。「まったく聴かない」は約43%しかいなかった。

■好きな曲がかかると気持ちは上がるし

 振り返ってみると“イヤホンランナー”が目立つようになったのは、iPodが登場した2001年以降だ。CDやMDと比べて飛躍的にコンパクトとなり、衝撃時の音飛びもない。イヤホンの色がホワイトだったことも視覚的にインパクト十分だった。

 純粋に走りながら音楽を楽しみたいという人だけでなく、おしゃれアイテムとして、ファッションの一部として取り入れた人も少なくなかった。携帯ミュージックがランニング人気を後押しすると同時に、新たなビジネスマーケットになっていった。

 現在ではスッカリおなじみとなったイヤホンランナーだが、では、それは手放しで褒められる傾向、存在なのだろうか? 

 筆者は音楽を聴きながら走ったことは何度かあるものの、すぐにやめてしまった。というのは、すぐに飽きてしまったことと、イヤホンが腕振りの邪魔にならないようにうまくセッティングするのが面倒だったからだ。

他のランナーにとっては、厄介な存在

 とはいえ、音楽を聴きながらのランニングに魅力を感じていないわけではない。好きな曲がかかると気持ちは上がるし、走り慣れた道のりも、流れてくる曲で違うように感じるからだ。イヤホンをつけない場合でも、大会などで爆風スランプの「Runner」や映画『ロッキー』のテーマソングなどが流れると、「頑張るぞ!」という気持ちが湧いてくる。

 それでも筆者はランニング時のイヤホン使用には反対したい。なぜかというと、純粋に「危険」だということと、イヤホンランナーは他のランナーにとって非常に厄介な存在だからだ。

■イヤホンに潜む危険と迷惑行為

 近年は周囲の騒音を低減し、臨場感あふれるサウンドが楽しめるノイズキャンセリング機能のある高性能イヤホンもあり、音楽に集中できるようになった(反対に安全面を考慮して外の音もある程度聞こえやすくしてある商品もある)。しかし、サウンドファーストの環境が、思わぬ事故につながっている。

 音楽を聴きながら走ると、車が近づいてくる音や、自転車のベルなどの“警告音”を聞き逃すこともある。昨年6月には、埼玉県で30代の男性が汽笛に気がつかず、踏切内で普通列車にはねられ、死亡した。現場は警報機と遮断機の付いていない第4種踏切で、線路を横切る道路の幅は約2.2メートル。男性はヘッドホンを装着しており、ジョギング中であった可能性が高いという。

 筆者は、イヤホンランナーは喫煙者に似ていると感じている。多くの自治体が「路上喫煙禁止条例・歩きたばこ禁止条例」を設けているが、いまだに歩きタバコを見かけることは少なくない。なぜだろうか?  過料徴収を明記していない自治体もあること、誰にも迷惑をかけていないんだからいいじゃないか、と思っている人が多いのが理由だろう。

 イヤホンランナーも事故は自分の責任だけど、誰にも迷惑をかけていない、と思っている人が多い印象だ。たとえば皇居を走っていても、道幅の狭いコースの真ん中をイヤホンランナーがいると、追い抜くのに苦労する。まず足音に気づかないし、「横を通ります」という声が届いていないケースがあるからだ。

 イヤホンで音楽を聴いたりしていると注意力が散漫になるのは予想できるが、その“危険度”を「数値」で知ると驚くかもしれない。

 セコム開発センターが実施した調査によると、音楽を聴きながら歩いているときに背後から近づかれた場合、10センチメートル(5人平均)まで接近されないと気がつかなかったという。ランニング時では自分の足音が大きくなるため、音楽のボリュームも自然と大きくなる。イヤホンランナーは背後からの接近には、ほとんど対応できないと思ったほうがいいだろう。

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最終更新:4/15(土) 6:00

東洋経済オンライン