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トランプ大統領誕生後、キューバと米国の関係進展が停滞。軍部は中ロの接近を危惧

4/26(水) 9:10配信

HARBOR BUSINESS Online

 米国の16人の退役軍人高官が国家の安全の為に、トランプ政権の誕生以来中断しているキューバとの関係進展を継続するようにホワイトハウスに陳情したという事実がスペインでは4月21日付の『EL PAIS』が明らかにした。(参照:『El Pais』)

 それは書簡の形で大統領補佐官H.R.マックマスター陸軍中将に送られたものだ。その中で、彼ら軍人は<「米国政府が経済的そして政治的に繋がりをもたないとなると、その空白を埋めるべく、米国に対抗するロシア、中国、その他の国が接近を早めようとすることは疑いのないことだ」>と表明したとしている。

 更に、彼らが指摘しているの<「カリブ海におけるキューバのポジションは米国に非常に近く、テロリズム、国境のコントロール、麻薬取り締まり、環境保全などの面において同盟国となってしかるべき国であり、戦略的にも非常に重要な価値をもっている」>ということである。更に、<「キューバとの関係回復を完成させることは、米国のラテンアメリカとの繋がりを再構築するのに役立ち、と同時に敵を孤立させることが出来る」>と言及しているという。

◆トランプ大統領以降、キューバとの関係は再停止

 トランプ大統領が誕生して以来、キューバとは如何なる交渉も持たれていないのが現状である。

 彼ら軍人は大統領補佐官が同じ軍人であるということから、共通した概念を持っていると判断してこの書簡を送ったようである。しかも、国防総省のマティス国防長官とマックマスター大統領補佐官のコンビが米国の軍事外交をリードするようになっており、トランプ大統領自身の発言力は低下していると憶測されるようになっている。

 一方、ホワイトハウスの見解は、オバマ前大統領が対キューバとの関係で合意したことなどを現在照査しているところであり、キューバの件はトランプ大統領にとって早急に対処するべき案件ではないと判断している、という回答をしている。

◆厳しいキューバの国内事情

 キューバの国内事情は厳しい状況にある。GDPで3%以上の経済成長が必要であるが、それに至るには程遠い成長しかしていない。しかも、キューバにとって一番必要な外国からの投資が少ないという問題を抱えている。

 ベネズエラが経済的に潤っていた時には、同国から安価な原油が国内消費さらに、それを再輸出できるまでの量の供給を受けていたが、現在その供給量も急激に減少している。それを補うべくロシアから安価な原油の提供を依頼しているが、その反応はまだ具体化されていない。

 しかも、トランプ大統領やキューバ2世議員らが要求しているキューバの社会改革が容易ではないという事情もある。それが、トランプ大統領をして両国の関係進展に消極的である理由となっているのだ。

 そのひとつがキューバの兌換ペソとペソ・クバノという2つの通貨が存在している問題である。兌換ペソは外人による使用が対象になっている通貨で、ペソ・クバノはキューバ人が日常使う通貨である。その2つの通貨の価値は1ドルが24対1となっている。即ち、仮にキューバ人がドルを手に入れようとすれば24倍の対価を払わねばならなくなっている。外人対象の乗り物などは兌換ペソで割高になっている。この二つの価値の差を利用して国営企業は成り立っているのである。

 仮に、これを一つに統一しようとすれば、<6割の国営企業が成り立たなくなり、200万人の官僚の職場が消滅する>とされている。(参照:『Publico』)

 また、2018年にラウル・カストロは評議会議長のポストを辞任することは既に表明しているが、その後のキューバがどのような政治を展開するか未知数である。

◆虎視眈々と狙うロシアと中国

 米国のライバルとして、キューバに関心を示しているのがロシアである。ロシアにとって関心があるのはキューバに再度軍事基地を設けることである。ロシアはキューバを始め、ベトナム、シンガポールなどに軍事基地を設けたいとしている。キューバに以前あった基地はレーダーによる傍受基地であったが、ソ連の崩壊に伴い、ロシアは2002年にそれを撤去させた。

 米国との国交が復活した現在、キューバ政府がロシアの軍事基地の建設を許すとは思えない。しかし、今後のトランプ政権の対キューバ外交に新たな展開が見らなくなると、キューバはロシアを頼るようになる可能性は十分にある。そうなると、ロシアがキューバと軍事面で強化を図ろうとする可能性が生まれるかもしれない。その前触れとも思わせるように、2014年にロシア連邦安全保障会議とキューバ国家安全防衛委員会との間での協力が合意された。

 中国はつい最近までキューバに対しては他のラテンアメリカ諸国と比較して、中国からの投資は相対的に少なかった。しかし、ラテンアメリカのブラジルとアルゼンチンが中国とロシア寄りから欧米寄りに外交を展開して来ており、中国もラテンアメリカにおける戦略の見直しが迫られている。その一貫として、キューバとの取引進展も一つのテーマとなっている。昨年、安倍首相がキューバを訪問した後、直ぐに李首相もキューバを訪問している。そして、中国はインフラ開発や医療分野での協力を約束している。中国の場合、まだ軍事面での関係強化はこれから始まるところである。

 トランプ大統領の対キューバ政治外交が今後どのように展開されるか不明であるが、米国の企業関係者は、国交が復活して以来、それでも前進を続けている。米国の300万社を会員に持つ商工会議所会頭のトーマス・J.・ドナヒューは2月にキューバを訪問し、ラウル・カストロ評議会議長と会談している。

 同様に、ミシシッピー州のヒル・ブライアント知事も観光、農業、食料の輸出をテーマに2月にキューバを訪問。コロラド州の州知事やウイリアム・タッド・コクラン上院議員らも同国を訪問している。

 キューバの命運を握るのは、果たして度の国になるのか?

<文/白石和幸 photo by flunkey0 via Pixabay(CC0 Public Domain)>

しらいしかずゆき●スペイン在住の貿易コンサルタント。1973年にスペイン・バレンシアに留学以来、長くスペインで会社経営する生活。バレンシアには領事館がないため、緊急時などはバルセロナの日本総領事館の代理業務もこなす。

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