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【開発秘話】シワを改善する史上初の医薬部外品!発売から1か月で25万個売り上げたポーラ『リンクルショット メディカル セラム』

4/23(日) 9:10配信

@DIME

 ポーラ・オルビスグループのポーラが、2017年1月に発売した『リンクルショット メディカル セラム』が猛烈な勢いで売れている。発売から1か月で約25万個、約36億円の売上を達成したほどだ。

【写真】シワを改善する史上初の医薬部外品!発売から1か月で25万個売り上げたポーラ『リンクルショット メディカル セラム』

『リンクルショット メディカル セラム』はシワを改善する史上初の医薬部外品(薬用化粧品)。シワを改善する新しい医薬部外品有効成分を用い、それを真皮に届ける処方を採用したのが特徴だ。開発から発売までに実に15年もの長時間を要したというが、なぜ15年もかかったのであろうか?

■シワも傷と同じ

 開発は2002年にスタート。研究は同じグループのポーラ化成工業が担当した。

 すでに研究が始まっていた2003年に同社に入社したのが、後に中心的な役割を果たす竹内啓貴氏(肌科学研究部皮膚科学研究室 主任研究員)であった。入社後、シワと瘢痕(はんこん)に関するプロジェクトに配属されたことが、研究に携わるきっかけとなった。傷を治したいという理由からポーラ化成工業に入社した竹内氏はここで、「シワも傷と同じ」だとわかったという。

「シワによって、笑いにくくなった人がいることがわかりました。これは傷と一緒で、あるだけで悩みの種になるものです。シワを治すということは研究に向かうモチベーションとなり、絶対に治す、と心に決めました」と竹内氏。決意を固めて研究に打ち込むこととなった。

■夢に化学式が出てきたほど辛かった、5400種の素材の評価

 研究は、シワができるメカニズムを明らかにすることから着手した。シワのないところとシワのできているところの皮膚を比較し、違いを徹底的に探索。研究開始から3年ほどして、好中球エラスターゼが原因であることを突き止めた。

 好中球とは免疫を担う白血球の一種で、好中球エラスターゼは好中球がウィルスの退治やダメージを受けた組織を分解するために出す酵素。本来は傷に集まる好中球が、シワを傷と勘違いして集まり、好中球エラスターゼを出してしまうことにより、真皮成分であるコラーゲンやエラスチンを破壊してシワを深くしていた。シワを傷と勘違いするのは、シワができたところには微弱な炎症が起きており、表皮から好中球を呼ぶ物質(IL-8)が出ているためだという。

 シワ形成のメカニズム探索と並行して行なったのが、シワの改善に効果がある有効成分の探索。何と5400種の素材を評価することになった。

 5400種の素材の評価を担当したのが、竹内氏であった。あまりにも膨大な量の素材を評価しなければならず、なかなか見つからなかったことから、「見つからないかも」と頭の中をよぎったことも。ヒドいときは「夜、寝ているときに夢の中に化学式が出てきたほど」(竹内氏)だった。ウソのような本当の話が起きるほどの辛い作業を、黙々とこなした。

 すべての素材の評価が終了するのに要した時間は3年ほど。評価結果を受け、好中球エラスターゼを抑える有効成分として「ニールワン(NEI-L1)」を生み出した。「ニールワン」は4つのアミノ酸誘導体を合成したもの。好中球エラスターゼの活性を合体することで阻害し、真皮の分解をブロックする効果が認められた。

■チョコミントアイスがもたらした天啓

 開発は有効成分を真皮に届ける処方設計に移った。

 当初はクリームで開発を進めた。ところが、クリームに「ニールワン」を入れたところ、クリームの水分で「ニールワン」が分解してしまった。これにより、「ニールワン」はクリームには配合できないことになった。

 竹内氏らは事態の打開を図るべく、全国各地の研究機関を訪れ相談する。しかし、どこを尋ねても「無理」のひと言。最後に尋ねたところでも「ダメ」という返事だった。もう諦めるしかないところまで追い込まれた。

 しかし、天は竹内氏らを見放さなかった。最後に訪れた研究機関から会社に戻る帰り、途中で立ち寄った喫茶店で同僚がチョコミントアイスを注文したときに、同僚に天啓が降りたという。竹内氏は次のように話す。
「チョコミントアイスは、チョコチップが溶けることなくアイスの中に入っています。クリームの水分はニールワンを溶かしてしまいますが、チョコミントアイスのチョコとアイスの関係性を見て、水分が入っていない処方にニールワンを練り込めば分解しないのでは、という啓示が天から降りてきたのです」

 会社に戻った竹内氏らは、水分が入っていない処方に「ニールワン」を練り混んでみた。すると、「ニールワン」を配合することに成功する。水分を含まない処方に配合された「ニールワン」は、非常に居心地の悪い状態にあるため、肌に塗ると、水分豊かで居心地のよい肌の中に行こうとする。これにより、「ニールワン」は自然に真皮に引き込まれるというわけである。

■医薬部外品の承認を得るのに8年も要した理由

 こうして『リンクルショット メディカル セラム』は完成。2009年に厚生労働省に医薬部外品の申請を行なった。医薬部外品として承認されたのは2016年7月。8年間、厚生労働省からの質問に対しひたすら回答するということを繰り返した。答える際に試験を行なってデータを追加していたら、時間がかかってしまったというわけである。

 15年のうちの半分以上を医薬部外品の承認を得るために費やしたが、8年も時間がかかった最大の理由は、シワを改善する医薬部外品がこれまでなかったためである。「これは、厚生労働省がシワに関する医薬部外品をつくるとアナウンスしたから申請したのではなく、当社から話を持って行って始まったことです。承認までのレールが敷かれていなかったので、レールを敷きながら審査も進めていったので、時間がかかりました」と竹内氏は明かす。

 また、美白化粧品による白斑問題も影響を及ぼした。この問題で、審査が一時期、全部ストップ。安全性の基準が厳しくなり、新基準に基づく安全性試験の実施・評価をしなければならなくなった。

■正月の百貨店の化粧品売場に、行列ができた

 厚生労働省から承認を得た後、2016年11月にポーラは、『リンクルショット メディカル セラム』の発売を報道発表した。報道発表後、すぐにテレビCMを流し始めたり、百貨店がある主要駅でOOH(交通広告や屋外広告のことで、Out Of Home mediaの略)を実施したほか、美容師や影響力のある美容家が、発売前にSNSで「ついに出た!」などと拡散。発売前に期待感を醸成することができた。

 そして発売。新宿の伊勢丹本店では正月早々、これを買うために化粧品売場に行列ができたほどだったという。

 社運を賭けた商品であったため、生産も最優先された。工場は3交代制で24時間フル稼働。今のところ欠品は起こしていないが、百貨店の場合、スペースが限られ在庫を豊富に持てないことから、当初は1人1本まで(現在は1人5本まで)と販売制限をかけている。ポーラのお店の場合は、販売制限はないとのことだ。

★★★取材からわかった『リンクルショット メディカル セラム』のヒット要因3★★★

1.希望が持てる

 シワの改善が謳える初の医薬部外品。行政が認めた有効性、安全性、安定性があり、悩んでいたり諦めていた人たちの希望をつないだ。希望が持てるものには、手が伸びるというものである。

2.期待感の醸成に成功

 報道発表後からテレビCMを流すなどプロモーションを開始。加えて影響力のある美容家がSNSで期待を表明したこともあり、発売前から商品に対する期待感を醸成することができた。

3.十分な供給体制の確立

 社運を賭けた商品なこともあり、生産も優先。爆発的に売れても、生産が間に合わずに長期間欠品するなどといった事態が起きておらず、購入希望者にはもれなく提供できている。

 現在はほかにも、シワの改善効果が認められ医薬部外品の承認が得られたものが出てきたが、『リンクルショット メディカル セラム』の登場は、どれだけシワで悩んでいた人たちに希望を与えたことだろうか。辛抱強く研究を続け諦めなかった結果が、商品のヒットという形で実を結ぼうとしている。

文/大沢裕司

@DIME編集部

最終更新:4/23(日) 9:10
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