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スコットランドよ、お前もか?

4/21(金) 12:11配信

Wedge

 エコノミスト誌の3月18日付け社説が、英政府はスコットランド独立を問う新たな住民投票を拒むべきでないが、Brexitが賢い選択ではないようにScoxitも賢い選択ではない、ScoxitはBrexitが犯したのと同じ過ちを犯すことになる、と論じています。要旨、次の通り。

 スコットランド行政府のスタージョン首相がスコットランド独立を問う新たな住民投票の実施を求めるとの表明は、Brexitの意図せぬ結果の一つである。しかし、独立派が新たな投票を要求するのは間違っていない。SNP(スコットランド国民党)は状況に重大な変化があれば、新たな住民投票を実施すると公約して昨年の選挙で勝ったが、Brexitはまさに重大な変化だ。メイ首相も英議会もこれを拒んではならない。

 しかし、メイ首相には実施を遅らせる権限があり、3月16日には、英国とEUの関係が明確になるまで住民投票の実施はないと言明した。一方、スタージョンは2018年秋から2019年春にかけて、つまりBrexit交渉が最終段階に入る難しい時期の投票実施を望んでいる。スタージョンは独立したスコットランドは速やかにEUに再加盟できると示唆しているが、これは誤りだ。  

 Brexitの前にスコットランドがScoxitを完了できる見込みはない。ブリュッセルも、かつて加盟国の一部だった国に対する特別早い加盟プロセスはないと明言している。

 それに、Brexit交渉の最中の住民投票実施は、スタージョンは承知の上であろうが、英政府に大きな圧力となる一方、スコットランドの利益も損なう。(1)英国に残るにせよ離れるにせよ、スコットランドも利害関係を有するBrexit協議を混乱させ、(2)有権者は英国とEUの関係が定まる前に投票しなければならなくなるからだ。

 新たな住民投票に向けて選挙運動が始まれば、英連合を支持する側にとってBrexitは厄介な要素になるだろう。昨年、多くの閣僚が「離脱に投票せよ、コントロールを取り戻せ」と国民に促した。今更どうしてスコットランド人が「事態をコントロールできる」ことを望むスタージョンに反対できよう。

 しかし、Brexitは独立派にも厄介な問題をもたらす。Brexit支持者の英連合支持に説得力がないように、スタージョンがEUのメンバーシップと英国からの離脱の双方を派手に主張するのは困難である。自国の製品の最大の輸出先であるEU単一市場からの英国の離脱は賢明ではないが、スコットランドの場合、最大の輸出先は英国だ。さらに、同首相はBrexitによる英=EU間の往来の制限を嘆くが、スコットランドが独立すれば、英国との往来が制限される可能性は十分ある。何よりも「Brexitで主権を獲得しても、強力な加盟国の一員として得られる影響力を失うのなら、主権は錯覚に過ぎない」と親EU派は言ってきたが、スコットランドも英国を離脱すればそうなる。純粋な意味での主権は強まるが、それは国連安保理やG7の地位、核兵器、その他真の自決を助ける諸々の喪失という代償を伴う。

 スコットランドの状況は確かに悲惨だが、英国からの離脱は、英国がBrexitで犯している過ちと同じ過ちを犯すことになる。Brexitは、スタージョンが新たに独立を求める動機になったが、同時に、独立することの危険性も警告している。

出典:‘Leave one union, lose another’(Economist, March 18, 2017)

 メイ首相は、「今はその時ではない」、Brexitについて判断を下すには早過ぎるタイミングでスコットランドの人々に投票を求めることは公正でないと述べ、スタージョンが要求するタイミングでの住民投票を拒否しています。また、独立追求の動きはBrexit交渉を害するとSNPを非難もしています。但し、メイ首相の発言は未来永劫に住民投票を排除する趣旨ではありません。

 独立はBrexit の過ちを犯すことと同様だという、この社説の警告について言えば、そういう議論も成り立つかもしれません。しかし、合点が行かないのはSNPの住民投票の要求は正当であり、メイ首相も議会もこれを拒むことは間違いだという指摘です。その論拠は、SNPは状況に重大な変化があれば新たな住民投票を行うと公約して昨年の選挙に勝ったが、Brexit は重大な変化だという点ですが、これは専らSNPないしスコットランドの視点に立った議論です。

 スコットランドに対してイングランドの側に後ろめたい気持ちでもなければ、こういうSNPの議論を容認することにはならないのではないでしょうか。エコノミスト誌に限ったことではありませんが、スコットランドは残留に大多数が投票したにもかかわらずEUを去るのか、それとも最大の貿易相手である残りの英国との関係を転覆させるのかという残酷な選択を迫られている、という同情がどこかにあるようにも思われます。この感情はメイが単一市場のメンバーシップと決別するいわゆるハードなBrexit(EUから離脱する以上当然のことと思いますが)を選択し、また単一市場へのアクセスを保証する貿易協定は不満足なものにならない方がましだとの強い姿勢を示したことで強まっているのかも知れません。住民投票を拒否することによって、スコットランドの感情を逆撫でし、独立指向にますます追い遣るという恐怖もあるかも知れません。

 Brexitの姿が明確になる前にメイが住民投票に応ずる可能性はないと思われますが、問題に決着を着けるためにいずれは応ぜざるを得ない見通しにあるのかも知れません。しかし、住民投票は危険な賭けです。

岡崎研究所

最終更新:4/21(金) 12:11
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