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【文庫双六】大森望と言えばSF評論!――北上次郎

4/25(火) 8:00配信

Book Bang

 コニー・ウィリス『犬は勘定に入れません』の翻訳者は、隣のページでいつもは文庫レビューを書いている大森望である。

 彼とは約10年、雑誌「SIGHT」で書評対談をしていたことがある。それは、『読むのが怖い!』『読むのが怖い! 帰ってきた書評漫才~激闘編』『読むのが怖い! Z 日本一わがままなブックガイド』(すべてロッキング・オン)という3冊にまとまっているが、これほどかみ合っていない対談も珍しい。大森と私は本に対する意見評価がまったく食い違っているのだ。ほんのときたま、私が褒めた本について「それは傑作ですね」と彼が言うことがあるが、そういうときの大半は大森の唇は歪められている。お前それ褒めてねえだろと言いたくなったことは二度や三度ではない。そのニュアンスを活字では伝えられないことがホント、悔しかった。

 そういうふうに問題が多々ある男だが、その才能は昔から高く評価している。大森望は多才な男で翻訳家であること以外にも幾つもの顔を持っている。彼の書く文庫解説は日本一であるという話は以前書いたし、対談や座談会のまとめ(こういう仕事も彼はしている)は絶品であるという話は近々別のところで書く予定なので、ここでは彼の本業(? )であるSF評論の分野からバイヤーズ・ガイドの傑作『21世紀SF1000』を取り上げておく。

 これは「本の雑誌」の2001年2月号から2011年1月号までに掲載された新刊ガイドをまとめたものだ。特色はその月に刊行されたSFを出来るかぎり読んで全部紹介するということで、だからその量が圧巻。さらにすべての本を★印で採点する(★5つが最高点)というのも売り。連載時、採点除外にしていた自分の訳書に本書で★をつけているのも興味深い。ちなみに『犬は勘定に入れません』は★4つ半。コニー・ウィリスの訳書で★5つをつけたのは『航路』だ。

[レビュアー]北上次郎(文芸評論家)
きたがみ・じろう

新潮社 週刊新潮 2017年4月20日号 掲載

新潮社

最終更新:4/25(火) 8:00
Book Bang

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