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若者×自然エネルギーの“限界集落再生”が同時多発的に発生

4/25(火) 9:10配信

HARBOR BUSINESS Online

 過疎化が進んだ「限界集落」に若者が移住し、太陽光や小水力、木質バイオマスといった自然エネルギーを利用して地域の再生に取り組む動きがある。「エネルギー自治」を通じて地域を再生する取り組みを、全国各地に取材したドキュメンタリー映画の製作が進行中だ。

◆自然エネルギーの収益を地域に再投資

「今の日本は、ジェットコースターが急激に落ちる手前のような状態。作品では、明治期から無理もして繁栄を極めた日本が、ここからどうすれば幸せになるのかを考えたかった」

 東京都内で行われた、製作中の映画『おだやかな革命』のパイロット版上映会で、渡辺智史監督はこう話した。

「地方の衰退」が叫ばれて久しいが、日本全体を見ても今後、急激な人口減少が予想されている。国は、2060年には現在の約3分の2に当たる8600万人にまで人口が減ると予測。さらに労働人口の減少に加えて国内市場も縮小していく未来の日本で、今までのように右肩上がりの経済成長を続けることはできるのか。

「それは難しいのではないか」と渡辺監督はみている。

 前作『よみがえりのレシピ』では「在来作物」に焦点を当てた渡辺監督。地域の気候や風土に合うよう長い時間をかけて改良された在来作物は、スーパーマーケットの台頭で規格化された野菜が大量に流通するようになると、人々から忘れ去られていった。

 だが、大量栽培には向かないものの、規格化された野菜にはない独特の味が再評価され、今では在来作物を地域おこしに生かす動きも生まれている。地域伝来の作物が受け継がれる様子を淡々と記録しているだけなのに、地域のあり方や食の安全保障など、さまざまな問題を考えさせられる作品だ。

 今回の最新作でも、渡辺監督は地方・地域にフォーカス。「過疎化が進み限界集落と化した里山(中山間地域)で、移住した若者を起点に地域が一体となり、自然エネルギー事業が立ち上がるケースが同時多発的に生まれている」という。この動きを追いかけた。

 そこでは自然エネルギーで発電し売電して得た収益を、農村振興や福祉、若者の起業支援などに再投資。地域内で「モノ・人・金」が循環する「幸せな地域経済」が生まれているとのことだ。

◆地方衰退で若者に活躍の余地? 格差是正には「増税も必要」と渡辺監督

 現在、政府も「地方創生」を掲げ、都市から地方への移住を後押ししている。ところが、そこで必ずネックとなるのが地方の閉鎖性だ。若者の新しい取り組みを地域の有力者が排除したり、空き家や耕作放棄地を移住者が苦労の末に使えるよう整えた段階で、持ち主が返すよう求めたりといったケースが、ネットでしばしば話題になる。

「地方が衰退していく中、今ではある程度個人を受け入れ、その地域で各自が自分のやりたいことをしたり事業を起こしたり、活躍できる余地が生まれてきた」と渡辺監督は言う。過疎化が限界集落と呼ばれる状態まで行き着くと、地域にも「今のままではいけない」と危機感が生じ、若者や新しい取り組みに対して寛容になる、というのだ。

 さらに、今までは電気代や暖房費といった形で費用が地域の外に流出していたものが、自然エネルギーの利活用によって抑えられる。そうして地域にお金が残り、地域の中で消費されることで、より大きな経済効果(地域内乗数効果)が生まれるとの指摘もある。

 つまりこれが、渡辺監督が地域に見いだす「新しい希望」だ。「ローカライゼーションを通じて地域経済が健全になれば、縮小社会で経済が不安定になっても耐えられるのではないか」と語る。

 だが地方の衰退は「待ったなし」の状態だ。その中で、経済的弱者はすでにセーフティネットからこぼれ始めている。官民挙げて自然エネルギーの導入に積極的な神奈川県小田原市で「生活保護なめんな」ジャンパー事件が発覚したのは象徴的だ。

「国と地方を合わせた借金が1000兆円以上と言われる今、行政に頼って生きていくことが限界を迎えているように感じる。福祉の充実には増税しかないが、今後は地域の資源を使って高齢者や経済的弱者をケアするような事業も必要では」(渡辺監督)

 日本は急激な縮小社会へのハードランディングを避けられないのか。避けるにはどうすればいいのか? 渡辺監督は新作『おだやかな革命』で、そのことを社会に問おうとしている。

<取材・文・撮影/斉藤円華>

映画『おだやかな革命』

現在、今秋の都内公開に向けてクラウドファンディングを実施中。公開後、全国のミニシアターでの上映、および各地での自主上映を目指している。

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