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『この世界の片隅に』を大ヒットに導いたテアトルの戦略と次に仕掛ける作品

4/25(火) 17:23配信

otoCoto

映画予告編の制作会社社長・池ノ辺直子が、映画界のキーパーソンにその舞台裏を直撃!
アニメーション映画『この世界の片隅に』がどのようにしてここまでのヒットになったのか、東京テアトル株式会社の西澤彰弘さんにじっくり伺います。

池ノ辺直子
(以下 池ノ辺)
昨年11月の公開でまだ全国で公開されていますが、今、どれくらいのヒットとなりました?

西澤彰弘
(以下、西澤)
興行収入はこの4月で25億円に達しました。

池ノ辺
すごい!東京テアトルの配給作品の中では、歴代1位の興行収入になったんですって?

西澤
はい、おかげさまで。片渕監督は公開以来、毎週土日は、日本のあちこちに飛んで舞台挨拶をされています。弊社からも営業部や宣伝部の人間が同行しているのですが、彼らが感心して言うのは、片渕監督、もう60本とか70本の舞台挨拶をされているけど、同じ内容の話はされないで、ちゃんと行った先の地元のお話をされるんです。

池ノ辺
素晴らしいですね。話す内容を変えられているんですね。

西澤
最初の頃はぎこちない部分もあったんですけど、この頃はマイクを持つのが仕事のように流暢に喋られるようになりました(笑)。慣れられたんでしょうね。
主人公のすずの声を担当したのんさんも、ずっと東京テアトル本社の部屋で取材していたんです。しょっちゅう来られていて、ご本人も一時期、「ここが第2の自分の部屋って感じ」と言っていました。みんなが仲良くて、うまくいきましたね。

池ノ辺
公開がスタートした時の手応えはどうだったんですか?

西澤
部内では、初号試写の段階でこの映画の完成度の高さに手ごたえがあったし、劇場館数も60数館でブッキング決まって行けるんじゃないかという感触はあったのですが、それでもまだ不安だったので、初日の数字を見て、すぐに戦略をたてました。
全国60館の公開で、これだけ評判が良くて、お客さんの充足率もあり、満足度も高い場合、通常は数字をあげるために、翌週から全国200館、300館へと公開規模を拡大するんです。

事実、いろんな劇場から「ぜひ、うちでもかけたい」と手が挙がったので、やろうと思えばできたんですけど、あえて拡大しなかった。館数を増やすと、興行収入があがるから、興収ランキングでも2位とか3位にランキングされたと思うのですが、多くの人に一気に見てもらうと、ランキングから落ちていくのも早いんです。

でも、この作品は長いスパンで満足度、充足率をキープし、ロングラン上映にしたかったので、60館から80館、80館から100館へと、徐々に広げていった。いつ行っても劇場では満席、充足率も高く満足度も高い、そしてずっとランキングに入っている。
結局、何週間、入ったのかな。もう覚えていないんですけど、その算段があたって、作品の話題性もずっと維持できたんです。

池ノ辺
そうそう、とにかくチケットが取れないと大騒ぎだった。あれも戦略?

西澤
はい。特にテアトル新宿をベースにしていたから、あえて新宿エリアは広げなかった。テアトル新宿一館に絞り、そうすると、いつ行っても「映画が見られないってどういうこと?」と話題になった。
昔はそういう戦略、腐るほどあったんです。うちが持っていたシネセゾン渋谷でもどこでもあったんですけど、今ってなかなかそういう戦略は取らなくて、当たるときはどんと稼いで終わっちゃおうというのが多い。劇場数を徐々に広げていって、充足率、満足度を高めていくことって、いろんな、データが実証しているけど、今、みなさん、ほんとうにやらない。うちのこのやり方が珍しいんですね。

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最終更新:4/25(火) 20:19
otoCoto