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90歳・無着成恭氏 辛いことを忘れるのは気楽でいい

4/25(火) 16:00配信

NEWS ポストセブン

 物忘れや記憶力低下を防止するためのトレーニングは重要だ。しかし、「忘れること」を過度に怖れる必要はない。過去のあやまち、辛い思い出……そういったものを忘れていけるからこそ、人間は前向きに生きて行けるという側面もある。「忘れる幸せ」という考え方が、老後を楽にしてくれるかもしれない。

「忘れることは、脳の重要な役割のひとつでもある」と語るのは、横浜新都市脳神経外科病院内科認知症診断センター部長の眞鍋雄太医師だ。

「人間は、脳に入ってきた情報のうち2割しか覚えていられないといわれています。しかし、『忘れること』の存在意義は、記憶が多すぎると脳がパンクするからではありません。

 もし脳が記憶を忘れられない場合、不愉快な記憶がいつまでも意識に残り、精神的・肉体的ストレスを感じることになります。すると、うつ病などの精神疾患を発病したり、ストレスを受けると分泌されるホルモン『コルチゾール』によって、心筋梗塞や脳梗塞、認知症を発病することに繋がる。『忘れること』には、“人間の心と体を守る役割”があるのです」

“物忘れの先輩”の声は明るい。御年90歳、かつて『全国こども電話相談室』(TBSラジオ)で回答者を務めた僧侶の無着成恭氏は、「最近は忘れてばかりですよ」と語る。

「いざ食事をしようと思ったら入れ歯をしてなかったり、自分の電話番号を忘れたり、そんなことは日常茶飯事です。

 でも忘れることには利点もある。例えば、本の間に挟んでいた1万円札のことを忘れていて、その本を久しぶりに読んだときにそれが見つかったら、儲かった気がして嬉しいでしょ。

 辛いことを忘れられるというのも、気楽でいいものです。私なんて、病気してることすら忘れてしまうことがありますからね。すると、不思議と元気がでるものなんですよ」

※週刊ポスト2017年5月5・12日号