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「フリーライター」は稼げるのか?ライター指南本著者に聞いてみた

4/23(日) 9:10配信

HARBOR BUSINESS Online

 コンビニ大手5社が、2025年までに全商品に電子タグをつけ、自動セルフレジの普及や棚卸しの効率化を目指すと発表した。実現すれば、コンビニスタッフの需要は確実に減ることとなる。このように新しい技術が生まれる一方で、既存の仕事や職業が失われることを「技術的失業」という。そしてこの現象は、これから間違いなく加速していく。その要因の一つが、第4次産業革命と言われているAIやロボットの発達だ。

 2013年9月、英オックスフォード大学の研究者が、現在する702の職業の47%が、この10~20年で失われると発表して話題になった。これも技術的失業によるものだ。どんなに優秀なビジネスパーソンであっても、その仕事がAIに取って代わられない、という保証はない。つまり、誰にでも会社から必要とされなくなるリスクはついて回る。会社は常に新しい技術やニーズの変化を取り入れるべく、そのときに最適な人材を流動的に雇用したいからだ。これまでは当たり前だった、新卒入社・終身雇用は完全に崩壊しつつあるのだ。

 では技術的失業にも左右されず、10~20年後にも生き残るため、ビジネスパーソンはどう対策するべきか。その一つの手段が、特定の会社や仕事に依存せず、いくつもの仕事を掛け持ちする「復職」だ。最近は副業OKなど、多様な働き方を許可する会社が増えているが、それも時代の流れを先取りしてのものだろう。

 しかし、特定の仕事にしか従事してこなかった人が、第2の職業として何を選べばいいのか、すぐには思いつかないかもしれない。AIに置き換わりづらく、なおかつ資格や資本が不要で、自身の特技や趣味、経験を活かしやすい仕事……それは「ライター」である。

 前述したオックスフォード大学の発表で、ライター・作家の仕事がここ10~20年でAIに奪われる確率は、わずか3.8%(※)となっている。まさにAIに置き換わりづらい仕事の筆頭なのだ。米AP通信では2014年から、企業の決算報告の記事をAIに書かせている。日経新聞や西日本新聞社でも、AIによる記事生成に取り組んでいる。

 しかし、AIがライターとして活躍できるのは、限定的な分野にすぎない。例えば企業の決算短信から、売上高や利益、業績結果の背景などを読み取り、記事にすることはできる。

 これはAIが、データ化されている情報から特定のものを抽出し、組み合わせて、形にすることを得意とするからだ。

 逆に言うとAIは、データ化されていないことは扱えない。人々が何となく考えていることや思っていること、求めていることなど、潜在的な情報は読み取れないのだ。感性やクリエイティビティを持ち合わせている人間だからこそ、AIに代替されない分野で、ライターとして活躍できるチャンスはいくらでもある。

 とはいえ、全くの未経験で、コネも実績もない人が、どのようにライターデビューすればいいのか。それを指南する書籍「フリーライターとして稼いでいく方法、教えます。(実務教育出版)」が注目を集めている。これは、コネも経験も実績もなかった著者の肥沼和之氏が、未経験からライターの世界に飛び込み、年収800万円超を稼ぐまでになった方法論をつづった一冊だ。同氏に話を聞いた。

◆最初からフリーライター1本に賭けることはオススメできない

――未経験からライターになり、収入を得るために必要な要素は何でしょう。

肥沼:2つあります。1つ目は“好きなことや得意分野を持っている”。2つ目は“情報感度が高く、企画力がある”です。まず1つ目に関して、筆頭はさかなクンです。編集者の立場になって考えてみてください。もしあなたが、魚に関する記事執筆を誰かに頼むことになったら、真っ先にさかなクンが思い浮かびませんか?あんなに魚に精通しているのですから、本業がライターであるかどうかは気にならないはずです。

 もちろん、さかなクンほどの専門性を持ち合わせた人は多くありません。それでも、何かしらの得意分野、強み、好きなことがあれば、それは文章力やライターの実績より重宝されるでしょう。世の中にはメジャーなものからマイナーなものまで、あらゆる分野のメディアがあります。その人にしかない経験を活かして、活躍できるチャンスや場所は必ずあるはずです

――2つ目の「情報感度が高く、企画力がある」についても教えてください。

肥沼:得意分野が無くても、企画力や独自の視点があれば、同等の武器になります。私も実はこのタイプです。といっても、難しいことではありません。例えば私はデスマッチという過激なプロレスが好きなのですが、普通に紹介記事を書いてもファン以外には読まれない。そこで経営視点からデスマッチを捉え、どのように団体を運営しているのか、収益を出しているか、選手をマネジメントしているのかなどを取材し、ビジネス系メディアで記事にしました。おかげ様で好評でした。

 世の中に求められているものは何か把握し、どのような企画であればそれを実現できるのか、考える力があれば、ライターとしての強みになるでしょう。

――インターネットの普及でネットメディアが乱立し、原稿料が低下している現状があります。そんな中でも、しっかり稼ぐことはできるのでしょうか。

肥沼:確かにクラウドソーシングと呼ばれる業務委託サービスを見ると、一記事100円などの低額で、当たり前のようにライターを募集しています。未経験者でもライターデビューしやすくはなっていますが、この原稿料ではお小遣いにもなりませんよね。好きなことを中心に書き、十分な収入を得るのは簡単ではありません。

 だから、私はフリーライターとして独立することを決して推奨しません。まずは副業で始めてみるのがいいでしょう。本業で収入を担保していれば、副業では好きなことや得意なことを中心にできるので、能力を発揮しやすいですし、ストレスも少ない。チャレンジしてみて、ライター業が自分に合うようであれば、本業に転向するのがいいでしょう。

 ちなみにクラウドソーシングも、私は経験としてアリだと思っています。そこでのライター経験が、次のワンランク上のステージで売り込みをする際の実績になりますし、何ならその経験もネタにしてしまえばいいのです。例えば「クラウドソーシングで100円ライターをしてみた」という企画で、1日8時間働いて、ひと月で幾ら稼げるかを記事にしてみたら面白いかもしれません。

◆原稿料が安くても「複数媒体書き分け」で乗り切れる

――原稿料100円は極端だとしても、有名なネットメディアでも、一記事数千円しかもらえないことは珍しくありません。しっかり稼ぐのは難しい気が……

肥沼:実績が少ないうちは、なかなか仕事を選べません。原稿料の高い仕事をしたくても、任されるとは限りませんから。ただ、できるだけ効率的に稼ぐ方法はあります。例えば、「アトピーに特化したSNSを立ち上げた女性」に取材をしたとします。その内容を、「ビジネス系メディア」だけでなく、「女性のキャリア系メディア」でも書き分けるのです。ほかにも「医療系」「ITビジネス系」「ライフハック系」などの媒体でも書き分けられるでしょう。一度の取材で複数の記事をかけるのですから、効率的ですよね。いろいろな分野の媒体と繋がりを持っておけば、こういったことも実現可能です。

 また拙著の中で、ライターの北尾トロさんや勝谷誠彦さんなど、有名ライターの方たちが、いかにしてライター業を成立させているかも紹介しています。有名な大先輩ライターの実例ですから、きっと役に立ちますし、成功するための方法は一つだけでないことも分かると思いますよ。

 本書ではほかにも、編集者とのコネクションの作り方や売り込みの方法、企画の立て方、文章力の磨き方など、ライターにとって必要となる内容が盛り込まれている。すべてのビジネスパーソンにとって、これからの働き方を見直す時代に差し掛かっている今。複職や副業について考えたとき、本書を手に取って、ライターを一つの選択として考えてみるのもいいかもしれない。

※「AIの衝撃 人工知能は人類の敵か(講談社現代新書)小林雅一」より

<取材・文/HBO編集部>

【肥沼和之】

1980年東京生まれ。ジャーナリスト、ライター。小説家を目指し、会社勤めをしながら執筆・投稿を続ける。27歳で小説家を断念するも、文章を書く仕事に就きたいという思いから、求人系広告代理店に転職し、転職サイトの求人原稿制作に従事する。2009年、フリーランスに転向。ビジネス系、人材・求人系の記事を執筆するほか、ノンフィクション分野も手掛ける。コエヌマカズユキ名義でも活動中。東京・新宿ゴールデン街のプチ文壇バー「月に吠える」のマスターという顔ももつ。

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最終更新:4/23(日) 12:26
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