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インドの名門大学が「8,000年前の建築思想」をカリキュラムとして導入

4/21(金) 8:20配信

WIRED.jp

現グーグルCEOらも輩出したインドの名門工科大学が2017年からカリキュラムに取り入れようとしているのは、8,000年の歴史を誇るインド風水「ヴァーストゥ・シャーストラ」だ。その着眼はしかし突飛なものではなく、伝統あるこの思想を、世界有数の富豪からテック大手までもが空間設計において取り入れているという。

インドの「階段井戸」は、寺院であり、遺産であり、インフラでもある。

インド工科大学カラグプル校は、8,000年の歴史を誇るインド風水「ヴァーストゥ・シャーストラ」を、2017年8月から新たな建築学のカリキュラムとして取り入れることを明らかにした。同校はインドでもっとも古い歴史をもつエンジニアリングの教育機関で、グーグルの最高経営責任者(CEO)サンダー・ピチャイの母校としても知られる。新学期に向けた講義要綱の改変に合わせて、学士課程および大学院レヴェルにおける一部の既存モジュールに組み込まれるという。

ヴァーストゥ・シャーストラとは、古代インド発祥の伝統思想で、現代では建築環境工学や都市工学をはじめ、心理学や脳科学といった幅広い学問へと分化している。サンスクリット語で狭義には「建築物の学問」、広義には「生命力の思想」を意味する言葉どおり、地・水・火・風・空から構成される五大エネルギーのバランスを保つという考え方を軸に、太陽光の熱や風向き、月の満ち欠け、地球の磁場といったさまざまな地形効果が建築のおける土台となる。生命と環境の調和という観点では古代中国の風水思想に似ているが、建造物の間取りや方位といった実践面では大きく異なる。

アンコールワットから、マイクロソフト社屋まで

その歴史は中国の風水より古いといわれ、紀元前2500年頃に栄えたインダス文明最大の都市遺跡モヘンジョ=ダロがヴァーストゥの原則に基づいて設計されていることから、一説には紀元前6000年から3000年にはすでに成立していたものと考えられている。その後、口承されたものが数千年の時を経て、バラモン教の聖典「ヴェーダ」として編纂されたものが原典となった。インドや周辺地域に残る古寺院や史跡には、ヴァーストゥの影響が数多く確認できる。インド文化の影響を色濃く残すカンボジアのアンコールワット遺跡にも、その思想が垣間見えることで有名だ。

近代以降も欧米を中心に再び注目されたことをきっかけに、世界有数の大富豪ムケシュ・アンバニがヴァーストゥの思想に基づいた豪邸を建てたことでも、その名を世界にとどろかせた。また近年、マイクロソフトやボーイング、インテルといった大手企業が一部社屋の設計にヴァーストゥを取り入れたことでも話題になった。

インド工科大学カラグプル校で学長を務めるジョイ・センは、教育カリキュラムとしてのヴァーストゥ導入について、『Quartz India』に対して次のように語っている。

「グリーンテクノロジーや自然に配慮したライフスタイル、手頃で環境にエコな素材の到来により、自然と共存することへの関心は日増しに高まっています。それは世界中でヴァーストゥへの理解が深まることにも繋がるでしょう。ヴァーストゥとは生きとし生けるものが享受するエネルギーと、生態環境の相互関係を扱うサイエンスなのですから」

RITSUKO KAWAI

最終更新:4/21(金) 8:20
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