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モバイル通信も1Gbpsに、オーストラリアで世界最速サービス

4/26(水) 16:20配信

HARBOR BUSINESS Online

 日本を含めた世界各地の携帯電話事業者や通信機器ベンダなどが5Gに向けて研究開発を進めているが、オーストラリアではテルストラが世界最速のモバイル通信サービスを開始した。

 テルストラはオーストラリア最大の携帯電話事業者で、世界最速のモバイル通信サービスを5Gへの重要なステップと位置づける。テルストラはどのような技術を導入したのか、どのように5Gへつなげるのか、通信網の高度化への取り組みを紹介する。

◆世界最速1Gbpsに!

 テルストラのモバイル通信サービスではサービス名を4GXとしてLTEを提供しており、通信速度を従来の受信最大600Mbpsから受信最大1Gbpsに高速化した。

 商用のモバイル通信サービスとしては世界で初めて1Gbpsに到達し、対外的には世界初のギガビットLTEと宣伝している。なお、テルストラは受信最大600Mbpsの導入も当時の世界最速であり、また世界最速として高速化したことになる。

 テルストラは受信最大1Gbpsに対応した最初の端末として、2017年2月に米国・ネットギア製のモバイル無線LANルータ「Nighthawk M1」を発売した。また、2017年4月には受信最大1Gbpsに対応した最初のスマートフォンとして韓国・サムスン電子製のスマートフォン「Galaxy S8」および「Galaxy S8+」の販売を開始し、世界最速のスマートフォンと謳っている。なお、Nighthawk M1、Galaxy S8、Galaxy S8+は技術規格上の理論値が受信最大1GbpsのLTE DLカテゴリ16に対応する。

◆競合他社に対する強力な武器に

 もっとも、通信速度は理論値こそ受信最大1Gbpsであるが、一般的な利用環境における実効速度は利用環境により低下する。

 テルストラは目安の実効速度を案内しており、受信最大1Gbpsの端末であれば5~300Mbpsを目安としている。なお、受信最大600Mbpsの端末では5~200Mbps、受信最大450Mbpsの端末では5~150Mbps、受信最大300Mbpsの端末では2~100Mbps、受信最大150Mbpsの端末では2~75Mbpsと案内しており、当然ながら理論値が速いほど実効速度も速い。

 テルストラは、報道発表資料では世界最速の1Gbpsと大々的に宣伝しているが、販売店を中心にオーストラリア国内では実効速度を考慮して理論値をあまり前面に出さず、オーストラリア最速と表現するにとどまる。それでも、オーストラリア最速という事実は競合他社と差別化するための強力な武器となっている。テルストラはオーストラリアで加入件数が最も多い携帯電話事業者であり、先進的な通信網はテルストラを支える重要な要素のひとつである。

 なお、受信最大1Gbpsで利用できるエリアは限定的で、まずはメルボルン、シドニー、ブリスベンの中心業務地区の中心部から半径1km以内となり、その他の地域は順次拡大予定としている。

◆導入された技術とは?

 テルストラはキャリアアグリゲーション(CA)、256QAM、4×4 MIMOの技術を同時に適用して受信最大1Gbpsに高速化した。

 CAは複数の搬送波を束ねて通信する技術で、通信速度の高速化や通信の安定性向上にも貢献する。テルストラはLTEで複数の周波数を利用し、CAも複数の組み合わせを導入しているが、受信最大1Gbpsを実現するために2.6GHz帯(Band 7)で20MHz幅の搬送波を2つ、700MHz帯(Band 28)で20MHz幅の搬送波を1つ、合計で3つの搬送波を束ねて通信する。なお、この2.6GHz帯と700MHz帯は2013年4月下旬から2013年5月上旬にかけて実施された周波数オークションで取得した。

 また、256QAMは一度に運べる情報量を増やす技術である。従来の64QAMから256QAMに高度化することで、一度に運べる情報量を6ビットから8ビットに増加し、帯域幅を広げずに通信速度の高速化が可能となる。

 テルストラは3つの搬送波を束ねたCAと256QAMを同時に適用して受信最大600Mbpsとしたが、新たに4×4 MIMOを加えて受信最大1Gbpsに引き上げた。4×4 MIMOは基地局側と端末側でそれぞれ4本ずつのアンテナを利用して通信する技術で、3つの搬送波のうち2つの搬送波で4×4 MIMOが適用される。

 テルストラはこれらの技術を導入するにあたり、スウェーデンの通信機器ベンダであるエリクソンなどと協業した。エリクソンとは長期にわたり協力関係を築き、積極的にエリクソンの通信設備を採用している。

◆そして「5G」へ

 テルストラは継続的な技術革新によって世界最速を実現したアピールしている。また、これは2019年から2020年に商用化される見込みの5Gに向けた重要な一歩と位置づけ、オーストラリアの人々に対して今と未来に世界最高クラスのモバイル体験を提供すると宣言した。

 5Gの具体的な仕様は策定されていないが、標準化に向けてテルストラやエリクソンを含めた世界各地の携帯電話事業者や通信機器ベンダなどが活動を加速しており、5Gではより高い周波数、より広い帯域幅を用いて超高速、大容量、低遅延、多接続などの実現が期待されている。

 テルストラは広い帯域幅を用いた通信やMIMOの高度化など、5Gに応用可能と見込まれる新技術を早期に導入することで5Gへの準備を進め、通信機器ベンダとの連携強化も図る狙いがある。5Gの目標とされる性能を生かして、超高精細動画の配信、自律走行車、ARやVR、IoTへの活用が期待されており、テルストラは通信の高度化を通じて世界を変えると表明している。

 さらに活発化する見通しの5Gに向けた動向は要注目である。

<取材・文・写真/田村和輝>

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最終更新:4/26(水) 16:20
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