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【棚橋弘至の「全力」お悩み道場】職場の士気をどう高めるか?

PHP Online 衆知(THE21) 4/21(金) 21:10配信

Q:今、自分のいる業界全体が不景気で、職場の皆もモチベーションがなかなか上がりません。こんなときこそ盛り上げたいのですが、前向きなことを言うだけでは響かないようです。どうすれば士気を高められるでしょうか?

A:これは大変ですよね。同じ経験をしたからよくわかります。新日本プロレスも、ビジネスが厳しい時期がありました。このとき僕は、同じことをしているだけではお客さんが離れていくだけだという危機感を持って、新しいことにいろいろと取り組みました。でも、それらの挑戦は理解されず、会場はブーイングの嵐。社内にも賛同者はいなくて、浮いた存在でした。
たとえば会場では、自らファンに「タナハシ」コールを求めました。日本のお客さんは行儀がいいので、技が出たときには拍手をくれますが、行儀が良すぎてうまく盛り上がれないことも多いんです。でも、本当に気持ちが高揚したら、盛り上がってくれるはずなんです。たとえば長州力さんの入場でテーマ曲『パワーホール』が流れると、熱狂的な長州コールが起きますよね。僕は、あの盛り上がりを新日本のリングに呼び戻したかった。
当時の新日本には自らコールを煽ったりするレスラーはいなかったから、みんな戸惑ってました。腕を回して煽ってもファンは気づかないから、僕は自分で「ターナハシ、ターナハシ」って声を出しました。それでもシーンとしていたら、コールが起きるまで意地でも試合を始めなかった。
会社からは怒られましたよ。地方の大会もG1クライマックス(新日本の最大級の大会の一つ)でも同じように煽っていたら、「棚橋君、G1はそういう大会じゃないよ」と注意されたのです。でも、僕は曲げなかった。ビジネスが下がっているときなのだから、かっこつけている場合じゃないでしょ。
そうやって全力で取り組んでいたら、少しずつ賛同者が増え、3~4年で空気が変わってきました。そのとき思い出したのは、入門したときにコーチをされていた山本小鉄さんの「レスラーは3年先を見て練習しろ」という言葉です。筋肉はトレーニングしてすぐ明日つくわけじゃない、いつか強い筋肉になると信じて地道に続けるしかないという教えですが、職場の士気を上げるのも同じでした。最初は反応がなくても、先を見据えてやり続けることで、ようやくまわりも変わり始めるんです。
相談者さんも、変化はすぐに起きないことを覚悟して、今の取り組みを続けるしかないと思います。一つアドバイスするとしたら、一人でいいから早く味方を見つけることでしょう。僕のやり方がチャンピオンらしくないと批判されていたとき、音響のベテランスタッフである遠藤さんが、「みんなチャンピオンらしくないというけど、猪木さんに一番近いよ。棚橋君、君はそれでいいよ」と言ってくれました。この一言に、どんなに救われたことか。
職場の空気が変わるまでには、どうしても時間がかかります。そのときに一人でも仲間がいれば、未来を信じて頑張れる。口に出さないだけで、同じ志を持った人は必ずいるはず。そういった人たちが手を挙げやすい環境をつくるためにも、自分が口火を切って行動することが大切です。

最終更新:4/21(金) 21:10

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