ここから本文です

老人が優先席に自分から座るのは何歳から? 

東洋経済オンライン 4/19(水) 6:00配信

 先日、知人同士の飲み会で50代後半の男性がこんなことを言っていた。
「東海道線に乗っていたら、前に座っていた子どもたちに席を譲られたんだよね」

この記事の写真を見る

 50代後半という年齢を考えると、車内では席を「譲られる」には早すぎるように思われる。しかし年齢と見た目は一致しないもの。そう思いながら彼の頭の上のほうをそっと盗み見てしまった。確かに子どもたちが譲りたくなるかもしれない……。

■高齢者22人に聞いてみた

 席を譲る、譲らないという話題で想起するのは「優先席」だろう。普段列車に乗る際、すこぶる体調が悪く、なおかつそこしか空いていないといった状況の場合を除いて、原則的に私は優先席には座らない。

 優先席と銘打っているからには、優先されるべき人がいなければおそらく座っていても構わないのだろうけど、どうしても抵抗が生じてしまう。お年寄りや妊婦が近くに来たタイミングで席を譲ればいいのだろうが、譲るという行為が相手を不快にしてしまうのではないかという心配がある。見た目が高齢者に見えても、冒頭の例のようにまったくそんなことはないかもしれないし、仮に実年齢的に高齢者であっても、当人は自分自身をそうとらえていないかもしれないからだ。

 そのため、優先席ではない席に座っていても、高齢者と思われる人が近くに来た際、私はスムーズに席を譲ることができないでいる。たとえば駅に停車中のタイミングであれば、下車するふりをしながら隣の車両に移るといったようなことをしている。

 一方的に「譲る側」の理屈を並べていても仕方がない。そこで高齢者は席を譲られるという行為をどう感じているか、今まで優先席に座らなかった高齢者はどのようなきっかけで座るようになったのか、自分の知人である首都圏在住の61~80歳の22人(平均年齢70歳、男性20人、女性2人)に質問をしてみた。

優先席が空いていれば座る人は何割?

 最初の質問は「優先席が空いていれば座るか」。この問いに対しては、全体の7割に相当する22人中16人が「座る」と答えた。「座る」と答えた人の平均年齢は71歳で、「座らない」と答えた人の平均年齢は68歳である。さらに、「座る」と答えた人のうち、最も若い人は61歳。逆に「座らない」と答えた人のうち、最も高齢の人は76歳だった。

 「座る」と答えた人にその理由を尋ねてみたところ、多かったのは「疲れるから」、そして「空いているから」というものである。逆に「座らない」と答えた人にその理由を尋ねてみたところ、「自分は若いと思っているから」「年寄りに見られたくないから」といった声が聞かれた。あくまで私見だが、身なりに気を使っている人ほど「座らない」と答える傾向にあるように思われた。

 続いての質問は、「普通の座席も含めて席を譲られた経験があるか」。この問いに対する回答は22人中17人が「経験がある」というものだった。さらに追加で「初めて席を譲られたときの年齢」についても聞いてみたところ、最高齢が77歳、最若手が40歳、平均64歳というものだった。ただ、なかには「台湾でのことだよ」「これは韓国での話だからね」というただし書きが付いている人も2人いた。「日本で席を譲られたわけではない」ということを強調したかったようだ。これはつまり「日本では積極的に席を譲る人は少ない」と同義に思われる。

■席を譲られると優先席に座り出す? 

 最初の「優先席が空いていれば座るか」という質問に対して、「座らない」と答えた6人のうち、席を譲られた経験があるのは2人だった。これだけをみていると、席を譲られることと自主的に優先席に座ることには関連性がないように思われる。

 逆に「優先席が空いていれば座る」16人のうち、席を譲られた経験があるのは13人もいた。しかも、そのうち8人が、席を譲られた経験からほどなくして、長くても3年以内に「日常的に優先席に座る」ようになっていたのである。

 ひょっとすると「譲られた」という経験が、「優先席が空いていれば座る」きっかけになっているのかもしれない。私が席を譲ることにより、これまで優先席に座ることをためらっていた人が、今後気兼ねなく座れるようになるのなら、それに越したことはない。

 しかし、それでもやはり高齢者かどうかは見た目で判断できない、という前提はどうしても大きな壁である。鉄道会社も乗車時にはしきりと「優先席」に関するアナウンスをするが、最終的に「譲る」判断は乗客に委ねられていて、なんとももどかしい。

蜂谷 あす美

最終更新:4/19(水) 6:00

東洋経済オンライン