ここから本文です

ビンスの選択“WCW買収”はこうして成立した――フミ斎藤のプロレス講座別冊WWEヒストリー第334回(2001年編)

週刊SPA! 4/19(水) 9:00配信

 WWEとWCWの“月曜TVウォーズ”は、プロレスのソフトウェアやテレビ番組のコンテンツとはまったく関係のないところで、あまりにも唐突にジ・エンドとなった。

 2001年1月11日、タイム・ワーナー社とWCW(ワールド・チャンピオンシップ・レスリング)が合同記者会見を開きWCWの“身売り”を発表した。タイム・ワーナー社は同日、これとは別の記者会見を開き、同社とAOLの合併を正式にアナウンスした。

 WCWを買収したのはフュージェント・メディア・ベンチャーズという新しい投資会社で、記者会見で配布されたプレスリリースにはフージェント社の役員(エリック・ビショフ、ブライアン・ビードル、スティーブン・グリーンバーグの3人)の氏名が記載されていたが、具体的な買収額はなぜか公表されなかった。

 それから2週間後、こんどはWCWのもともとの親会社TBS(ターナー・ブロードキャスティング・システムズ)がフュージェント社によるWCW買収案が“白紙撤回”となったことを明らかにした。

 フュージェント社の社長となったビショフは、TBS傘下時代からの既存路線を継続して“マンデー・ナイトロ”と“サンダー”の2番組にそれぞれ年間3000万ドル(約33億円=当時)ずつの放映権料をタイム・ワーナーAOL社から引き出し、これを新体制WCWの年間予算に計上するつもりだったというが、この計画には狂いが生じた。

 こういった水面下の動きとときを同じくして、タイム・ワーナーAOL系チャンネルを統括する番組編成局長としてジャイミー・ケルナーなる人物がジョージア州アトランタに出向してきた。

 ケルナー・プロデューサーのおもな業務は、制作費がかさむ番組の経費削減と視聴率の低い番組の整理。TBSの“プロレス事業部”だったWCWは会計年度2000年だけで6200万ドル(約68億2000万円=当時)の赤字を出していた。

「プロレスは低俗。ステーション・イメージにそぐわない」と公言したケルナー・プロデューサーは、なんのためらいもなく“マンデー・ナイトロ”(TNT=ターナー・ネットワーク・テレビジョン)と“サンダー”(TBS)の放映打ち切りを決めた。

 TBSは、同局がまだアトランタのローカル・チャンネルだった1972年から約30年間にわたりプロレス番組をオンエアしてきたが、その歴史と伝統はたったひとりのプロデューサーの手で“消去”されたのだった。

 テレビ番組自体が存在しなくなるWCWは、投資会社であるフュージェント社にとってはすでに買収する意味のない会社だった。同年2月、TBSサイドからスチュー・スナイダーWWE執行取締役(当時)に“非公式”な文書として送られてきたFAXには「われわれはビショフには(WCWを)売らない」とだけ記されていた。

 いっぽう、WWEは2000年9月、USAネットワークとの契約を更新せず“ロウ・イズ・ウォー”“ライブワイヤー”“スーパースターズ”の3番組の放映チャンネルをTNN(ザ・ナショナル・ネットワーク)に移行。それまで年間550万ドル(約6億500万円=当時)程度だった“ロウ”の放映権料をその5倍以上の2800万ドル(約30億8000万円=同)に引き上げることに成功した。

 1999年8月から2000年8月まで1年間、ECWの1時間番組をオンエアしてきたTNNは、WWEとの契約と同時にECWとの契約を破棄。全米放映のTVショーを失ったECWは、2001年1月13日、アリゾナ州パインブラフというちいさな町でおこなわれたノーTVのハウスショーを最後に約8年間の活動にピリオドを打った。

 WCWの内部崩壊とECWの倒産はまったくリンクしていないふたつの異なるできごとのようにみえて、“TVマネー”とテレビ局のプロデューサーの意向がプロレス団体の息の根を止めたという点ではひとつの事件だった。

 21世紀がはじまったとたん、アメリカのレスリング・ビジネスの勢力分布図が大きく変わった。

 TBSから“非公式”なアプローチを受けたWWEはWCW買収に動き、2001年3月、250万ドル(約2億7500万円)の“超安値”で映像ライブラリーを含むWCW保有のすべての版権・著作権・知的所有権を買い上げた。

 ビンス・マクマホンは「退屈な勝利」とつぶやいた――。(つづく)

※この連載は月~金で毎日更新されます

文/斎藤文彦 イラスト/おはつ

※斎藤文彦さんへの質問メールは、こちら(https://nikkan-spa.jp/inquiry)に! 件名に「フミ斎藤のプロレス講座」と書いたうえで、お送りください。

日刊SPA!

最終更新:4/19(水) 9:00

週刊SPA!

記事提供社からのご案内(外部サイト)

週刊SPA!

扶桑社

2017年5月2・9日合併号
04月25日発売

¥420

・[資産1億円超え]は意外と簡単だった!
・密着ルポ[独身 無職 中年]の絶望
・究明ワイド“愛国者”の暴走が止まらない
・タダでGWを満喫する40の方法