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終焉を迎えた北朝鮮への忍耐

Wedge 4/20(木) 12:11配信

 3月17日付のウォールストリート・ジャーナル紙の社説は、ティラーソン国務長官が、北朝鮮に対する「戦略的忍耐」は終わったと述べたことや、THAADの韓国配備に中国が圧力をかけていることを批判したのは適切であるとして、その対応を評価しています。その要旨は、以下の通りです。

 初のアジア訪問を行っているティラーソン国務長官は、北朝鮮が核保有の野心を諦め、政権崩壊を待つというオバマ政権の政策について、「戦略的忍耐という政策は終わった」と述べた。その前日には、北朝鮮に対する20年に及ぶ「失敗したアプローチ」を批判している。

 ティラーソンが述べたことは正しい。北朝鮮に賄賂を贈って核開発を諦めさせようとしたり、中国に説得させようとしたりした、これまで失敗してきたアプローチは、1994年のクリントンとガルーチによる米朝枠組み合意まで遡る。米国は数年がかりの多国間協議に参加し、守られることのない約束のために金や譲歩を与えてしまった。

 ブッシュ大統領は、2006年に北朝鮮が初めて核実験を行った後、テロ支援国家指定を解除してしまった。北朝鮮への圧力が効果を出しつつあったのに、ブッシュを説得しそれをやめさせてしまったライスとヒルは、多くの追及に答えるべきだ。

 オバマ大統領も北朝鮮を説得しようとしたが、その時点で北朝鮮は核とミサイルのストックを増やすことを決断していた。オバマ政権はそれを受け「戦略的忍耐」政策をとったわけだが、そのせいで今や北朝鮮はソウル、東京、シアトルを破壊する能力を備えつつある。

 ティラーソンは、米国のTHAADを受け入れている韓国に対して、中国が経済的な報復をとっていると指摘し、「すべての国にとっての深刻な脅威に対処しようとする地域大国のやることではない」、「THAADが必要となっている脅威に対し、中国が直接対処することを求める」と述べた。また、ティラーソンは米国や同盟国を防衛するため、軍事力を含むあらゆるツールを排除しないとも述べている。脅威や現状に鑑みれば、ティラーソンの率直な発言は適切である。ティラーソンとトランプ大統領は、北朝鮮が対米核攻撃能力を持つ前に、米国がそれを阻止する覚悟を決めているということを、これまで無視を決め込んできた中国に分からせようとしている。

 ホワイトハウスには、北朝鮮とビジネスをしている中国企業を米国の金融システムから追放したり、北朝鮮による次のミサイル発射を迎撃するといった選択肢がある。国際社会が失敗した戦略を転換する必要を認識する第一歩として、ティラーソンの発言は好ましいものであった。

出 典:Wall Street Journal ‘Tillerson Tells the Korean Truth’ (March 17, 2017)

 ティラーソンが、北朝鮮の核開発を阻止しようとした過去20年のアプローチが失敗であったというのは正しい判断です。米国は1994年の枠組み合意をはじめとして、北朝鮮の核開発を阻止すべく、六か国協議などいくつもの働きかけを行ってきましたが、いずれも成果を上げられませんでした。

 北朝鮮に一番影響力を持っているのは中国であり、米国は機会あるごとに中国が北朝鮮に圧力を加えて核開発を中止させるよう要請しましたが、中国はこれに応じませんでした。中国が北朝鮮に対して持っている梃子は、食料、石油の供給を大幅に減らすか、中断することですが、中国はその結果北朝鮮体制が崩壊して、国境線まで親米政権が拡大すること、また大量の難民が中国に押し寄せるおそれからこれを望まず、この梃子を使いたがりません。逆にそれを知っている北朝鮮が、いわば中国に対して梃子を持っているのが実情です。

 それでは、ティラーソン、あるいはトランプ政権はいかなる対北朝鮮政策を考えているのでしょうか。

 ティラーソンは韓国訪問中、戦略的忍耐の時代は終わった、あらゆる選択肢が排除されない、と述べました。ただ、いかなる選択肢が北朝鮮の核開発に歯止めをかけられるかは明らかではありません。

 社説は、北朝鮮とビジネスをしている中国企業を米国の金融システムから追放することを選択肢の一つに挙げています。しかし、中国が北朝鮮に厳しい経済制裁を課すことは考えられません。社説はまた、北朝鮮による次のミサイル発射を迎撃するという選択肢があると言っています。もし迎撃すれば北朝鮮は黙っていないと思われ、何らかの報復措置を取る危険があります。他方、迎撃したとしても、北朝鮮が核、ミサイルの開発を止めるかどうか疑問が残ります。

 北朝鮮の核開発を止めさせることは、極めて重要で困難な課題です。その手段によっては、北朝鮮が報復措置を取り、事態がエスカレートする危険があります。基本的には北朝鮮に対して抑止が効くかどうかという問題です。北朝鮮に対する新しい選択肢は、朝鮮半島、東アジア、ひいては世界の安定の大きな波乱要因となり得ます。日本としても重大な関心を持つべき問題で、今後トランプ政権がどのような検討をするのか細心の注意を払ってフォローするとともに、直接の利害関係国として、米国と密接な協議を行うべきです。

岡崎研究所

最終更新:4/20(木) 12:11

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