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殿様の血を引く知事一覧。ポンジュースの名づけ親、大の猫好き…先祖顔負けの個性で乱世を渡る

4/16(日) 16:20配信

HARBOR BUSINESS Online

 今月9日、秋田県知事選挙が行われ、現職の佐竹敬久氏が3選を果たした。敬久氏は、江戸時代の秋田藩主佐竹家の分家・佐竹北家の21代当主であり、現職の知事では唯一の“お殿様知事”として知られている。

 江戸時代の大名の家系で、戦後の公選制になってから誕生した“お殿様知事”は、佐竹氏を含め6人おり、首相も務めた元熊本県知事の細川護熙氏(知事在職1983~91年)、元福島県知事の松平勇雄氏(在職1976~88年)、元千葉県知事の加納久朗氏(在職1962年~63年)、元愛媛県知事の久松定武氏(在職1951~71年)、元佐賀県知事の鍋島直紹氏(在職1951~59年)がいる。

 細川護熙氏は、熊本藩主だった細川家の18代当主であり、戦前に首相を務めた近衛文麿の孫としても有名だ。知事退任後には、日本新党を立ち上げて「新党ブーム」を巻き起こし、1993年に第79代内閣総理大臣に就任。自民党から38年ぶりに政権交代させ、細川家の先祖が成し遂げられなかった“天下取り”を実現している。

◆「鬼義重の再来」と話題になる

 また、松平勇雄氏は、幕末の会津藩主・松平容保の孫であり、県立図書館や美術館などの文化施設を設置し、「文化の知事」の異名をとった。

 加納久朗氏は、最後の一宮藩主だった加納久宜の次男で、戦前に子爵だったことから言葉遣いにこだわりがあり、知事時代は県庁の応接室を「オオセツマ」とカナ文字表記させた逸話がある。

 久松定武氏は、伊予松山藩主久松家の嫡流であり、5期20年もの長きにわたり知事として県政に君臨し、「ポンジュース」の名付け親にもなった。鍋島直紹氏は、明治維新の原動力になった薩長土肥の一翼を担った肥前藩の支藩・鹿島藩主鍋島家の15代当主で、地元の人々から親しみを込めて「とんさん(殿さん)」と呼ばれていた。

 そんな歴代の“お殿様知事”の中でも抜群に個性が光っているのが、佐竹氏の言動だ。

 昨年8月には、北朝鮮が発射したノドンとみられる弾道ミサイルが、秋田県男鹿半島沖250キロの日本海に着弾したが、その際に「戦前なら応戦する事態だ」と激しい怒りをあらわにした。佐竹氏の先祖には、戦国時代に”鬼義重”として恐れられた佐竹義重という武将がおり、戦国武将を主人公にしたゲームによく登場するキャラクターでもある。そのため、先祖を彷彿とさせる佐竹氏の武闘派ぶりは、歴史マニアやゲームファンの間で「鬼義重の再来」と話題になった。

 また、大の猫好きとしても知られ、2013年には、かつて秋田犬を贈られたロシアのプーチン大統領からロシア原産のサイベリアンの子猫が贈られ、モフモフの猫を溺愛する姿がネットで盛り上がったこともある。そして同年には、現職の知事として日本で初めて民間企業のテレビCMに出演し、人気俳優の香川照之と共演したばかりか、なんと“お殿様”の扮装まで披露して注目された。

 出演したのは製薬メーカー・龍角散の「龍角散ののどすっきり飴」のCMで、実は龍角散は、江戸時代に秋田藩の御典医だった藤井玄淵によって生み出された薬で、子孫の藤井正亭治が藩主・佐竹義尭の持病のぜん息を治すために薬を改良したという歴史がある。また、のど飴の主成分であるカミツレが秋田県美郷町で栽培されていることもあり、佐竹氏は秋田県知事名義でCM出演することで、県の宣伝に一役買ったのだった。

 県のトップとして不測の事態にも毅然とした態度をとり、時には前例にとらわれないユーモアな姿も見せる佐竹氏は、江戸時代に生まれていても領民に愛されたお殿様になっていたことだろう。ちなみに、佐竹氏はよく通る大きな声に、がっしりとした体格の持ち主でもある。まさに現代に降臨したお殿様なのである。

<文/中野龍>

【中野龍】

1980年東京生まれ。日本大学文理学部史学科(日本近現代史専攻)卒。毎日新聞「キャンパる」学生記者、化学工業日報記者などを経て、フリーランス。

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最終更新:4/16(日) 16:20
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