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吉野家、奨学金制度を開始 大学生“先物買い”の狙い

デイリー新潮 4/17(月) 5:57配信

〈合格だ これから4年 脛(すね)細る〉。この川柳が表すように大学生の子供を抱えると、台所事情が厳しくなる家庭は少なくない。国立大学でさえ、初年度は入学金と授業料だけで平均81万7800円。これが私大になると……。そんな親には朗報? “うまい、やすい、はやい”でお馴染みの牛丼チェーン「吉野家」が奨学金制度を開始するのだ。

 吉野家ホールディングスが始める奨学金制度の対象は、来年4月の大学入学予定者。入学金と4年間の授業料を全額貸与するが、吉野家の店舗で週3時間以上アルバイトをすることが条件だという。全国紙の経済部記者によれば、

「卒業後に吉野家へ入社して、4年間勤務すれば返済の義務がなくなる。また、『日本フードサービス協会』に加盟する同業他社へ入社しても、半額が免除されます」

 なぜ、この時期に奨学金制度を開始するのか。吉野家HDの企画本部に理由を聞くと、

「ここ数年、弊社の社長が講演会などで学校関係者から“経済的な理由で、大学に進学できない子供が少なくない”と聞き、それなら積極的に協力しようと考えたからです」

 吉野家HDの社長は、5年前に就任した河村泰貴氏(48)だ。

「吉野家HDの会長を務める安部修仁さんは、元バンドマンで、高卒のアルバイトから社長に上り詰めたことで話題になりました。実は、河村さんも“高卒のバイト上がり”なのです。そんな2人ですから、経済的な理由で大学へ進学できない高校生を他人事とは思えなかったのでしょう」(先の記者)

 吉野家HD企画本部の説明では学部学科は問わないが、返済利率などの細部は現在検討中だという。

■離職率50・5%

 さすが、庶民の味方だと拍手を送りたくなる。しかし、“叩き上げ”から名を遂げた2人ゆえ単なる慈善事業であるわけがない。

「人材確保とイメージアップが狙いだと思います」

 こう分析するのは、外食産業に詳しいジャーナリストの福田健氏だ。

「外食産業が直面する課題は、一にも二にも人材確保。現場でアルバイトを指導する大卒社員の数が絶対的に足りず、入社してもすぐに辞めてしまう。4年間、週3時間以上働いた奨学生の何人かが入社すれば、“即戦力”になることは間違いありません。この制度は、大卒社員の“先物買い”という思惑が働いているのだと思います」

 だが、居酒屋チェーン「ワタミ」の過労“自殺”事件や、深夜の営業を1人に任せていた「すき家」の“ワンオペ”問題に代表されるように、外食産業のイメージは決してよくない。事実、マイナビが実施した大学4年生対象の就職人気ランキングでは、トップ100に外食産業の名は1社も見当たらないのだ。

「外食産業でもう1つの問題が離職率の高さ。昨年実施した厚生労働省の調査によれば、入社3年後の離職率は全業種で31・9%なのに対して、宿泊業を含めた外食産業のそれは50・5%のワースト1。新入社員の2人に1人が、3年以内で会社を去る異常事態が続いている。奨学金の返済免除の条件を“4年間勤務”にした理由は離職率を改善し、イメージアップに繋がればと考えているのでしょうか」(福田氏)

 外食産業担当アナリストのこんな分析もある。

「吉野家の試みは非常に評価できますが、思うような効果が得られるかは疑問です。外食産業は“キツイ”、“給与が低い”、“帰れない”の新3K職場と呼ばれている。こうした環境を抜本的に解決しなければ、離職率の改善は期待できません」

 奨学金の対象者は、上限10人。まずは、どのくらいの倍率になるのか見ものである。

「週刊新潮」2017年4月13日号 掲載

新潮社

最終更新:4/17(月) 5:57

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