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篠山紀信が魅せる、アートとしてのラブドール。

4/19(水) 22:00配信

VOGUE JAPAN

常に “時代の特等席” を独占し、これまでに幾多もの衝撃作を撮り下ろしてきた写真家、篠山紀信。彼が次に選んだテーマは、なんとラブドール! 4月29日(土)から5月14日(日)まで東京・渋谷のアツコバルー arts drinks talkで開催される写真展「LOVE DOLL ×SHINOYAMA KISHIN」を前に、このプロジェクトの “真相” にヴォーグが迫りました。

現実と非現実。相反する二つのイメージをないまぜにして。

---そもそもこの写真展のプロジェクトはどういったきっかけが発端となって始まったのでしょうか?

篠山 明治学院大学教授で美術史家の山下裕二さんからオファーをいただいたことがきっかけでした。彼が昨年プロデュースした、ラブドールをテーマにした展覧会が大盛況だったそうで、それをきっかけに今度はラブドールを被写体にした写真集を作ろうという話が持ち上がった、と。そしてそれならばぜひ篠山紀信に撮ってほしいという依頼を頂いたわけです。

---そのオファーを受けたときの、篠山さんの率直な感想はどのようなものだったのでしょう? 被写体が、人間ではなく、ラブドールということにはどんな面白さを感じたのでしょうか。

篠山 僕自身にはラブドールそのものを愛するという性癖はありません(笑)。ただ、僕のこれまでの作品には、幼いころから人形に並々ならぬ興味を示し、その制作に打ち込んできた四谷シモンの人形写真集「四谷シモン 人形愛」もありますし、「TOKYO NUDE」ではマネキンを置いてそこでヌードの女性を撮るといったこともしてきました。マネキンを使った撮影を、実はよくやってきたわけです。ある種の近未来を予感させるような作品を撮るときに、マネキンやドールといったものは僕にとって“便利” な存在。それは、現実と非現実、過去と現在と近未来、嘘と誠、生と死……そういった相反する二つの強烈なイメージをないまぜにして見せることができるからです。

---「 LOVE DOLL × SHINOYAMA KISHIN」の写真は、どれも本当の人間のよう。篠山さんが撮ると、まるで人形に魂が宿ったかのように表情が生まれ、これには驚きました。そして、それが人間ではなくドールであるということに、どことなく怖さも感じます。

篠山 「怖い」と感じるのは、ある意味、正直な反応かもしれません。僕が撮りたかったのは、生きているか生きていないか、本当なのか嘘なのか、そういった虚と実がないまぜになることの不思議さです。つまり、作品は自ずとシュールな、見る者に不安感を抱かせる写真になるわけです。そしてそれは、今を生きている人間が根源的に持っている不安に結びつくのかもしれません。というのも、今、人工知能がここまで発達しているでしょう? このままいけばきっと、人間だか人形だかよくわからないロボットのようなものが近い未来に必ず出てくる(笑)。映画『ブレードランナー』(1982年公開のアメリカ映画)はまさにそんな世界を描いたものですしね。現代人は多かれ少なかれそんな未来に対する恐怖を感じているでしょう。そういう意味では、まさしくこの作品が持つ「怖さ」こそが現代写真っぽさなのかもしれません。現代が生んだ、近未来の写真といえるでしょうね。

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最終更新:4/19(水) 22:00
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