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【解説】史上初のブラックホール撮影、地球規模の望遠鏡ネットワークで実現

ナショナル ジオグラフィック日本版 4/16(日) 7:30配信

世界8カ所の天文台をつないだ観測が終了、成否は数カ月後

 天文学者たちは、ついにブラックホールの撮影に初めて成功した可能性がある。厳密に言えば、ブラックホールの本体ではなく、それを取り巻く「事象の地平線」と呼ばれる不思議な領域だ。ひとたびこの境界線を越えると、光さえブラックホールの魔の手から逃れられなくなる。

ブラックホールの謎に迫るフォトギャラリー6点

 5夜にわたった最後の観測が終わったのは午前11時22分。米マサチューセッツ工科大学ヘイスタック観測所のビンセント・フィッシュ氏は、満足した様子でオフィスの椅子に腰を下ろした。この1週間、彼は24時間体制で仕事をしていて、睡眠はこま切れにしかとっていなかった。もちろん、仮眠をとるときには、大きい音でアラームが鳴るように設定した携帯電話を横に置いていた。

 やがて最後の観測データが届き、電波天文学者と技術者の専用チャットに祝福のコメントが押し寄せた。ある人は、これから50年物のスコッチを開けると宣言し、またある人は、「ボヘミアン・ラプソディー」を聞いて勝利を祝っていると言った。

 フィッシュ氏も「とてもうれしいですし、ほっとしています。おかげでよく眠れそうです」と語る。だが、手放しで喜んでいるわけではない。データ量が膨大で、処理にはかなりの時間がかかるため、彼らのすさまじい努力が実を結んだかどうかは、数カ月後にならないとわからないのだ。

 オランダ・ナイメーヘンにあるラドバウド大学の電波天文学者ハイノ・ファルケ氏は、次のように語る。「最初の画像はまだ質が悪いかもしれません。それでも、アインシュタインの重力理論でブラックホールの極限環境を正しく予想できるかどうかを検証できるようになりました」

 1915年に発表されたアインシュタインの革命的な理論によると、物質は時空の幾何学的な構造を曲げ、私たちはその曲がりを重力として経験するという。超巨大なブラックホールの存在は、相対性理論の最初の予想の一つだった。

「ブラックホールは空間と時間の終点なので、私たちの知識もそこで終わるのかもしれません」とファルケ氏は言う。天文学者は、宇宙に存在するすべての大型銀河の中心にブラックホールが隠れていると考えているが、その有無については状況証拠しかつかんでいない。アインシュタイン自身も、その存在を確信していたわけではなかった。

 ファルケ氏は、ブラックホールの最初の画像は、神話的な存在だったブラックホールを、研究の対象となる具体的な存在に変えるはずだと信じている。

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最終更新:4/16(日) 7:30

ナショナル ジオグラフィック日本版

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