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需要急増のリチウム。南米でのリチウム覇権を狙う米国と南米産出国の動き

4/22(土) 16:20配信

HARBOR BUSINESS Online

 世界の自動車メーカーは電気自動車の開発を重要な課題としてそれに取り組んでいる。仮に<90kWhのバッテリーを搭載した場合に、リチウムの現存推定埋蔵量から判断して7億5000万台の電気自動車を生産>できるとしている。しかし、予測される年間の世界自動車生産台数から判断して、これから先、<17年でリチウムは枯渇してしまう>という推測もある。(参照:「La Vanguardia」)

 米国の地質調査所(USGS)によると、2008年のリチウム産出量は2万7400トン、2015年には3万2500トンを達成した。そして、2020年には6万トンの産出が見込まれている、と報告している。

 一方、リチウムの需要については、Global X Lithiumによると、2020年には29万トンから40万トンの需要が見込まれると予測されている。

 現在、世界で最も注目を集めている電気自動車メーカー「テスラ」は<5年以内に50万台を生産する体制に成る>としており、その為には<3万5000トンのリチウムが必要になる>としている。即ち、それは現在、世界で産出するリチウムがすべて5年後のテスラによって消費されるということになる。(参照:「iProfesional」)

 今後の推定産出量から判断すると、それは極度のリチウムの不足を生むことになる。

◆中東産油国の世紀から南米リチウムの世紀に

 これからリチウムの需要は急激に強まって来る。それに伴い、その価格も上昇中だ。1998年にトン当たり1770ドルであったのが、2009年には6000ドルになり、そして<今年は平均7300ドル当たりで終始>すると予想されている。(参照:「El Potosi」)

 そんな中、世界の推定埋蔵量は1300万トンと言われている。そして、世界の推定埋蔵量で6割或いは8割を占めるのが、ボリビア、チリ、アルゼンチンの3か国である。これらの国を指して、「20世紀の中東の原油の世紀」から「21世紀のリチウムの世紀」に時代は移ったと呼ぶ人もいるほどだ。

 3か国の中で、現在世界的に産出量が一番多いのはチリである。世界の産出量の3分の1近くを生産している。アルゼンチンがそれに続く。

 そして、その潜在能力で注目されているのがボリビアだ。ボリビアはウユニ塩湖という世界で最大規模の塩湖を有しているが、まだ開発されていない。理由は多国籍企業に自国の富を略奪されるのを避けたいとするエボ・モラレス大統領の考えからである。彼は先住民出身で、歴史上スペイン人がボリビアの富を略奪したのを見て、それと同じ二の舞は避けたいという考えから、ウユニ塩湖の開発も自国資本で行うとしている。そのため、先述した「世界の推定埋蔵量」1300万トンには、世界で最も埋蔵量が多いとされているボリビアが含まれていないのである。

◆忍び寄る米国の手

 このエボ・モラレス大統領が警戒していることはいま、アルゼンチンとチリの身に降りかかりつつある。つまり、米国の手が忍び寄っているということだ。

 アルゼンチンに昨年12月にマクリ大統領が誕生したことによってそれが表面化した。彼は大統領選挙戦中から4か年の「ベルグラノ計画」を掲げていた。その主要目的はアルゼンチンの北部地方のインフラ開発や教育向上を目指すことである。その北東地方はブラジル、パラグアイ、アルゼンチンの3か国が国境を接する地域で、そこは淡水湿地帯という「水資源の豊富な地域」なのである。と同時に北西部地方はチリとボリビアと国境を接し、そこは「世界のリチウムが終結した豊富な塩湖地帯」である。

 そして、この「ベルグラノ計画」の一貫として表向きはテロ活動や麻薬の阻止など安全確保を目的に米国がこの地域で米軍基地を設置することをオバマ前大統領と合意に達したのである。これが意味することは、米国は淡水地帯そしてリチウムの塩湖へのアクセスが可能になるということである。また、現在未開発のボリビアのウユニ塩湖についてもアルゼンチン側からボリビア政府を牽制できる体制になることである。

 米国企業のアルゼンチンでのリチウムの産出は主にFMC Corp、 Lithum Americas、Albermarle Corpが開発を進めている。特に、注目されるのはAlbermarle Corpで、同社は世界のリチウム生産量の33%を占めている。

 アルゼンチンでは米国企業以外に豊田通商が米国とカナダ資本のOrocobreとジョイント・ベンチャーでフフイ塩湖からリチウムを産出している。また、三菱商事もリチウム開発を進めている。中国、韓国、フランスの企業なども開発に参加している。

 米国との関係強化という意味で、マクリ大統領はオバマ前大統領との間で世界で最南端の都市ウシュアイアにも米軍基地を設けることで合意している。この都市は地政学的に南極、大西洋、太平洋の動きを監視できる重要な拠点になっている。

 現在世界でリチウムの産出量が一番多いチリに目を向けると、同国でのリチウムの産出はSQMとRockwoodの2社の寡占化が続いている。SQMは半官半民企業で、一方のRockwoodはアルゼンチンでリチウム産出を支配しつつある米国Albermarleの100%子会社である。そして、世界で3番目の規模の米国FMCもチリでの可能性を探っているという。

 勿論、世界の40%のリチウムを購入しているとしている中国も、3社がチリでのリチウム産出の可能性を探っている。

◆ボリビアの「ブルーオーシャン」を狙うテスラ

 世界から一番注目を集めているのが、世界で最大の埋蔵量を誇るボリビアという「ブルーオーシャン」である。もっとも、ここでいう「ブルーオーシャン」は海ではなく、湖、というよりも「ウユニ塩湖」である。

 ただ、先述したとおり、この土地はまだ開発されていない。

 というのも、2006年から政権に就いているエボ・モラレス大統領はアイマラ族という先住民出身であることから南米の富が嘗てスペイン人によって略奪されたという意識がより強い。コロンブスはアメリカ大陸発見者ではなく、侵略者だという意識が先住民族の間で根付いているのだ。

 しかも、彼はウーゴ・チャベスの影響もあって反米意識が鮮明で、南米でのこれまでの米国支配に極力反対している。その影響から、彼の政権では国家の基幹産業に成りうる可能性のあるものは全て国有化するという政策を取って来た。

 リチウムを埋蔵するウユニ塩湖の開発についても国有化しており、その開発は自国資本に限定するとして、外国からの資本参加を極力避けている。

 リチウムへの需要が増大し価格が高騰するにつれて、国家事業として<塩化カリウムとリチウムの産出に9億ドル(990億円)>を投資して、<2018年から生産化>を目指すとした。(参照:『Sputnik News』)

 ボリビア政府のこの動きを見たテスラモーターズは、ボリビアで<バッテリーの生産工場を建設したい>という希望を同政府に伝えたという。同じような申し出が<ロシア、オーストラリア、日本を含め5社からあった>ことも政府は公表した。(参照:「Revista Norte」)

 エボ・モラレス大統領を説得するには現地生産を行うという条件でないと、彼が外国からのリチウム開発の申し出を受けいれることは先ずないだろう。産出したリチウムをそのまま外国に輸出するというプランでは彼を説得するのは今の処非常に難しいのが現状である。

 この様な事情から、ボリビアについては米国による支配はモラレス政権が2020年まで続く限り非常に難しい。

<文/白石和幸 photo by Mauricio Navarrete Contreras via flickr(CC BY-SA 2.0) >

しらいしかずゆき●スペイン在住の貿易コンサルタント。1973年にスペイン・バレンシアに留学以来、長くスペインで会社経営する生活。バレンシアには領事館がないため、緊急時などはバルセロナの日本総領事館の代理業務もこなす。

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最終更新:4/22(土) 16:51
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