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「プリウスPHV」が不人気を吹き飛ばした理由

東洋経済オンライン 4/16(日) 6:47配信

 今年2月に発売されたトヨタ自動車の新型「プリウスPHV」が、好調な立ち上がりを見せている。発売からおよそ1カ月にあたる3月16日時点の発表では、約1万2500台の受注を記録したという。

【写真】新型プリウスPHVはスタイルも大幅に洗練された

 PHVとは「プラグインハイブリッド車」の略だ。充電したモーターだけで走る電気自動車(EV)としても、エンジンとモーターを併用するハイブリッド車(HV)としても使える。新型プリウスPHVは現行4代目プリウスがベースとなる。

 先代プリウスPHVの状況を知る人にとって、月間販売目標2500台の5倍という新型プリウスPHVの初速は驚きの数字であるはずだ。先代は2009年末、まず主として官公庁や企業向けとしてリース販売をスタートした後、2012年始めから一般向けの市販を開始したが、それから4年間かけて全世界で7万5000台しか売れなかった。

 これは年間2万台弱というわけで、悲惨な数字とも言えない。世界のEVやPHVのデータを紹介するウェブサイト「EV Sales」によれば、現在販売中のもうひとつの和製PHV、三菱自動車工業の「アウトランダーPHEV」が昨年世界で販売した台数は2万7000台だ。

 とはいえ、ベースの3代目プリウスが日本だけで月1万台以上をコンスタントに販売していたことを考えれば、いまひとつの結果である。

■先代プリウスPHVの不振の理由は? 

 PHVが高価だったわけではない。リース販売が始まったときは525万円と、通常のプリウスの倍以上の数字に愕然とした覚えがあるが、2012年に一般向け販売が始まったときには320万円からと、わずかではあるが新型より安かった。ただ人間は最初の印象を根強く持ち続ける傾向がある。デビュー直後の525万円で「PHVは高い」というイメージを受け付けてしまった可能性もある。

もうひとつの理由は

 もうひとつ、先代の不振の理由として考えられるのは、HVとの差がさほどではなかったことだ。トヨタも先代の不振の理由について、価格に見合う価値を提供できなかったことを挙げている。

 たしかに先代プリウスPHVのデザインはHVと大差はなかったし、満充電での電動走行距離(カタログ値)はリース型が23.4km、市販型が26.4kmにすぎなかった。

 リース時代の先代プリウスPHVを試乗したときのこと。満充電状態で東京都心を出て、首都高速道路を使って鎌倉へ向かったところ、まだ東京都内の羽田空港周辺でバッテリーを使い果たしてしまい、あとは重いプリウスとして走っていたという記憶がある。

■プリウスPHVの歴史は長い

 プリウスPHVの歴史は、多くの人が予想するより長い。筆者が関係者に聞いた話によれば、今からちょうど10年前の2007年、フランス電力公社(EDF)からの要望に応える形で、先々代となる2代目プリウスを改造したPHVをごく少量製作し、日米欧で実証実験を始めていたのだ。

 ここで良好な結果が得られたことから、トヨタはPHVの可能性を確信するようになり、3代目(先代)プリウスをベースとしたPHVの開発を決定。グローバルで500台のプリウスPHVを供給すると発表した。このうち100台はEDFと共同で、仏東部の都市ストラスブールに配置された。

 世界初の量産PHVといわれるのは、ともに2010年に発売された中国BYDの「F3DM」と米国GM(ゼネラルモーターズ)の「シボレー・ボルト」といわれているが、トヨタはその前からプリウスをベースとしたPHVを一定数製作し、世界各地で走らせていたのだ。

 しかしどの分野でも共通する先駆者の悩みとして、このテクノロジーが世界的に受け入れられるかどうかは、この時点では誰もわからなかった。ゆえに歩みを前に進められなかったのではないかと想像している。

 2010年には日産自動車からEVのリーフが発売される。しかし当初のリーフは満充電での走行距離はカタログデータでも200kmであり(現在は280kmに伸びた)、充電ステーション数も現在よりずっと少なく、急速充電でも80%まで30分を要するなど、エネルギー補給の点では欠点が目立った。

 こうした欠点は、同じように外部給電によってエネルギーを確保するPHVにも当てはまる。トヨタはライバルメーカーのEV戦略が伸び悩んでいるのを横目で見ながら、「PHVも本格普及は難しい」と感じていたかもしれない。

 風向きが変わったのは2013年だった。それまでEVや燃料電池自動車(以下、FCV)に限定されていた欧米のゼロエミッションビークルの枠組みに、PHVが組み込まれるようになり、メーカーやユーザーが優遇を受けられるようになったのだ。ちなみにHVはこの枠組みから除外されている。

 たとえば欧州では、2021年までに新車のCO2排出量を1km走行あたり95g以下に抑える決定がなされた。2015年までの目標値が120g/kmだったから、かなり厳しい。そこで欧州ではPHVを優遇するルールを盛り込んだ。

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最終更新:4/16(日) 7:07

東洋経済オンライン